原発性免疫不全症の分類は未だ確立されていないが,われわれは,いわゆるprimary acquired agammaglobulinemia, WHOの分類試案ではvariable immunodeficiencyに属すると思われる24才の女性症例を経験したので報告する.患者は5才の時麻疹に罹患し,以後各種感染,関節炎,湿疹様皮疹,下痢をくり返しており, 23才の時無γ-グロブリン血症を発見されている.本症例の末梢リンパ球数は正常であるが,骨髄,リンパ節に形質細胞はなく,血清免疫グロブリンもIgD以外は極めて低値を示し, PDTおよびインフルエンザ・ワクチン刺激に対しても無反応で,同種血球凝集素価も低いなどB cell systemの障害と共に,ツベルクリン反応, DNCB皮膚感作陰性, T ce11数の減少などT cell systemにも障害が認められた.また血清補体価は高値を示したが, C
1 subunitの一つであるC
1q値は正常であつた.患者の両親はいとこ岡志結婚で,血縁者の中には高γ-グロブリン血症, IgM低下症,抗核抗体およびLE細胞陽性でSLEを疑わせる者, RAテスト陽性例, PHA添加末梢リンパ球芽球化率の低下例など多数の免疫学的異常者が認められ,本疾患の背景に遺伝的素因の存在する事がうかがわれた.以上の如く原発性免疫不全症の中でも多彩な免疫学的異常を示し,現在分類不能の一群に属せしめてある原発性後天性無γ-グロブリン血症の1例について報告すると共に,若干の文献的考察を行なつた.
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