光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡を用いて平面的, 立体的に胃底腺領域及び幽門腺領域の粘膜内微細血管構築の相違について検討した. 切除胃新鮮標本を対象とし, 一群ではその主幹動脈 (主に左胃動脈) から墨汁を注入した材料の厚切りパラフィン切片を作製し, H.E染色後検鏡した. 二群では, 墨汁の代りに, メタアクリレート樹脂を注入して作製した血管鋳型標本を走査電顕にかけ検討した.
その結果胃底腺領域と幽門腺領域の粘膜内血管構築には著明なる差異が認められた. 胃底腺領域では粘膜筋板を貫いた血管はほぼ垂直に胃内腔に向つて走行しながら腺部吻合枝網を形成し胃腺管を密に取り囲み, 被蓋上皮の直下には整然と規則性に配列した網目状の構造をもつた被蓋上皮下血管網がみられた. 一方幽門腺領域では腺部吻合枝網は胃底腺領域に比べて著しく粗で扇状に胃内腔に向つて走行し, 被蓋上皮下血管網も不規則な配列を示していた.
また, 血管の分布密度についてみても胃底腺領域では幽門腺領域に比べて3倍強と血管密度は明らかに高かつた. 加令による血管構築上の変化をみると, 粘膜の加令性変化に附随し幽門腺型の血管構築をもつた領域が口側に向つて拡がる傾向が観察された.
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