拡大内視鏡観察にあたって,咽頭·食道などの扁平上皮領域においては,IPCL(intra-epithelial papillary capillary loop,上皮乳頭内毛細血管ループ)の変化に着目する.IPCLは,上皮基底層にもっとも近接して存在する血管であり,傍基底層·基底層の組織の変化に相関して特徴的な変化を示すと考えている.扁平上皮の内視鏡的異型度診断,さらに扁平上皮癌の内視鏡的深達度診断のマーカーになりうると期待される.IPCL type V-1は「拡張,蛇行,口径不同,形状不均一」の四徴をもって上皮内癌と内視鏡的に診断され,癌の浸潤にともないIPCL type V-2,V-3と破壊,腫瘍血管化が進んでゆく.IPCL type V
Nはsm深部浸潤癌に特徴的な所見である.NBI拡大内視鏡画像では,このIPCLが茶色の線として強調され,その視認性は著しく向上する.またヨード染色後の不染部における「ピンクカラーサイン」は,NBI画像では「メタリックシルバーサイン(metallic silver sign)」に相当し,とくにまだら食道での扁平上皮癌の拾い上げ診断の良い指標となる.
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