日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
102 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総説
  • 石橋 忠司
    2005 年 102 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/06
    ジャーナル フリー
    マルチスライスCTの利点は,多列検出器の開発によるZ軸方向の分解能が向上したことである.等方向ボクセルデータが得られ,あらゆる方向から劣化のない画質で診断できるようになった.大容量のX線管球の開発,ワークステーションによる画像処理の進歩とあいまって,病変を3次元的に把握し,詳細な進展度診断が可能となった.膵臓癌では血管浸潤の正診度が向上したために,手術不可能とする陰性適中率が向上した.動脈,門脈,肝静脈などの血管の分離が良好となった.移植ドナーの術前評価や,門脈圧亢進症の側副路評価などに有用である.また広範囲にアーチファクトの少ない画像が得られることで,急性腹症,外傷などの診断精度も向上した.
今月のテーマ:バレット上皮とバレット腺癌
  • 加藤 洋
    2005 年 102 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/06
    ジャーナル フリー
    Barrett食道の判定に,欧米では,腸上皮化生の存在が必須条件となっている.しかし,わが国では化生の有無にかかわらず,すべての円柱上皮をBarrett上皮/食道とする.Specialized columnar epithelium(SCE)は,そのほとんどが不完全型腸上皮化生として解釈されているが,噴門腺との判別の難しい場合がある.いずれにしても,本上皮/食道の判定にはEGJの正確な診断が必須である.Barrett上皮の組織発生として,食道下端における扁平上皮下の食道噴門腺の発達,扁平上皮内への円柱上皮の噴き出し,円柱上皮島columnar islandの形成,さらにこれらの相互癒合の重要性を示した.SSBE・LSBEにおける異型腺管あるいは腺癌発生のリスクアセスメントを如何に行うかが今後の最大の検討課題である.
  • 天野 祐二, 木下 芳一
    2005 年 102 巻 2 号 p. 160-169
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/06
    ジャーナル フリー
    近年本邦においても,逆流性食道炎の高い有病率によるBarrett食道症例の増加を背景に,Barrett腺癌の増加が危惧されている.したがって,本邦の事情に即したBarrett食道の診断・surveillance法あるいは治療法の早期確立が必要と思われる.現在までに,診断に関しては色素内視鏡や拡大内視鏡などの応用から,一定の優れた成績が数多く報告されている.surveillance法についてもBarrett食道の発癌ポテンシャルを考慮した方法の提唱がある.さらに,Barrett腺癌発生の予防としての制酸剤,NSAIDS,選択的COX-2阻害薬などの投与が有効とする報告がある.しかしながら,いずれも臨床的に充分なevidenceが得られたものではない.本項ではBarrett食道に対する疫学,診断,内科的治療についての現状をまとめ,本邦におけるBarrett食道診療確立のためのさまざまの問題点を考察した.
  • 河野 辰幸
    2005 年 102 巻 2 号 p. 170-175
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/06
    ジャーナル フリー
    バレット腺癌においても,外科治療の意義は確実な局所コントロールとリンパ節を系統的に郭清できることによる根治性の追求にあり,食道扁平上皮癌での治療経験が参考となる.その侵襲の大きさと術後生ずるかもしれないQOLの低下が問題である.内視鏡治療は転移に対しては無力であるが,表在性病変に対する内視鏡切除術の局所制御能は外科切除術に匹敵し,原発巣の詳細な組織学的評価が可能であるなど,粘膜内に止まる可能性のある限局性病変に対しては常に第一段階治療法の役割を担う.逆流防止手術や内視鏡的アブレーションなど,バレット上皮の消褪や腺癌への進展予防における役割についてはなお一定の見解が得られていない.
原著
  • 徳永 健吾, 渡辺 一宏, 田中 昭文, 菅野 朝, 今瀬 教人, 石田 均, 高橋 信一
    2005 年 102 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/06
    ジャーナル フリー
    H. pylori除菌治療前後における13C-UBTの有用性を検討した.対象は126例であり,内視鏡的診断法をゴールドスタンダードとした.ROC曲線より13C-UBTのカットオフは感染診断時2.5‰で,感度,特異度,一致率は,96.2%,100%,96.8%,また除菌判定時は3.5‰で,それぞれ100%,95.8%,96.5%であった.除菌判定時に13C-UBTが2.5‰以上5.0‰未満の症例を11.8%(10/85)に認め,2例は除菌不成功例,8例は除菌成功例であり判定困難な症例を多く認めた.除菌判定時には2.5‰以上5.0‰未満を判定保留域とし,再検査をすべきであることが示唆された.
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