日本内科学会雑誌
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85 巻, 10 号
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  • 酒井 紀
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1621-1623
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 吉澤 信行, 尾田 高志
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1624-1630
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎炎惹起性抗原としてはYoshizawaらのPA-Ag, ZabriskieグループのNSAP, SPEBが現在の主流である.発症機序としては液性免疫における循環ないしin situ免疫複合体形成による糸球体病変と,細胞性免疫におけるT cell, Mφを中心としたdelayed type hypersensitivityの関与が考えられる.無症候性急性糸球体腎炎はprospectiveな調査では22~25%に発現し, 2/12例が慢性化した.慢性化因子としては初期における糸球体周囲の細胞浸潤が重要である.
  • 西 慎一, 荒川 正昭
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1631-1638
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1995年度には,原発性慢性腎炎の新WHO組織分類が,また,本邦で, IgA腎症の診療指針が発表された.近年, MRSA関連糸球体腎炎, HIV関連腎症, HCV感染関連腎症など,新たな糸球体腎炎が報告されている.腎炎抗原では, IgA腎症でH parainfluenzae外膜抗原が,膜性腎症でmegalinが,責任抗原として発表された.また,腎炎治療薬としては,シクロスポリン,ミゾリビンが新たに注目されている.
  • 土肥 和紘, 椎木 英夫
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1639-1644
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    一次性ネフローゼ症候群と難治性ネフローゼ症候群の原因疾患について概説し,代表疾患の治療法についても述べた.一次性ネフローゼ症候群では,微小変化群が最も高頻度であり,膜性腎症,メサンギウム増殖性糸球体腎炎,巣状糸球体硬化症の順に多い.難治例は,一次性ネフローゼ患者のほぼ1割を占める.その原因疾患は,膜性腎症が最も高頻度であり,巣状糸球体硬化症,微小変化群,膜性増殖性糸球体腎炎の順に多い.
  • 木田 寛, 吉村 光弘, 竹田 慎一, 横山 仁
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1645-1649
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    半月体形成性糸球体腎炎が,免疫蛍光抗体法所見により抗糸球体基底膜抗体型,免疫複合体型ならびにpauci-immune型(ANCA関連型)に分類され,くわえてその臨床経過の特異性の解明が進むに従い,これらの知見の治療への応用が成果を挙げてきている.しかし,一方では半月体形成性糸球体腎炎,ならびに同義語的に用いられている急速進行性糸球体腎炎の考え方には曖昧な点が多く,しばしば討論の障害となっている.ここではこれらの点を中心に話を進めたい.
  • 矢島 義忠
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1650-1656
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    IDDM賢症については成因,発症進展の危険因子,病態,早期診断ならびにinterventionとその効果などが解明されてきており,その成果が診療にフィードバックされつつある.しかしNIDDMにおける腎症については未だ明らかでない部分が多い. IDDMと異なる糖尿病病態,加齢,動脈硬化,高血圧あるいは比較的頻度の高い一次性賢疾患の合併などの影響下にあるNIDDM賢症の特徴を述べた. NIDDM賢症の診療に際してはアルブミン尿の原因,賢機能の評価,非糖尿病性賢疾患の鑑別に際してこのような特徴を考慮する必要がある.
  • 長澤 俊彦
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1657-1662
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    SLEの早期診断,早期ステロイド治療が定着した今日においても,急速に腎不全が進行したり,難治性ネフローゼが続くループス腎炎症例が少なくない.最近,このような例にシクロフォスファミドなどdrasticな免疫抑制療法がよく行われるが,適応を慎重に検討して決定することが大切である.近年,慢性血液透析が導入されるLN症例が増え,その年齢が高齢化してきた.その遠隔成績は概して良好である. LNの腎移植の生着率も良い.
  • 下条 文武
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1663-1667
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    アミロイドーシスは,種々のアミロイド物質が組織の細胞外に沈着して臓器障害を来す予後不良の疾患群である.アミロイド構成蛋白は,本態(原発)性と骨髄腫に伴う免疫グロブリンL鎖(AL),反応(続発)性のアミロイドA蛋白(AA),家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)のトランスサイレチン異型分子(ATTR)などが知られている.アミロイド腎症の多くはネフローゼ症候群を呈し腎死に至るが,比較的早期に透析導入することによりその予後が向上しつつある.
  • 阿部 圭志, 佐藤 博
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1668-1673
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    悪性腎硬化症は高度の高血圧のために腎の細小動脈に壊死などの強い病変が起こり,レニン分泌が亢進して高血圧がさらに進行し,悪性高血圧症候を示す.頭痛が強く,高血圧性脳症や急性左心不全などを併発するものが多い.有用な降圧薬がなかった頃は血圧をコントロールできず,予後が悪く,殆どの症例が2~3年で死亡した.近年は有用な降圧薬が開発され,悪性高血圧でも血圧をコントロールすることができるようになった.降圧薬療法の進歩により悪性高血圧に進行するものがほとんどなくなり,本症の予後は改善した.
  • 東原 英二
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1674-1680
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    多発性嚢胞腎には,常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)がある. ADPKDは,多発性の腎嚢胞が出現し,腎機能が進行性に低下することと,頭蓋内出血が生命を脅かす主要な病態である. ADPKDの遺伝子異常には少なくとも二つの異なった部位が知られている. PKD1は腎機能の予後,嚢胞の程度がPKD2より厳しい.第16番染色体短腕にPKD1が同定され, PKD1蛋白は, 11回細胞膜を貫いて存在する糖蛋白で,細胞細胞間,あるいは細胞マトリックス間の結合に関与していることが推測されている.第4番染色体長腕上にPKD2の遺伝子が同定され,その蛋白は刺激伝達系に関与していることが推測されている. PKD1とPKD2蛋白が共同して作用していることも推測されているが,詳細は不明である.腎臓の嚢胞以外に,嚢胞性病変が,肝臓,膵臓,脾臓,卵巣,精巣にできる頻度が高い.その他,高血圧,頭蓋内動脈瘤,心弁膜閉鎖不全,大腸憩室,胆管の拡張が合併する. ARPKDは比較的稀な疾患で,比較的出生後早期に死亡するものから稀には成人にまで成長するものまである.このように表現型に大きな差があるが,責任遺伝子座は同一で,第6染色体にある.
  • 原田 孝司, 〓村 信介, 内藤 一郎
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1681-1687
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Alport症候群は,感音性難聴や眼異常などを伴い末期腎不全へ進展する遺伝性腎疾患である.遺伝形式には,伴性(X染色体連鎖)優性遺伝型が多いが,その他に,常染色体優性および劣性遺伝型もある.臨床的には血尿と蛋白尿が認められ,ネフローゼ症候群を呈することもある.病理組織的には糸球体基底膜(GBM)の広範な層状化,断列,肥厚,菲薄化などが特徴で,免疫組織学的方法を用いたGBMの分子構造の検討からは, X染色体優性遺伝型において, IV型コラーゲンのα3, α4, α5, α6鎖の異常が明らかに成ってきた.遺伝形式の連鎖解析や, α鎖遺伝子(COL4A5)の突然変異の解析などの成績が少しずつ明らかになって来ている.
    本疾患の予後は,男性においては30歳台までには末期腎不全に進展する.遺伝子解析が進み,近い将来に遺伝子治療に応用されることが切望される.
  • 佐野 元昭, 堀川 哲彦
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1688-1693
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性間質性腎炎は病理組織学的概念であり,その病因や発症機序は単一でない.かつては猩紅熱,レプトスピラ症など感染症によるものが多かったが,最近は薬剤性間質性腎炎が多い.非乏尿性急性腎不全が少なくなく,臨床症状を欠く場合もあるので,常にこの疾患を疑い腎不全の存在に気着くことと,腎生検による組織診断が必要である.その際に尿細管機能障害(尿中β2M, NAGなど),好酸球増加,尿中好酸球, Gaシンチなどが参考となる.
  • 吉田 正樹
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1694-1698
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性腎孟腎炎と診断する上で必要なことは, 1)尿路感染症の存在を証明すること, 2)腎実質,腎孟・腎杯系にその感染の存在を証明すること, 3)その病型を診断することである.さらに,腎機能障害の有無,基礎疾患の有無を診断することも重要である.また,尿路感染症の感染部位診断に尿中サイトカイン測定が有用であった.これらの診断を行うことは,適切な治療を行う上でも大切なことである.
  • 山内 淳
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1699-1704
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    特発性浮腫は若年~中年女性に好発する原因不明の浮腫である.浮腫は下肢に強く,間欠性に出現するが月経周期とは無関係である.立位により増悪し,朝夕の体重差が著明である.従来この範疇に含まれていた患者の多くは,食事量の大幅な変動,利尿薬の長期服用,下剤の濫用,習慣性嘔吐に起因する,二次的な水・ナトリウムの体内蓄積による浮腫であった可能性が指摘されている.食生活の改善,利尿薬の漸減,低塩食により浮腫の改善が期待される.
  • 齊藤 寿一
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1705-1710
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ADH分泌異常症候群(SIADH)は,下垂体後葉ホルモンADHの過剰に由来する病態で,中枢神経系疾患,胸腔内疾患,薬剤における分泌亢進あるいはADH異所性産生未分化細胞癌でみられ低ナトリウム血症を主徴とする.中等度以上の低ナトリウム血症の約半数を占めていると考えられる.脱水や循環血液量の減少を伴わない点でSIADH以外の低ナトリウム血症と区別される.治療としては原疾患に対する加療と共に水分摂取制限が基本となるが,最近開発された非ペプチド性ADH受容体(V2)拮抗薬の有効性が注目されている.
  • 菱田 明
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1711-1716
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性腎不全の治療は急性腎不全の原因に対する治療と腎不全期の患者管理の二つとからなる.狭義の急性腎不全では腎不全の管理が中心となるが,この場合,急性腎不全が単独で存在する場合と,多臓器不全の一つとして出現する場合とでは患者管理の方法は全く異なる.また,狭義の急性腎不全以外の急性腎不全の治療の中心は原因疾患に対する治療が中心となる.このように,急性腎不全の治療方針は原因により異なるため,その原因についての鑑別診断は重要である.本稿では急性腎不全の診断と治療につき基本的考え方を述べたのち,最近の話題と進歩にふれた.
  • 堀尾 勝, 折田 義正
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1717-1722
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1)透析導入の原疾患では糖尿病性腎症,腎硬化症の増加が著しい.透析導入率は慢性腎炎では若年層で減少しているが糖尿病性腎症ではいずれの年齢層においても増加している. 2) CcrはCr測定法により誤差を生じる.従来からのJaffe法では近年普及している酵素法に比し血清Cr値は高値となり, Ccrは過小評価される.蓄尿を必要としないCcr推算式も有用である. 3)腎性貧血は遺伝子組み換えエリスロポエチン投与によりコントロール可能となった.
  • 酒井 謙, 長谷川 昭
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1723-1727
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    拒絶反応は早期治療により回復可能な急性拒絶反応と,治療法が確立していない慢性拒絶反応とに大きく分けられるが,近年提唱された移植腎病理診断基準(Banff原案)は従来の病期別分類を超え病理診断を中心に拒絶反応を捉える試みで注目されている.さらに原案では重症度ごとに治療指針が設けられており腎生着率改善に寄与することが期待されている.この新しい病理分類に加え,ステロイドパルス療法を中心に治療の概要を述べる.
  • 加藤 研一, 新井 敬一, 新井 由美, 榎本 憲博, 山田 幸則, 鈴木 都男, 田中 道夫, 吉原 治正, 山田 義夫, 阿部 裕
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1757-1759
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例, 46歳女性.既往歴は34歳出産時弛緩出血にて輸血.その後C型慢姓肝炎にて通院.今回インターフェロン(IFN)療法のため入院. IFN連日投与開始5日目にshock,低血糖に続いて低尿浸透圧の多尿が出現したが,投与中止により回復.内分泌学的検査および負荷試験では汎下垂体機能低下症,頭部MRIではempty sellaが認められた.以上より本症例は出産時出血による下垂体機能低下症(Sheehan症候群)が潜在しており, IFN投与が契機となり顕性化し,尿崩症をも伴ったと推察された.
  • 鈴木 重明, 一條 真琴, 一杉 正仁, 有馬 功一郎, 松岡 康夫, 入交 昭一郎, 藤井 博史
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1760-1762
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.脊髄小脳変性症の診断にて入院中,呼吸不全を合併し人工呼吸管理となった.その後抜管可能となったが,低酸素脳症によると思われる無動性無言の状態に陥った. MRI TI強調像で両側大脳灰白質の全周に高信号域を認め,層状壊死の所見と考えられた.また1H-MRスペクトロスコピーによりN-acetylaspartateのピークの著明な低下を認め,神経細胞の広範な障害を代謝面から証明できた.
  • 森 義雄, 藤野 和已, 田村 公之, 大谷 晴久, 前田 孝夫, 湯川 進
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1763-1764
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    救急入院した30歳女性のFitz-Hugh-Curtis症候群を経験した. Chlamydia trachomatis感染症が徐々に増加していることから,消化器,尿路,呼吸器,筋肉系に明らかな異常を認めない腹痛の鑑別診断上,本症を念頭に置くことがますます重要となってきている.またChlamydia trachomatis感染症は自覚症状や他覚所見が明らかでないこともあり,本症の確定診断には子宮頸管部粘膜擦過標本での淋菌抗原やChlamydia trachomatis抗原,血清抗体検査が重要である.
  • 馬場 史道, 吉岡 うた子, 五月女 隆男, 佐々木 雅也, 深野 美也, 小山 茂樹, 井上 久行, 藤山 佳秀, 馬場 忠雄
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1765-1767
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,女性. 27歳時に多発性膵嚢胞,腎嚢胞を認め,家族歴からvon Hippel-Lindau (VHL)病と診断. 35歳頃より掻痒感,肝機能障害を認め,次第に増悪するため入院となった.膵全体に多発性膵嚢胞を認め,膵内外分泌機能は低下していた.膵内総胆管は,多発性膵嚢胞による圧排のため狭窄し,膵外胆道系は著明に拡張していたため,胆管空腸吻合術及び膵嚢胞生検を施行した.膵嚢胞は,グリコーゲンを多量に含有する立方上皮で覆われており,多発性膵漿液性嚢胞腺腫と診断した.膵病変を伴うVHL病で胆汁うっ滞を来した症例は本例で4例目であり貴重な症例と思われ報告する.
  • 初見 菜穂子, 松島 孝文, 小倉 秀充, 田村 遵一, 唐沢 正光, 矢野 新太郎, 成清 卓二, 村上 博和, 沢村 守夫
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1768-1770
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性.全身倦怠感を主訴に当科入院.骨髄で芽球32.4%,好塩基球(Baso) 3.0%, 3血球系統に形態異常を認, acute myelocytic leukemia with trilineage myelodysplasiaと診断した.染色体分析では46XY, t (6; 9) (p23; q34). BHAC-DM療法により完全寛解となった.患者の白血病細胞を, IL-3添加で培養したところ細胞数およびBasoの増加を認めた.よって,この細胞はIL-3により, Basoへ分化することが示唆された.
  • 加藤 裕之
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1771-1774
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    川崎病は新しい小児の急性熱性発疹性疾患として川崎により最初に報告されたが,その後全身の中小動脈に起こる急性のself-limitedな系統的血管炎であることが分かった1).とくに冠状動脈瘤,虚血性心疾患,全身動脈の動脈瘤,弁膜症,心筋炎,心膜炎,早期動脈硬化などが心血管障害として問題となるが2),なかでも冠状動脈病変が重要である.しかしながら,これらの長期的な予後や自然歴についてはまだ不明の点が多い.
    さらに川崎病の最初の報告から25年以上経過し,初期の例はすでに成人に達している.これらの例では当時,冠状動脈病変が問題にされていなかったため,冠状動脈の精査がなされておらず,現在,原因不明の冠状動脈瘤もしくは虚血性心臓病として内科領域で取り扱われている例もあると考えられる.ここでは川崎病心血管障害の自然歴および長期的な問題点と成人における川崎病後遺症について述べる3).
  • 宮坂 信之
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1775-1780
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    アポトーシスは細胞死の一つの形態である.アポトーシスが起こると,細胞膜は傷害されずに核のクロマチンの凝縮,染色体DNAの断片化が起こり,細胞は死に至る.現在,アポトーシスの分子機構が解明されつつあり,アポトーシスを伝達する分子としてFas抗原およびFasリガンドが注目されている.最近では細胞内の細胞死のシグナル伝達機構も明らかにされつつある.アポトーシスは生体の恒常性の維持に関与しており,重要な生理学的意義を有している.特に免疫系において,アポトーシスは細胞死のみならず,細胞の活性化においても重要な役割を果している.したがって,もしもアポトーシスに異常が起こると,生体の免疫機構は破綻を来し,病的状態が起こることとなる.
  • 吉川 徳茂, 伊藤 拓
    1996 年 85 巻 10 号 p. 1781-1785
    発行日: 1996/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本邦では, IgA腎症は最も頻度の高い慢性糸球体腎炎であり,その多くが学校検尿,職場検診などで無症候性血尿,蛋白尿として発見される.成人ではIgA腎症は慢性腎不全の主要原因となっている.最近著者らは,多施設によるコントロールスタディにより,小児期IgA腎症は発症早期に治療を行えば,腎炎の進行を阻止できることを明らかにした.本稿ではこのスタディを紹介し, IgA腎症の早期発見,早期治療の可能性について考察する.
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