Helicobacter pylori (
H. pylori ) は胃・十二指腸潰瘍, MALTリンパ腫, 胃癌との関連が認められている. 更に最近では消化器疾患のみならず特発性血小板減少性紫斑病 (ITP ; idiopathic thrombocytopenic purpura) との関連も示唆されている. 本研究ではITP患者における
H. pylori 治療の有用性につき検討した. 対象はITP患者20例 (
H. pylori 陽性患者17例,
H. pylori 陰性患者3例) で, lansoprazole (LPZ) 60mg, amoxicillin (AMPC) 1500mg, clarithromycin (CAM) 400mgの7日間投与による除菌療法を施行した. また, 4例に対して1次除菌からCAMの代わりにmetronidazole (MNZ) を使用した. 除菌失敗例においてはLPZ 60mg, AMPC 1500mg, MNZ 750mgの7日間投与で再除菌を行い,
H. pylori 陽性例は全例で除菌に成功した. 除菌後の血小板数の増加について
H. pylori 陽性例では17例中9例 (52.9%) で血小板数の増加を認めた.
H. pylori 陰性例では, 3例中2例 (66.7%) で血小板数の増加を認めた. 血小板数の増加は, 除菌1カ月後から認められ, 年齢, 性別, 前治療歴, 罹患期間, 抗核抗体の有無, 除菌薬剤の相違, 内視鏡的な胃粘膜萎縮度, 除菌前の尿素呼気試験 (UBT) のΔ値との関連は認められなかった. ITP患者において
H. pylori 除菌治療は有用な治療であり, 今後積極的に行うべきであると考えられた. また,
H. pylori 陰性と判定された2症においても血小板数の増加が認められ, 今後更に症例を蓄積し, 検討していく必要があると思われた.
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