ヒト胃癌培養細胞(印環細胞癌、高分化腺癌)と線維芽細胞との相互作用を検索するために、胃癌細胞と線維芽細胞との混合培養co-culture,および胃癌細胞のconditioned medium,cell derisが線維芽細胞の増殖に及ぼす影響を形態学的・生化学的に検討した.
印環細胞癌と線維芽細胞とのco-cultureでは,高分化腺癌とのco-cultureに比べ線維芽細胞の増殖はあまり旺盛化せず,細胞間は霧粗となり、むしろその増殖が抑制されているように観察された.さらに,co-culture時における14C-prolineの取り込みをオートラジオグラフを作製して観察したところ,prolineは線維芽細胞よりも印環細胞癌に旺盛に取り込まれることが明らかとなつた.胃癌細胞のconditioned medium,cell debrisが線維芽細胞に及ぼす影響を,3H-thymidine,3H-glucosamineの取り込みにより,線維芽細胞のDNA合成,グリコサミノグリカン(GAG)合成活性を示標として検索した.その結果,印環細胞癌のconditioned mediumは線維芽細胞に対する増殖促進作用を有することが明らかとなつた.さらに,印環細胞癌のcell debrisは高分化腺癌に比べ線維芽細胞のGAG合成をより高め,特にそのGAG組成のなかでも組織の線維化に重要な役割を果すといわれているデルマタン硫酸が合成を促進されていることが推察された.
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