日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
120 巻, 8 号
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今月のテーマ(総論):膵癌化学療法の進歩
  • 小林 智, 上野 誠, 古瀬 純司
    2023 年 120 巻 8 号 p. 629-638
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    膵癌におけるプレシジョンメディシンとして,生殖細胞系列BRCA遺伝子異常を有する患者に対するオラパリブが既に実装されているが,治療標的となる遺伝子異常はいまだ少ない.現在,遺伝子相同組み換え修復に関わる遺伝子異常や,膵癌患者の90%以上に認められるKRAS遺伝子変異,KRAS遺伝子に変異がない場合に認められることがある融合遺伝子を有する患者に対する分子標的治療薬の開発などが進んでいる.治療標的となる遺伝子異常を検出するための,組織または血液検体を用いたがんゲノムプロファイリング検査は既に臨床導入され,使い分けられる.がんゲノムプロファイリング検査自体の開発も進んでおり,膵癌化学療法の進歩が期待される.

今月のテーマ(総説):膵癌化学療法の進歩
  • 海野 倫明
    2023 年 120 巻 8 号 p. 639-642
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    膵癌は最も予後が不良な癌である.治癒が望める唯一の治療法は外科切除であるが,診断時にすでに遠隔転移を有している症例が多く,また切除可能と思われる症例も不顕性の遠隔転移があり,術後早期に再発することが知られている.そのため,主腫瘍の切除に加えて何らかの薬物療法を加える集学的治療が必要であることは論をまたない.まず術後補助化学療法が先行して確立され,予後の向上が観察されているが,術後の合併症や体力低下などにより術後補助化学療法を行うことができない症例も多く,これらの患者は集学的治療の恩恵を受けることができなかった.術前治療は,このような欠点はなく多くの症例に実施可能であり,膵癌患者全体の底上げを図れることが明らかとなりつつある.本総説では,術前治療の長所と短所を述べた上で今後の課題と将来に向けた展望について概説する.

  • 井岡 達也, 永野 浩昭
    2023 年 120 巻 8 号 p. 643-650
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    局所進行膵癌は,主要動脈への浸潤が180°以上の場合,切除不能と診断される.腫瘍が縮小して主要動脈への浸潤が消退すれば切除可能となり,治癒への道が残されている一方で,現実的にはその予後は極めて不良である.局所効果が期待される放射線療法または化学放射線療法が優先されるのか,それとも全身化学療法が優先するのか,いまだ決着はついていないが,膵癌に対する化学療法もゲムシタビン単剤から多剤併用療法に変遷して,強い抗腫瘍効果が期待できるようになった.今後は,各治療のメリット・デメリットを鑑みて,患者にとって最も良い選択ができるようになると考えられる.

  • 森實 千種
    2023 年 120 巻 8 号 p. 651-657
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    遠隔転移を有する膵癌に対しては,積極的治療の選択肢は化学療法のみであり,いかにそれを発展させるかがカギである.GEM単剤が膵癌で初めて延命効果のある化学療法として示されてから四半世紀,現在までに1次化学療法としてGEM+エルロチニブ療法,GnP療法,FOLFIRINOX療法,そしてNALIRIFOX療法と進歩を続けている.1次化学療法(プラチナ)後の維持療法としてオラパリブ(gBRCA PV保持者),2次化学療法としてはnal-IRI+FF療法が標準治療として加わった.Precision medicineや免疫チェックポイント阻害薬についてはこれからに期待,といった領域で今後の開発に期待が寄せられている.

  • 刑部 弘哲, 小薗 真吾, 永川 裕一
    2023 年 120 巻 8 号 p. 658-661
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    膵癌はいまだに難治癌の1つである.切除不能な理由として局所進行,もしくは遠隔転移を有していることが挙げられる.近年,集学的治療の進歩によりconversion surgeryが行われる機会が増加し,その有用性が多数報告されている.しかし,至適レジメン,切除適応,切除タイミングに関する一定の見解はなく,各施設で独自に判断され行われているのが現状である.また,conversion surgeryの有用性が報告される一方で,術後の早期再発の報告もあり,真の恩恵にあずかることができる症例の選別が必要と考えられる.本稿ではconversion surgeryの現状と課題に関して概説する.

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