生体は,感染初期に迅速に免疫応答を行うためのシステムを自然免疫として有している.自然免疫において重要なのが,抗原提示細胞に発現されている, Toll様受容体と呼ばれる一群の膜タンパクである. Toll様受容体は,ヒトでは,現在, 10個同定されており,それらは,微生物特有の種々の分子構造を認識する. Toll様受容体は,認識後,サイトカイン産生,あるいは,種々の共刺激分子の発現増強を誘導し, Tリンパ球の活性化を惹起し,免疫応答を誘導する.このことから, Toll様受容体は,アジュバント受容体であると言い換えることもできる. Toll様受容体システムを適切に理解することは,感染症ばかりでなく,ガンやアレルギーなど免疫疾患を制御するための有効な手段を獲得することにも非常に有用であると考えられる.本稿では, Toll様受容体の機能に関して,最近の知見を概説する.
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