日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
108 巻, 3 号
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特別寄稿
総説
  • 久松 理一, 日比 紀文
    2011 年 108 巻 3 号 p. 373-380
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/07
    ジャーナル フリー
    わが国のクローン病患者数は3万人を超え,決して専門医のみが遭遇する特別な疾患ではなくなってきている.インフリキシマブをはじめとする抗TNFα製剤の登場によりクローン病の治療体系は大きく変化した.さらにダブルバルーン小腸内視鏡による内視鏡的狭窄拡張術など,モダリティの部分での進歩も目覚しいものがある.しかし,「これらの治療が果たして本当にクローン病の予後を改善するのか」,という命題はいまだ明らかにはなっていない.予後まで見据えたクローン病のマネージメントについては今ようやく議論がスタートラインにたったばかりであり,本稿ではその点について解説する.
今月のテーマ:クローン病の長期予後改善をめざして
  • 木内 喜孝, 角田 洋一, 高橋 成一, 下瀬川 徹
    2011 年 108 巻 3 号 p. 381-387
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/07
    ジャーナル フリー
    クローン病発症初期は腸管に炎症を認めるのみであるが,時間経過とともに狭窄・瘻孔・穿孔などの合併症を有するようになり,約8割以上の患者が一生に1度以上の手術を必要とする.この自然経過は従来のクローン病治療で変えることはできないと報告されていた.最近になり免疫調節剤,抗TNFα製剤の早期使用がクローン病の自然経過を変えうることが明らかとなってきた.しかしすべてのクローン病症例に早期の抗TNFα製剤投与をすることは過剰治療であり,今後は予後不良症例を確実に予測するマーカー探索が重要課題となる.
  • 長沼 誠, 藤井 俊光, 長堀 正和, 渡辺 守
    2011 年 108 巻 3 号 p. 388-400
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/07
    ジャーナル フリー
    クローン病の治療には栄養療法と薬物療法があるが,抗体製剤の登場によりクローン病の治療法や治療目標,長期予後などが大きく変わってきている.6-MP,AZAを中心とした免疫調節薬は抗体製剤が登場する前より難治例を中心に使用されており,特にステロイド依存例のステロイド減量や寛解維持に有用な薬剤である.長期予後の観点からみて6-MP,AZAは腸管粘膜治癒効果,術後の再燃防止効果を有するが,抗体製剤と比べその効果は限定的である.免疫調節薬を早期に使用することにより長期予後が改善される可能性も考えられるが,骨髄抑制,感染症,さらには最近注目されているリンパ腫発生の可能性を考慮し,有用性と副作用のバランスを考えながら使用することが大切である.
  • 遠藤 克哉, 志賀 永嗣, 角田 洋一, 高橋 成一, 木内 喜孝, 下瀬川 徹
    2011 年 108 巻 3 号 p. 401-409
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/07
    ジャーナル フリー
    クローン病に対するinfliximabの計画的維持投与は,従来の治療法と比べ,より高い寛解維持効果を示し,長期予後改善をもたらす可能性がある.しかし現在得られている知見の多くは,数年程度の予後を評価したものである.10年以上のspanでの予後改善効果については,今後のevidence構築に期待したい.最近はadalimumabが本邦でも使用可能となったが,新規の生物学的製剤が今後も登場してくるものと思われる.治療の選択肢が増える一方,生物学的製剤の使い分けについての議論が不可欠になる.クローン病診療においては常に最新の情報を入手し,EBMを実践することがますます重要な時代に入ってきた.
  • 二見 喜太郎, 東 大二郎, 二木 了, 酒井 憲見, 前川 隆文
    2011 年 108 巻 3 号 p. 410-417
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/07
    ジャーナル フリー
    自験例(413例のべ681回手術)の手術適応,術式および術後の長期経過,加えて薬物治療の外科治療への関与について検討した.681回の手術のうち絶対的適応は44回(6.5%)で癌合併は7回(1.0%)であった.相対的適応としては狭窄(閉塞)が最も多く,約85%の症例に腸切除を要した.薬物治療の進歩した最近の症例で手術までの期間の延長がみられたが,手術理由の比較では穿通型および緊急手術が増加した.102例の長期経過は約16年で平均2.49回の手術を要し,再手術率は5年37.6,10年60.4,20年86.8%で,再手術の責任病変は約80%が手術施行部の再発再燃であった.予後因子の検討では,穿通型および小腸大腸型症例が不良であった.術後infliximab投与例に予後の改善がみられた.クローン病に対する内科的治療の進歩は手術までの期間の延長および術後の再発予防にも寄与することが示唆された.今後は,さらに長期経過例から予後因子を解析し,適切な内科的治療の選択および外科治療のタイミングを明らかにしていくことが長期予後の改善に繋がるものと考える.
原著
  • 比嘉 晃二, 山口 康晴, 青木 圭, 土岐 真朗, 中村 健二, 高橋 信一
    2011 年 108 巻 3 号 p. 418-428
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/07
    ジャーナル フリー
    出血性潰瘍の診断で内視鏡止血術を施行した70歳以上の高齢潰瘍患者において,術後再出血の危険因子はshock,輸血,潰瘍の大きさと数,活動性出血であり,死亡の危険因子は基礎疾患と入院患者に合併した潰瘍であった.これらの危険因子をもつ高齢潰瘍患者をハイリスク患者と位置づけ,止血手技の併用,second lookの徹底,IVRバックアップ体制の強化などにより,再出血率,死亡率をどこまで減少させうるか検討を行った.この結果,再出血率は15.5%から4.4%,死亡率は7.5%から2.2%への改善がみられ,ハイリスク高齢潰瘍患者においても,治療選択により再出血率,死亡率を改善させうる可能性が示唆された.
  • 三澤 俊一, 堀江 久永, 熊野 秀俊, 鯉沼 広治, 宮倉 安幸, 富樫 一智, 安田 是和, 矢野 智則, 山本 博徳, 菅野 健太郎, ...
    2011 年 108 巻 3 号 p. 429-435
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/07
    ジャーナル フリー
    過去20年間に当院外科で治療がなされた原発性小腸癌10例の臨床病理学的検討を行った.癌占拠部位は空腸が6例,回腸が4例で,全例有症状であった.腫瘍径の中央値は50mm(30~110mm)であり全例2型進行癌で輪状狭窄をともなっていた.組織型は高分化腺癌8例,中分化腺癌1例,低分化腺癌1例で,壁深達度はSE 8例,SI 2例であった.リンパ節転移は6例,肝転移は3例,腹膜播種は4例に認めた.ダブルバルーン内視鏡導入以降に経験した9例中8例は術前に病理学的診断が可能であった.stage II(4例),III(2例)症例には中間リンパ節郭清をともなう小腸部分切除が施行され,stage II症例は4例とも無再発生存中である.
症例報告
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