25才,女性のIgA単独欠損症例.生来健康であつたが,子宮弛援出血のため輸血を受け,間もなく血清肝炎を発症した.その後2年半の間に3回肺炎をくりかえした. IgAは血清中だけでなく唾液中にも欠如し,粘膜面における局所免疫の欠陥がうかがえた.さらに, DNCBも陰性で,細胞性免疫機構の部分的不全も加わつていた. IgA単独欠損症と肝炎との合併は,これまでにも散見され注目はされているが,本症例の場合も,どちらが先行していたかの因果関係は明らかにできなかつた.しかし, RF,抗IgA抗体,抗IgM抗体,抗IgD抗体,抗サイログロブリン抗体などを証明し,補体成分(β
1A,β
1E)の減少を認めたことは, IgA単独欠損症と自己免疫性疾患との密接な関係を示唆するものと考えられた.また,家系調査では他にIgA欠損例はなかつたが,免疫グロブリンの異常が注目された.なお,本例では,肝炎症状消退後も常にICGとBSPの血中停滞値の解離がみられた.
抄録全体を表示