日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
106 巻, 9 号
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総説
今月のテーマ:中・下咽頭表在癌の診断
  • 門馬 久美子, 藤原 純子
    2009 年 106 巻 9 号 p. 1299-1305
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    表在性の中·下咽頭癌を効率よく発見するには,食道癌と同様,中高年の男性,喫煙,飲酒の多い症例,特に,多発食道癌や食道内多発ヨード不染を有する症例,咽·喉頭にメラノーシスを有する症例を対象に内視鏡検査を行う.拾い上げるべき所見は,粘膜の色調変化(粘膜の発赤や白色混濁),血管網の変化(正常血管網の消失や血管増生),表面性状(微細な凹凸や粘膜の粗ぞうさ),凹凸の変化(丈の低い隆起や高い隆起,浅い陥凹)などである.ヨード染色が困難なこの領域では,病変の発見に白色光よりNarrow band imaging(NBI)観察の方が有用であり,NBI観察では,内部に血管の増生をともなう茶褐色の領域(Brownish area;BA)を拾い上げる.病変発見後は,NBI併用の拡大観察を行い,病変の質的診断,範囲診断,深達度診断を行う.色調変化や正常血管網の変化のみで,病巣内に凹凸をともなわない平坦病変(0-IIb),丈の低い隆起性病変(0-IIa),浅い陥凹性病変(0-IIc)は上皮内癌であり,病巣内に目立つ凹凸を有したり,丈の高い隆起や深い陥凹を認める症例は,上皮下浸潤癌であることが多い.中·下咽頭表在癌では,食道癌と異なり隆起性病変と平坦病変が多い.
  • 藤井 誠志
    2009 年 106 巻 9 号 p. 1306-1312
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    咽頭の表在性の病変は咽頭表面のIPCLと称される微細血管構造の変化を利用する狭帯域内視鏡(narrow band imaging; NBI)の併用により見出されるようになった病変である.病理組織像においても微細血管構造の変化は表在性病変の成り立ちに重要であり,さらにはそれが上皮下浸潤といった病態の決定にも寄与することがわかってきている.上皮下浸潤癌症例の治療前診断とその取り扱いが課題であるが,その指標となるべき咽頭癌のT因子には消化管にあるような深達度が考慮されていない.これらの課題を克服することによって,咽頭の表在性病変を見つけていた段階から治療の必要性を考慮した段階へと,内視鏡および病理の両面から診断学は向上しなければならない時期に来ている.
原著
  • 横浜 吏郎, 青島 優
    2009 年 106 巻 9 号 p. 1313-1320
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は既に確立された手技といえるが,その施行には危険をともない,時に死亡例を経験する.われわれは術後早期死亡の危険因子を検討するため,これまで当院でPEGを施行した302例を解析した.患者群は高齢化し,一般全身状態の低下,るいそう,低栄養傾向を認めた.術後30日以内の早期死亡を7例(2.3%)認め,そのうち1例は造設にともなう合併症(誤嚥性肺炎)が原因であった.ロジスティック回帰分析の結果,血中クレアチニン高値,虚血性心疾患の既往および血中アルブミン低値が早期死亡の独立した危険因子とされた.心·腎機能の低下した症例,重篤な栄養失調や消耗が存在する症例では,PEGの適応を慎重に判断する必要がある.
症例報告
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