日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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101 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説—第89回総会から—
  • 古川 俊治, 北島 政樹
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    「医療水準」はすべての医療機関について一律ではなく, その新しい知見が当該医療機関と同程度の医療機関にある程度普及しており, 当該医療機関がその知見を持つと期待できる場合, その知見は当該医療機関にとっての「医療水準」とされており, 公的指針は直接的には「医療水準」とは結びつかない. むしろ, 新知見が公的指針などとして公表される以前でさえ, 基幹医療機関の医師にとっては「医療水準」として認定され得る. ガイドラインは一応の指針にすぎず, 患者の個別的事情に応じた担当医師の専門的裁量が優先されるが, ガイドラインとは異なる治療に関して訴訟となった場合, 本ガイドラインの内容が重視される可能性が高い. また, 医師には, 患者の自己決定権保障のため, 治療実施に先立ち, 当該治療法の危険性や代替治療法の選択などについて説明する義務があるが, この説明内容に関しても, 「医療水準」が基準とされる. ガイドラインに記載された知見については, 一般的に説明義務が認められる可能性が高い. また, 特に関心が強いなどの事情のある患者に対しては, 「医療水準」に達していない未確立な治療法についても情報提供が要求される場合があり, 場合によっては, ガイドラインの内容を超えた知見の情報提供も要請され得ると考えられる.
今月のテーマ : 消化管癌分子標的治療の新展開
  • 秋山 伸一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    抗がん剤に耐性な腫瘍の出現は癌の化学療法を行う上で大きな障害となっている. 抗癌剤に耐性を示す腫瘍細胞では, 抗癌剤の蓄積が減少していることが多く, 抗癌剤排出機能の亢進が観察される. 多剤耐性を示す細胞にP-糖蛋白質, MRP1, BCRPなどのABCトランスポーター, ATP7BなどのABCトランスポーター以外のトランスポーターが抗癌剤を含む低分子物質を細胞外へATP依存性に輸送することが明らかとなった. これらの各々のトランスポーターの輸送機能を阻害して耐性を克服する薬剤が見い出され, 臨床での効果が試されている.
  • —膜輸送体ATP7Bの選択から阻害剤の開発まで—
    竹林 勇二, 管崎 敦子, 東本 昌之, 菅野 英和, 竹之下 誠一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    ポストゲノムの時代になり臨床医でも可能になった「新しい分子標的治療法開発」における重要なポイントを整理した. 1. 標的分子の選択は, 基礎的に機能が明らかになっているが, 臨床的な意義が確立していない分子を選ぶこと. 2. 標的分子の臨床検体での評価は, 採取後速やかにOCT compoundに包埋し, 研究目的に応じてH.E. 染色により癌細胞の占有率を確認したものを用いて, DNA, RNA, 蛋白すべてのレベルで行った解析結果をもとに行うこと. 3. 標的分子の正常組織分布も必ず確認すること. 4. 標的分子の最終評価は, 阻害剤などを開発し標的分子の発現と阻害剤の効果との関連を臨床において検討した後に行うこと.
症例報告
  • 山本 章二朗, 南 寛之, 宮田 義史, 岩満 章浩, 沼田 政嗣, 岩切 久芳, 宇都 浩文, 堀 剛, 井戸 章雄, 林 克裕, 坪内 ...
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    症例は27歳の男性. 1歳時頃より胸のつかえ感があり, 諸検査で食道は全体的に拡張, 下部は狭窄し, 中下部に白色の隆起性病変を認めた. 隆起部の生検診断は過形成性変化であった. 症状などより食道アカラシアとそれにともなう過形成性変化と考えた. ニフェジピンと内視鏡的バルーン拡張術で症状は消失し, その後の隆起部の生検でも悪性所見は認められていない. 食道アカラシアと良性の食道隆起性病変の合併例はまれと考えられ, 報告する.
  • 藤田 尚己, 渡邊 典子, 西井 義典, 田中 剛史, 下村 誠, 谷川 寛自, 中井 昌弘, 佐々木 英人, 足立 幸彦
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    患者は72歳女性. 42年前の転落事故後横隔膜の異常を指摘されていたが, 無症状で経過. 今回突然の吐気・嘔吐にて受診. 諸検査にて胃軸捻転症にともなう遅発性外傷性横隔膜ヘルニアと診断し手術を施行. 開腹すると左横隔膜に約12×9cmの欠損孔が存在し, 胃・脾臓・横行結腸の一部が胸腔内へ脱出していた. 本例はかなり以前よりヘルニア状態にあったものが, 胃軸捻転症を併発したことによって顕性化したものと考えられた.
  • 足立 聡, 大浦 元, 北澤 利幸, 澤井 瑞穂, 浅田 潔, 榑松 由佳子, 瀧 朋子, 池中 康英, 鎌田 修, 森安 博人, 松本 昌 ...
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    症例は87歳, 男性. 脳梗塞後で胃瘻下経腸栄養中, 胃食道逆流症のため経胃瘻的腸瘻に変更した. 糖尿病があり栄養剤を脂肪含有率50%のグルセルナ®に変更後, 多量の胃液嘔吐が頻回に出現した. その原因として, 血中コレシストキニン (CCK) 上昇にともなう胃酸分泌亢進, 下部食道括約筋弛緩作用が推測された. 直接十二指腸に脂肪負荷すればCCKが著明に上昇するとされ, 腸瘻患者での脂肪負荷には十分な注意が必要と考えられた.
  • 平崎 照士, 兵頭 一之介, 梶原 猛史, 仁科 智裕, 舛本 俊一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 女性. 大腸内視鏡検査で回盲弁より逸脱する2cm大の粘膜下腫瘍様病変を認め, 生検で悪性リンパ腫と診断された. 超音波内視鏡で腫瘍の深達度は粘膜下層までと診断した. 回腸部分切除を施行し, 病理学的にはdiffuse large B cell lymphomaであった. 大腸内視鏡下に生検を行い確定診断に至った回腸悪性リンパ腫の報告例は少なく, 超音波内視鏡で腫瘍の深達度を診断し得た例は本症例が初めてであった.
  • 村瀬 勝俊, 島本 強, 近藤 哲矢, 杉本 琢哉, 尾関 豊
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    直腸カルチノイドの肝転移は予後が不良とされている. 直腸カルチノイド同時性多発性肝転移に対し, 原発巣および肝転移巣を同時切除し, その後残肝再発をきたしたものの, エトポシド (以下VP-16) の肝動注が奏効し長期生存を続けている症例を経験したので報告する. 症例は68歳男性. 直腸カルチノイド, 多発性肝転移に対し経肛門的直腸腫瘍切除術, 肝拡大左葉切除術を行った. 病理検査で直腸カルチノイド (壁深達度mp), 同時多発肝転移と診断した. 2年後に多発性残肝再発をきたし, TAE, 5-Fuを中心とした多剤併用の肝動注を行ったが効果はPDであった. 次いでVP-16肝動注療法を行ったところ, 腫瘍は縮小し, 1cm大の1個を除いて腫瘍は消失した. その後動注カテーテルが閉塞したため, 内服によるVP-16少量投与や寄生動脈に対するVP-16動注などを行った. 術後7年10カ月の現在担癌生存中である.
  • 稲葉 宏次, 菅原 有子, 大内 健, 冨地 信和, 佐藤 慎一郎, 滝川 康裕, 鈴木 一幸
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 101 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/02/24
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性. 発熱, 右季肋部痛, 吐気で入院. 黄疸をともなう肝機能障害と壁の不整な浮腫状の肥厚をともなう, 腫大した胆嚢を認めた. 腹痛の増強あり経皮経肝胆嚢ドレナージ術を考慮したが, 画像所見上典型的な急性胆嚢炎の所見に乏しく, また悪性腫瘍も否定できず開腹下胆嚢摘出術を施行. 術後左前腕部の刺し口が明らかとなり, ツツガムシ病を疑いミノサイクリンを投与したところ解熱し, 肝機能も改善, CRPも陰性化し, 血清学的にもツツガムシ病と診断された.
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