日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
104 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 田守 義和, 春日 雅人
    2007 年 104 巻 4 号 p. 483-491
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    メタボリックシンドロームは1個人に腹部肥満に加え,耐糖能異常,高血圧,高脂血症が集積した病態である.これら1つ1つの病態は単独では動脈硬化の発症進展に対する寄与はそれほど大きくはないが,これらが1個人に重複して発症すると動脈硬化性疾患の発症頻度が著明に増大する.一般的にメタボリックシンドロームの発症はまず内臓脂肪の増加に端を発すると考えられる.内臓脂肪の増加にともない脂肪組織には慢性炎症が誘導され,その結果生じる脂肪組織からの分泌因子(アディポカイン)の発現変化がインスリン抵抗性を誘導する.このインスリン抵抗性はメタボリックシンドロームの根幹をなす病態で,それに引き続き耐糖能異常,高血圧,高脂血症が惹起され,心血管病変がおこりやすい病態へと進展する.
今月のテーマ:日常診療におけるメタボリックシンドロームと消化器
  • 松崎 松平
    2007 年 104 巻 4 号 p. 492-500
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    1989年∼1999年の健診受診者において脂肪肝発見率は毎年確実に増加し,11年間に男性では16%から34%,女性でも7.6%から19%へと2倍以上の増加がみられた.2000年以降増加傾向は止まったものの,高率が持続している.脂肪肝発生率は肥満と密接に関連するが,1989年度と1998年度における受診者の平均BMI値はいずれも22kg/m2で差がみられず,受診者および脂肪肝群における肥満度にも差はみられなかった.しかしBMI 25以下でも高率となり,同一のBMIの非肥満者においても脂肪肝の著しい増加が明らかになった.生活習慣の変化が増加の一因とされているが,具体的要因はいまだ不明であり,未知の環境要因も含め原因解明は重要な課題であり,消化器専門医による本格的調査·研究が待たれる.
  • 木下 芳一, 古田 晃一朗
    2007 年 104 巻 4 号 p. 501-508
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    日本においては,食習慣の欧米化とともに生活習慣や生活環境が大きく変化しており,これにともなってメタボリックシンドロームなどの疾患が増加している.一方,食事·生活環境の変化はHelicobacter pyloriの感染を減少させ,胃酸分泌を増加させ,さらには食道の逆流防止機能やクリアランス能を低下させている.またメタボリックシンドロームに関係して発症する疾患に対して頻用されるアスピリン,カルシウム拮抗薬,亜硝酸薬は上部消化管の生理機能を障害することがある.酸関連疾患のうち消化性潰瘍は全体としてみれば減少しているが出血を合併しやすいアスピリン/NSAIDS潰瘍は減少せず,逆流症患者は著増し日本の酸関連疾患が欧米化しているといえる.
  • 山地 裕, 小俣 政男
    2007 年 104 巻 4 号 p. 509-515
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    わが国において,大腸癌は急速に増加しているが,それには生活習慣の欧米化が関与していると考えられている.当初代表的な危険因子として脂肪,予防因子として食物繊維が想定されていたが,多くの疫学的研究の蓄積により,危険因子として肉類,予防因子として野菜·果物が確からしいとされ,さらに近年では危険因子として肥満,予防因子として身体活動がより確実視されるようになっている.肥満や身体活動が大腸発癌に関与する機序として,インスリン抵抗性を介した作用が考えられている.最近では,同じく内臓肥満によるインスリン抵抗性を基盤とすると考えられている,メタボリックシンドロームとの関連も注目されつつある.
  • 牧野 直彦, 河田 純男
    2007 年 104 巻 4 号 p. 516-522
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    腹部超音波検査における膵実質のechogenicity上昇所見は,主として加齢による生理的変化と考えられていた.当教室ではこの所見に着目し,検診受診者を対象に加齢以外の因子について解析を試みた.その結果,BMIやインスリン抵抗性などメタボリックシンドローム構成要素との関連が示唆された.一方で,肥満と膵癌あるいは糖尿病と膵癌との関連を支持する報告が相次いでいる.メタボリックシンドロームにともなう膵障害の機序については不明な点が多いが,この膵実質のechogenicity上昇=bright pancreas所見は両者を結ぶキーワードとなる可能性を秘めている.
座談会:日常診療におけるメタボリックシンドロームと消化器
症例報告
feedback
Top