下垂体副腎皮質hormoneの蛋白代謝に及ぼす影響の一端を知る目的で各種腦下垂体副腎皮質疾患38例,及び神経性食欲不振症12例計50例の血清蛋白像について治療による影響,尿中・血中hormone量との関係等を中心として検査を行なつた.糖質hormone欠乏群では血清総蛋白量軽度減少又は正常でalbuminは減少し,β-globulin,血清cholesterolも低値を示したが,ϒ-globulinは全例明らかな増加を示した.これ等に対し副腎皮質steroid剤投与を行なうと血清蛋白の変化は何れも正常化し,更に糖質hormone過剰群では血清総蛋白量はやはり軽度減少または正常であつたが, albuminは全例正常値内にあり,α-globulin,β-globulin,血清cholesterolは糖質hormone減少群とは逆に増加し,ϒ-globulinもまた逆に低値を示した.糖質hormone過剰群で副腎切除術を行なつたものでは血清α-globutin, β-globulin,血清cholesterolは何れも減少して正常化し, γ-globulinも増加して正常以上の値を示した. Addison病, Simmonds症候群, Cushing症候群における血清ϒ-globulinと尿17-OHCS, 17-KS,血中17-OHCS値とは明らかな負の相関を示し,また血清β-globulinと尿17-OHCS, 17-KS値との間にも若干の相関が考えられた,また血清cholesterolは大体血清β-g1obulinと平行した動きを示した。これ等のことより糖質hormoneは蛋白質の合成ならびに末梢組織での異化の両方に関係し,また蛋白質,脂質の血中動員,ϒ-globulinの産生抑制作用をも有するものと推定された.性hormone, ACTH,抗利尿hormone, gonadotropinの血清蛋白像に対する直接影響と思われるものは全く認められず,成長hormoneの影響については結論が得られなかつた.
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