日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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99 巻, 11 号
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  • 中島 聰総
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1295-1302
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    手術を除く胃癌治療の現状 (state of the art) と治療上の問題点を挙げ, 2001年に刊行された日本胃癌学会の胃癌治療ガイドラインの対応を示した. すなわち, 早期胃癌の内視鏡的粘膜切除 (endscopic mucosal resectbn: EMR) の適応は施設によってかなりのバラつきがあるが, ガイドラインでは過去のデータベースに基づき, リンパ節転移のない条件, 一括切除可能な病変の大きさから2cm以下の分化型粘膜内癌で, UL (-) を条件とした. ITナイフ (lnsulation-tipped daithermic knife) など普及にともない, 適応条件の見直しは将来必要と思われる. 他方, 切除不能進行胃癌には化学療法が第一選択の治療法であり, 近年は腫瘍縮小効果の高いregimenも開発されている. しかし, 副作用, 延命効果の点から標準治療として推奨すべきregimenはない. 今後とも臨床研究として有効な投与法の開発が必要である. 眼前の患者に対する治療法を選択するために, さらには今後のガイドラインの充実を計るために, EBMに基づく治療法の選択基準などについて概説した.
  • 児玉 雅明, 佐藤 竜吾, 村上 和成, 藤岡 利生
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1303-1311
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pylori感染は組織学的胃炎他, 多岐にわたる胃十二指腸病変を生じるが, 菌および胃炎の分布は個体によって異なる. 前庭部優位の胃炎は, ソマトスタチンの低下, ガストリンの上昇をともない高酸状態を示し, 十二指腸粘膜に生じた胃上皮化生部に潰瘍を形成するとされる, 感染の経過にともない前庭部萎縮が進展, 胃底腺領域の萎縮を生じると低酸状態となり, 粘膜は脆弱化を来す. 胃潰瘍はこの状態を背景に胃粘膜胃底腺幽門腺移行帯付近に生じる. それぞれの発生機序には, lnterleukin-1β 多型性などの宿主側因子, およびcag PAI, VacA関連株等の菌側因子が複雑に関連している, H. pylori陽性慢性萎縮性胃炎は胃癌の背景粘膜として高頻度に見られ, H. pyloriと胃発癌は疫学的に強い関連が示唆されている.
  • 川野 淳
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1312-1316
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    ヘリコバクターピロリ感染が多くの上部消化管疾患, 特にヘリコバクター胃炎と胃発癌との関係に関するエビデンスが集積されつつある. 一方, ヘリコバクター感染性胃潰瘍, 十二指腸潰瘍の除菌療法として3剤併用による除菌療法が保険適用となったが胃炎の適用はない, しかしヘリコバクター胃炎の治療として除菌療法が原因療法であり, 最も効果的であることはすでに多くの報告に示されている. したがって, 近い将来, ヘリコバクター胃炎を除菌する時にそなえ, 本稿では現在の除菌療法を巡る諸問題と新たな試みを紹介した.
  • 長又 博之, 稲玉 英輔, 有廣 誠二, 松岡 美佳, 鳥居 明, 福田 国彦
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1317-1325
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    クローン病患者27症例を対象として, multidetector-row CT (MDCT) の有用性について検討した. MDCTによりクローン病の病変は, 腸管壁肥厚, 狭窄, 造影剤による腸管壁の増強効果, 脂肪織混濁, 腸間膜リンパ節腫大として捉えられた-MDCTによるクローン病の所見は, 大腸鏡検査, 注腸造影検査, 小腸造影検査および上部消化管内視鏡検査と7696以上の一致率をみた. さらに病期によるMDCT所見の変化をCrohn's diseaseact Mtyindex (CDAI) により活動期, 寛解期に分け比較検討した. CDAIと腸管壁の厚さの間には有意な正の相関 (r=0.70) を認めた-また, 活動期13症例では, 寛解期14症例と比較して有意に腸管壁肥厚, 腸間膜リンパ節腫大, 脂肪織混濁の所見を認め, クロ-ン病の活動性病変を反映していた-MDCTによるクローン病病変の検索は侵襲が少なく, 急性活動期症例においても有用であった.
  • 堀江 義則, 石井 裕正
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1326-1333
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    重症型アルコール性肝炎 (Severe alcoholic hepatitis: SAH) は, 肝性脳症, 肺炎, 急性腎不全, 消化管出血などの合併や, エンドトキシン血症などをともない, 劇症肝炎と同様に予後不良な疾患である. 日本消化器病学会認定施設, 関連施設にSAHについてアンケ-トを行い, 予後予測因子を解析した. また, ステロイド, 血漿交換などの治療効果について, 生存例と死亡例で有意差があるか検討した. 近年, SAHは増加傾向にあり, 特に女性の増加が目立った, プロトロンビン時間延長, 貧血, 白血球数増加やクレアチニン上昇例, 感染症, 消化管出血, 敗血症合併例で死亡例が多く, このような例では集学的治療を早期から行う必要があるが, ステロイド投与は予後を悪化させる可能性もあり, 慎重な投与が必要であることが示唆された.
  • 棟方 正樹, 葛西 雅治, 今 勝哉, 坂田 優
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1334-1338
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性. 大腸癌検診で便潜血陽性.大腸内視鏡検査で大腸ポリープを指摘され, ポリペクトミー目的で入院, 前日ピコスルファートナトリウム, 当日ポリエチレングリコールを服用し, 大腸内視鏡検査を施行, 下行結腸の粘膜は浮腫状で, 発赤, 白苔を認め, 生検組織所見で軽度の虚血性変化を, 注腸X線検査では下行結腸中央に管腔の狭小化がみられ, 虚血性大腸炎と診断し, 補液と安静で改善した. 大腸内視鏡検査件数が増加し, 強力な下剤の使用が多くなると共に, 今後本症例のように虚血性大腸炎が誘発されることがありうるので留意が必要と考えられた.
  • 中村 由貴, 宗村 千潮, 八島 一夫, 藤瀬 雅史, 細田 明秀, 川崎 寛中, 村脇 義和, 堀江 靖
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1339-1344
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    症例はvon Recklinghausen (vR) 病の57歳女性. 下血を契機に大腸内視鏡検査を施行し腺腫内癌を認めた. 腹部超音波にて, 右季肋部に径4cmの腫瘤を認め, 諸検査にて十二指腸粘膜下腫瘍と診断. 局所切除術を施行し, 腫瘍は病理学的所見および免疫組織化学的所見でgastrointestinalstromaItumor (GiST) と診断された. 本vR病は消化管に上皮性, 非上皮性腫瘍を併発しており, その発症メ力ニズムを考える上において, 非常に興味深いと思われた。
  • 前田 敦行, 横井 俊平, 久納 孝夫, 村田 透
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1345-1349
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    腸管嚢腫様気腫症 (PCl) は比較的まれな疾患であり, その原因はいまだ不明である, われわれは尋常性天萢瘡治療中にPC-を合併した1例を経験した. 本症例ではprednisoloneにより糖尿病を併発し, その治療に投与したacarboseがPC-の発症に関与した可能性が高い. 治療経過が複雑であり断定は困難だが, acarboseなどのα-gluoosidase阻害剤は近年広く投与されるようになり, その副作用の1つとして, PClの発症には留意が必要である.
  • 吉田 晴恒, 辻 邦彦, 河上 洋, 潟沼 朗生, 桜井 康雄, 姜 貞憲, 小泉 一也, 三井 慎也, 後藤 充, 吉田 暁正, 林 毅, ...
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1350-1354
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    肝硬変では出血傾向を認めるものの深部出血である筋肉内出血はほとんど経験しない. 明らかな誘因を有さず筋肉内出血を生じ, 血腫を形成した大酒家の肝硬変2例を経験した, 症例1はC型およびアルコール性肝硬変に発症した腸腰筋血腫例である.出血性ショックを生じ, 肝不全で死亡した, 症例2はアルコール性肝硬変に発症した腹直筋血腫例である. 輸血および保存的治療により改善した. 肝硬変の合併症として, まれながら筋肉内出血がおこり得ることを念頭に置く必要があると思われた.
  • 田村 美保, 池田 隆明, 小山 知行, 松本 智子, 村上 武司, 山岡 一昭, 星野 裕治, 神谷 紀之, 細井 英雄, 渡辺 守
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1355-1359
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の男性, 発熱, 右上腹部痛を主訴に入院した. 肝膿瘍と診断し, 経皮経肝ドレナージを施行した. 赤痢アメーバ抗体陽性より, アメーバ性肝膿瘍と診断した. メトロニダゾールの投薬で膿瘍は縮小傾向を示したが, 下腿部の紫斑, 下血をともなう腹痛が出現した. 18Aの上昇, 凝固XIII因子の低下よりアナフィラクトイド紫斑病の合併を考え, プレドニゾロンを投薬し軽快した. 成人例の両者の合併例は報告がなく示唆に富むと考え報告した.
  • 畑中 恒, 鈴木 雅貴, 小野寺 博義, 鵜飼 克明, 萱場 佳郎, 佐々木 明徳, 高橋 功, 加賀谷 浩文, 菊地 徹, 織内 竜生, ...
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1360-1365
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性. 閉塞性黄疸, 水腎症の診断で当科紹介入院となった. 入院時, 血液検査で肝胆道系酵素上昇を認め腹部超音波検査で肝内胆管拡張と総肝管から右肝管の壁肥厚を認めた. また上腸間膜動脈周囲の腫瘤と両側水腎症も認め画像と病理所見より後腹膜線維症を合併した原発性硬化性胆管炎と診断した. 後腹膜線維症と原発性硬化性胆管炎の合併例は1970年以降本邦で3例しか報告されておらず非常に稀であると考えられた.
  • 田中 彰一, 大田 剛由, 加地 英輔, 小坂 恒徳, 永野 拓也, 牧野 泰裕, 村上 一郎
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1366-1371
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の女性. 主訴は右季肋部痛と腫瘤触知. CT, MRlにて肝門部から尾側方向に突出する中心壊死をともなう巨大な腫瘍を認めた. 2カ月後には吐血を来し, 緊急内視鏡検査にて十二指腸下行脚に腫瘍の浸潤と, 同部よりの出血を確認したため, 動脈塞栓術を行ったが, 術後1カ月で死亡した. 剖検後の免疫組織学的検索にて, 胆嚢未分化癌と最終診断した. 胆嚢未分化癌は通常の胆嚢癌とは異なる臨床経過を呈するものと思われた.
  • 永山 芳子, 田中 滋城, 吉田 仁, 山村 冬彦, 三木谷 孝誠, 北村 勝哉, 今村 綱男, 池上 覚俊, 高橋 章, 佐々木 勝己, ...
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1372-1380
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    症例は26歳, 男性. 腹痛, 下痢にて来院. 膵酵素の上昇と膵腫大により, 膵炎と診断.抗生物質, 蛋白分解酵素阻害薬の投与後, 膵管癒合不全が判明し, 膵管狭細型慢性膵炎の合併を認めた. 便潜血陽性が持続し, 大腸内視鏡検査 (CF) により全結腸型の潰瘍性大腸炎 (UC) と診断された. Salazosulphapyridine (SASP) にて治療後UCは寛解し, 膵腫大および膵管狭細像の改善を認めた. UCの病勢と膵管像の変化を経時的に画像検査で観察できた示唆に富む稀少な症例であり報告する.
  • 高森 啓史, 渡辺 可奈子, 辻 龍也, 金光 敬一郎, 猪山 賢一, 平岡 武久
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1381-1387
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    症例は22歳女性. 9歳時に視力低下を指摘され, 精査でvon Hppel-Lindau (VHL) 病と診断された. 22歳時の全身スクリーニング検査で右副腎と膵臓に腫瘤を認めた. 右副腎腫瘤は褐色細胞腫で, 腫瘤摘出術をうけた. 膵臓の腫瘤はCT上膵体尾部に計3個認め, 早期から晩期まで造影効果を有した. 膵体尾部切除術を施行し, 術後病理診断は多発性非機能性膵内分泌腫瘍であった. VHLに多発性に膵内分泌腫瘍を合併した比較的まれな症例であった.
  • 今井 淳太, 池谷 伸一, 高橋 雅信, 小島 敏明, 野口 謙治, 黒木 実智雄, 飯島 克則, 神谷 尚則, 鹿志村 純也, 遠藤 到, ...
    2002 年 99 巻 11 号 p. 1388-1393
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    症例は19歳, 女性. 主訴は左側腹部痛. 左側腹部に18×12cm大の腫瘤を認め, 切除を行った. 腫瘍は良性の線維芽細胞からなりデスモイド腫瘍と診断した. 切除標本で, 腫瘍は嚢胞部分と充実性部分からなり, 嚢胞内腔側は上皮細胞で裏打ちされていた.病理学的検討からその上皮は結腸上皮と連続していることが確認され, 腫瘍が横行結腸に浸潤し結腸を巻き込みながら増大した結果形成された嚢胞であることが示唆された.
  • 2002 年 99 巻 11 号 p. 1394-1395
    発行日: 2002/11/05
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
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