多発性嚢胞腎には,常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)がある. ADPKDは,多発性の腎嚢胞が出現し,腎機能が進行性に低下することと,頭蓋内出血が生命を脅かす主要な病態である. ADPKDの遺伝子異常には少なくとも二つの異なった部位が知られている. PKD1は腎機能の予後,嚢胞の程度がPKD2より厳しい.第16番染色体短腕にPKD1が同定され, PKD1蛋白は, 11回細胞膜を貫いて存在する糖蛋白で,細胞細胞間,あるいは細胞マトリックス間の結合に関与していることが推測されている.第4番染色体長腕上にPKD2の遺伝子が同定され,その蛋白は刺激伝達系に関与していることが推測されている. PKD1とPKD2蛋白が共同して作用していることも推測されているが,詳細は不明である.腎臓の嚢胞以外に,嚢胞性病変が,肝臓,膵臓,脾臓,卵巣,精巣にできる頻度が高い.その他,高血圧,頭蓋内動脈瘤,心弁膜閉鎖不全,大腸憩室,胆管の拡張が合併する. ARPKDは比較的稀な疾患で,比較的出生後早期に死亡するものから稀には成人にまで成長するものまである.このように表現型に大きな差があるが,責任遺伝子座は同一で,第6染色体にある.
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