肝炎における肝細胞障害の機構の一端を解明すべく,
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r標識Chang肝細胞を標的細胞にして肝炎患者末梢血リンパ球の細胞障害性, および, そのエフェクター細胞を検索した.
急性肝炎極期4例全例, 慢性活動性肝炎13例中9例に健常対照者より強い細胞障害性を認め, 慢性遷延性肝炎は1例を除いて異常を示さなかつた.
細胞障害性の増強していた急性肝炎極期3例と慢性活動性肝炎9例の末梢血リンパ球を羊赤血球ロゼット形成細胞のConray-Ficoll比重遠心法によりT cell分画とnon-Tcell分画に, さらに後者の5例のnon-Tcell分画を抗ヒトFab抗体結合Sephadexカラムを使用して, 表面Ig陽性Bcell分画と表面Ig陰性“Kcell”分画に分離した. 各分離リンパ球の検索によりnon-Tcell分画中の“Kcell”分画が顕著に強い細胞障害性を有していた.
3-10週後の再検査により, 慢性活動性肝炎における増強した細胞障害性の長期持続を認めたに反し, 予後良好な急性肝炎では回復過程の比較的早期においてその細胞障害性は既に低下していた.
これらの事実は, 末梢血リンパ球, とりわけ“Kcell”の細胞障害性の有無が肝疾患における肝細胞障害の一因であることを示唆していると考えられる.
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