本態性高血圧症の成因としてcatecholamineが何らかの役割を演じているのではないかという推察が種々の研究から行なわれてきた.われわれはcatecholamine代謝の面から本態性高血圧症の原因を追究する一助として,高血圧者11名(うち本態性高血圧者7名,慢性腎炎3名,腎血管性高血圧者と思われる症例1名),および正常者7名に
3H-norepinephrine(NE)を静注し,尿中への
3H-NE,
3H-epinephrine (E),
3H-normetanephrine (NM),
3H-metanephrine (M),
3H-vanillylmandelic acid (VMA)の排泄量を分離測定した.本態性高血圧例においては,正常者に比し尿中への
3H-NE,
3H-VMAおよび総
3H排泄量が有意に増加し,また尿中への
3H-NM+
3H-Mと
3H-VMAとの排泄量の比,すなわち
3H-VMA/
3H-NM+
3H-Mも有意に増加していた.腎性高血圧症においても,本態性高血圧症と同様の傾向が認められた.この成績から,本態性高血圧症においては,交感神経末端におけるNEの摂取,貯蔵,不活性化機構などの代謝異常が存在するものと推定された.一方,
3H-NE静注後には,正常者,高血圧着ともに
3H-E,
3H-Mが少なからず尿中に排泄されることが証明された.
3H-Eおよび
3H-M排泄量の絶対値については,高血圧例と正常例との間に有意差を認めなかつたが,総
3H排泄量を100%としたときの排泄量の割合として比較すると,本態性高血圧者においては正常者に比し
3H-E,
3H-Mともに有意に低下していた.
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