日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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99 巻, 12 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • ―第88回総会特別講演から―
    黒木 登志夫
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1423-1427
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    20世紀半ばから増加し始めたがんは,21世紀に入っても,人口の高齢化と共に,増加し続けるものと推測されている.21世紀,われわれは,がん死亡を減少に転じさせることができるであろうか.そのためには,がん予防と難治性がん対策が決め手になるであろう.アメリカのがんが,年齢調整罹患率,死亡率共に,1992年以降減少に転じたのは,『Healthy People 2000』という総合的な予防対策の成果である.それにならってわが国でも『健康日本21』プロジェクトを発足させたが,肝心の喫煙対策が,政治的な理由により,なおざりにされている.治療成績が向上しているにもかかわらず,がんのイメージを悪くしているのは,5年生存率20%以下の難治性がんのためである.難治性がんを克服するためには,ブレークスルーとなるような研究が必要である.がん予防にしても,難治性がん対策にしても,ヒトゲノム解析のデータが大きな力になるであろう.
  • 肝再生医療の展望
    立野 知世, 吉里 勝利
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1428-1435
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    既に,肝細胞移植による障害肝の治療効果が示されている.肝細胞移植は肝臓の再生医療として期待されている.肝細胞移植の問題点は,肝臓移植のためのドナー肝の不足と同様に,移植肝細胞の不足が挙げられる.移植肝細胞の候補としては,胎児肝細胞,肝実質細胞,肝上皮細胞,oval cell,小型肝細胞が考えられる.また,最近の幹細胞研究の進展により,他の臓器の幹細胞や,骨髄細胞やES細胞から分化させた肝細胞などの可能性も出てきた.今後,肝臓の再生医療にどの細胞が適しているかを見極める必要がある.
  • 肝再生医療の展望
    井戸 章雄, 坪内 博仁
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1436-1442
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    肝細胞増殖因子(HGF)は劇症肝炎患者血漿から単離された肝再生因子で,種々の上皮細胞に対する増殖促進作用のみならず,抗アポトーシス作用,抗線維化作用など多くの生理活性を有している.これまで我々はHGFの臨床応用を目指してきたが,2004年には人体へ投与可能な遺伝子組み換え型ヒトHGFが供給される.このような進展をうけて,2002年7月に劇症肝炎,成人生体肝移植,肝硬変を対象にした「HGF肝再生医療プロジェクト」がトランスレーショナルリサーチとしてスタートした.劇症肝炎や肝移植患者ではHGF投与が肝再生のみならず,抗アポトーシス作用を介した病態進展阻止や拒絶反応軽減などの効果をもたらすことが期待される.一方,肝硬変ではHGFによる肝再生・抗線維化作用から肝予備能改善,さらには発癌抑制をもたらすことが期待されるが,HGFの発癌性は否定できないため,その投与には慎重な判断が求められる.
  • 佐仲 雅樹, 久山 泰, 小原 正幸, 山本 貴嗣, 石井 太郎, 斉藤 正樹, 服部 研吾, 安食 元, 滝川 一
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1443-1449
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    薬物動態理論に基づいたシミュレーションの結果,血清アセトアミノフェン(APAP)濃度45分値(C45)は定性的な胃排出遅延の検出には利用できるが,胃排出亢進の評価には不適当であることが示唆された.さらに,C45の薬物動態学的特性から,以下のような胃排出遅延の診断基準が導かれた:20mg/kgのAPAPを200kcal/200mlの液体食に混ぜて投与した場合,(1)C45>5.0μg/mlでは胃排出遅延は否定,(2)2.0~5.0μg/mlでは判定保留,(3)C45<2.0μg/mlでは胃排出遅延は確定.
  • 塩澤 俊一, 土屋 玲, 遠藤 俊吾, 熊沢 健一, 小川 健治
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1450-1454
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    われわれは1999年より左橈骨動脈を第一選択とする選択的肝動脈造影,および肝細胞癌(166例,295病変)に対するtranscatheter arterial chemoembolizatbn(TACE)を導入し良好な成績を得ている.本法は従来の大腿動脈からの治療群(150例,289病変)と比較し,造影完遂率,検査所要時間,TACE成功率に差を認めず,98.9%に安全に施行し得た,検査終了後より歩行は自由であり,出血性の合併症が皆無であるなどのclinical benefitを多く有する本法は患者の負担を軽減でき,今後普及していく可能性のある検査法と考えられる.
  • 廣岡 昌史, 黒瀬 清隆, 岡部 壮一, 大森 拓朗, 星加 佳邦, 岡田 眞一, 石井 博, 堀池 典生, 恩地 森一
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1455-1459
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性.主訴は心窩部痛,嘔吐.上部消化管内視鏡で胃の強い変形があり幽門へ到達できず,胸部X線で縦隔に鏡面形成像を認めた.CTでは胸腔内に脱出した胃とその周囲に液体貯留を認め,臓器軸性胃捻転症による胃粘膜壊死を疑い手術を移行した.胃は長軸性に捻転しており,整復の上噴門を腹壁に固定した.本症は完全閉塞により粘膜壊死を起こすことがあり,嘔吐をきたす疾患の1つとして念頭に入れておく必要がある.
  • 佐竹 哲典, 堀見 忠司, 志摩 泰生, 濱田 円, 岡林 孝弘, 岩田 純, 高松 正宏, 森田 荘二郎, 辻 晃仁
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1460-1465
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    69歳男性,上腹部痛を主訴に入院.腹部CTでは胃体部の巨大腫瘤と,肝内に多発性腫瘍を認めた.いずれも内部壊死をともない辺縁に造影効果を認めた.多発性肝転移をともなう胃間葉系腫瘍の術前診断で,原発巣の切除を施行した.病理組織所見では絨毛癌と中分化型腺癌を認め,両者の明らかな移行像は認めなかったが,胃原発性絨毛癌と診断した.内部壊死をともない辺縁に造影効果を認める腫瘤では絨毛癌の鑑別も考慮すべきと考えられた.
  • 小國 孝, 水上 祐治, 越智 明子, 浦岡 佳子, 山本 和寿, 矢野 哲郎, 大森 克介
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1466-1470
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.繰り返すタール便と貧血を主訴に入院.腹部単純X線検査では左上腹部に10cm大の石灰化を認め,上部消化管内視鏡検査では胃体部大弯後壁側に頂部に潰瘍を有する粘膜下腫瘍様隆起を認めた.第4病日に出血性ショックに陥り緊急手術が施行され,脾動脈瘤の圧迫による脾動脈の胃内穿破と診断した.本邦では脾動脈瘤の胃内穿破は9例報告されているが,脾動脈瘤圧迫による脾動脈の胃内穿破報告例はないため報告する.
  • 兵頭 隆史, 浅野 聡, 井廻 道夫, 河村 裕, 小西 文雄, 太田 雅弘, 山田 茂樹
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1471-1475
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.主訴は発熱,下腹部痛,下血.2000年11月15日より発熱があり,近医にてホジキン病が疑われた.12月11日より無尿,15日より直腸出血が認められた.12月29日入院後,貧血,血小板減少が徐々に進行し,直腸出血がコントロールできず,1月5日死亡した.剖検では,ホジキン病,サイトメガロウィルス直腸炎と診断された.CMV直腸炎は急性出血性直腸潰瘍に類似した病態を呈する可能性がある.
  • 風間 逸郎, 丸山 正隆, 堀木 紀行, 藤田 善幸
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1476-1480
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.主訴は腹痛,悪心,嘔吐.来院時,脱水でショック状態を来していた.各種画像検査より十二指腸下行脚に粘膜下腫瘤があり,これが消化管閉塞の原因と考えられた.開腹術を施行したところ壁内血腫であり,吸引して消失した.腹腔動脈造影で上前膵十二指腸動脈に動脈瘤を認めていたため,この破裂が血腫の原因と考えられた.
  • 田近 正洋, 松浦 昭, 中村 常哉, 鈴木 隆史, 澤木 明, 原 和生, 山雄 健次, 大橋 計彦
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1481-1486
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は33歳女性.17歳時に回盲部穿孔でクローン病と診断される.以後経過観察していたが,股関節痛が出現,精査をしたところ両側大腿骨頸部骨折および全身の多発性骨折と診断された.原因はVit D欠乏に伴う骨軟化症と考えられた.クローン病患者においては脂溶性ビタミンであるVit Dは潜在的に低下していることが考えられるため,骨軟化症の存在も念頭に入れて診療にあたる必要があると思われた.
  • 水田 由紀子, 伊集院 裕康, 小野 尚文, 宮本 安尚, 於保 和彦, 神代 龍吉, 豊永 純, 佐田 通夫, 中島 収, 長田 英輔
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1487-1492
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.腹部超音波検査で肝S6区域に径30mm大の肝細胞癌と傍臍静脈の発達を認めた.また,頭部MRIにて大脳基底核の高信号化を認めた.肝細胞癌に対しては肝部分切除術を施行.同手術時に傍臍静脈を結紮した.約2年後,頭部MRI上の大脳基底核の高信号は改善した,本症例は門脈側副血行路の発達がその原因として強く関与していたことを示唆する興味ある症例と思われ報告した.
  • 釈迦堂 敏, 才津 秀樹, 渡辺 次郎, 武元 良祐, 福森 一太, 赤須 郁太郎, 福泉 公仁隆, 巻幡 徹二, 大内 二郎, 宮原 稔彦 ...
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1493-1497
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    64歳女性,肝S7の肝細胞癌(HCC)に対し展開型電極を用いたラジオ波焼灼療法(RFA)を施行し,7カ月後に再発を認め入院となった.S7に奇異な再発様式を示す多発再発巣を認め後区域切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検討からは中~低分化型HCCであった.後上区域門脈枝に沿って多発再発し,また10mm大の小結節にもかかわらず低分化型HCCであったことより,RFAで肝内播種が惹起されたものと診断した.展開型電極を用いたRFAの際には播種を念頭に置いた穿刺,展開,焼灼を行う必要があると考えられた.
  • 山浦 高裕, 吉澤 要, 六波羅 明紀, 西澤 好雄, 松本 晶博, 堀内 朗, 宮澤 幸一, 清澤 研道
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1498-1502
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性.全身倦怠感が出現.近医にて肝機能障害を指摘され,当院紹介入院.入院時血液検査にて黄疸をともなう肝細胞障害型の肝機能異常を認め,IgG 2170mg/dl,抗核抗体160倍であり,自己免疫性肝炎と診断.プレドニゾロン40mg/日にて加療を行い速やかに改善.肝生検組織所見および治療反応性より自己免疫性肝炎の国際診断基準にて19点であった.以後,プレドニゾロンを減量し経過観察中であるが肝炎の再燃なくコントロールされている.なお,本例はHLA-DR2およびDR4ともに陰性であった.
  • 河端 秀明, 本田 真希, 河村 卓二, 郡 靖裕, 上野山 義人, 川口 義明, 田中 聖人, 早雲 孝信, 趙 栄済, 安田 健治朗, ...
    2002 年 99 巻 12 号 p. 1503-1507
    発行日: 2002/12/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    患者は22歳の男性.両下肢の関節痛,下痢,および腹痛に続いて両上下肢の脱力感と黄疸が出現し,当院に入院した.四肢遠位部優位の筋力低下,両上肢の腱反射低下,下肢の運動神経伝導速度低下を認め,急性多発根神経炎と診断した.また肝胆道系酵素の著明な上昇とERC上での肝内胆管の枯れ枝状狭窄を認め,原発性硬化性胆管炎と診断した.さらに,持続的蛋白尿および血尿,血清IgA高値より,臨床的にIgA腎症と診断した.このような合併症例はまれであるが,それらの発症にお互い関連があると思われ,発症機序を考える上で貴重な症例と思われるので報告する.
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