日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
109 巻, 9 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
  • 堤 幹宏
    2012 年 109 巻 9 号 p. 1509-1517
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/05
    ジャーナル フリー
    アルコール(AL)飲料を自らの意志で過剰摂取することでおこるAL性肝障害の発症には,社会的変化も影響を与えている.約20年ぶりに「AL性肝障害の診断基準」が改訂されたのを機会に,わが国の「AL性肝障害の診断基準」の変遷をふり返ったが,従来の「診断基準」は,医学的知見だけでなく,社会的変化も考慮して作成され,各々の時代が反映されている.AL総消費量に関しては,戦後一貫して増加していたが,1999年をピークに減少傾向にある.しかし大酒家は現在も増加しており,非B非C型肝硬変の半数以上がAL性であることに反映されている.肝炎ウイルスの治療の進歩により,肝疾患に占めるAL性の比率は,増加すると考えられる.
今月のテーマ:アルコールと消化器疾患
  • 横山 顕
    2012 年 109 巻 9 号 p. 1518-1525
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/05
    ジャーナル フリー
    飲酒は口腔・咽頭・食道・大腸がんの原因であり,エタノールとアセトアルデヒドに発がん性がある.少量飲酒で赤くなるALDH2欠損型と,多量飲酒の翌日に酒臭いADH1B低活性型は,飲酒家の食道・頭頸部がんリスクを高める.赤くなる体質と飲酒・喫煙・食習慣によるリスク評価は食道がん検診に活用できる.濃い酒の空腹摂取は胃粘膜障害をおこしやすい.ワインはH. pyloriの自然除菌を促進するかもしれない.大酒家や食道がん患者ではH. pylori感染を背景に萎縮性胃炎の進行が速く胃がんも多い.胃切除後の飲酒は急峻な血中濃度上昇を招きアルコール依存症のリスクを高める.飲酒と大腸がんとの関連は日本人で特に強い.
  • 正宗 淳, 下瀬川 徹
    2012 年 109 巻 9 号 p. 1526-1534
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/05
    ジャーナル フリー
    アルコールは急性および慢性膵炎の主要な成因である.最近の2007年全国調査では急性膵炎の31.4%,慢性膵炎の64.8%がアルコール性とされる.アルコールによる膵炎発症機序としてアルコール毒性説,蛋白塞栓説など,さまざまな仮説が提唱されているがいまだ確立されていない.膵炎を発症するのは大酒家の一部にすぎない.このため,臨床的に膵炎が成立するためにはアルコールの作用のみならず,喫煙などの生活習慣や遺伝的背景が複合的に関与すると考えられる.アルコール性膵炎の再発や進行予防のため,断酒や禁煙といった生活指導の重要性が再認識されている.
  • 大竹 孝明, 高後 裕
    2012 年 109 巻 9 号 p. 1535-1540
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/05
    ジャーナル フリー
    アルコール性肝障害の病態はエタノール代謝による肝細胞の生化学的変化から代謝異常を呈し,肝脂肪化,酸化ストレス,脂質過酸化がおきて発症,進行する.本稿では慢性飲酒にともなう脂質代謝を中心とした代謝異常,酸化ストレスの発現メカニズムを概説し,さらに酸化ストレスを促進する環境因子である食餌内容と病態との関連,肝障害に対する飲酒とメタボリック症候群との相加・相乗効果に関して述べる.
  • 加藤 眞三
    2012 年 109 巻 9 号 p. 1541-1545
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/05
    ジャーナル フリー
    アルコール性消化器疾患患者に対する,日常生活の注意について述べる.アルコール依存症をともなう患者,肝硬変,慢性膵炎の患者では断酒指導が基本となる.一方,検診で発見される肝機能障害の大部分は脂肪肝であり,肥満,糖尿病,脂質異常症をともなう場合も多く,メタボリック症候群の合併症である動脈硬化を予防する意味でも,断酒ではなく適量飲酒を指導できることが望ましい.アルコール性肝硬変においても,肥満が疾患の進行を早めることが明らかにされており,減量のために食事の制限や適度な運動の指導が必要となる.飲酒と肥満が重なると,死亡率が増加することが報告されており,肥満対策が今後の課題である.
原著
  • 川崎 啓祐, 小林 広幸, 蔵原 晃一, 大城 由美, 石橋 英樹, 米湊 健, 河内 修司, 船田 摩央, 岡本 康治, 坂 暁子, 永田 ...
    2012 年 109 巻 9 号 p. 1546-1555
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/05
    ジャーナル フリー
    大腸鋸歯状病変428病変をhyperplastic polyp(HP),sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P),traditional serrated adenoma(TSA)に分類し,臨床像,内視鏡像,病理組織像を遡及的に比較検討した.SSA/Pは右側大腸,表面型が多く,拡大観察ではシダの葉状や星芒状所見の出現頻度が高かった.またSSA/Pの担癌率はHP,TSAに比べ有意に高く,同期間に切除された管状・管状絨毛・絨毛腺腫(traditional adenoma;TA)と同等の担癌率を有していた.
症例報告
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