日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
99 巻, 8 号
選択された号の論文の44件中1~44を表示しています
ニュース
会告
特集●膠原病に伴う神経・筋障害:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.膠原病・類縁疾患に伴う神経・筋障害の診断と治療
  • 桑原 聡
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1754-1758
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)では非常に多彩な精神・神経症状がみられ,neuropsychiatric SLE(NPSLE)と総称される.抗リン脂質抗体・血管炎に起因する局在性病変に加えて,せん妄・気分障害などの精神症状や認知機能障害が前景に立つびまん性の病態も包括される.臨床症状はNPSLEに特異的なものではなく,診断基準は確立していない.日和見感染,多臓器病変・薬剤の影響を考慮して診断する必要がある.NPSLEの診断に重要な補助検査は髄液検査と画像診断である.臨床病型・病態に応じて,免疫療法(副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬)と対症療法(抗けいれん薬,抗凝固薬,抗うつ薬)を行う.
  • 内山 真一郎, 赫 洋美
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1759-1763
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    抗リン脂質抗体症候群は,若年性脳血管障害の原因になることはよく知られているが,脳卒中以外にも多彩な神経症状を呈することが最近注目されている.また,抗リン脂質抗体症候群は微小血管障害により脳症を合併することがあり,微小血管症性抗リン脂質抗体症候群(MAPS)という新しい概念が提唱されている.
  • 森 恵子, 祖父江 元
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1764-1772
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群に伴う神経・筋障害についてニューロパチー,中枢病変,筋炎について解説した.神経・筋障害がSjögren症候群に先行する場合や,乾燥症状が明らかでない潜在的なSjögren症候群が多いため,診断に注意が必要である.治療として副腎皮質ステロイドや免疫グロブリン静注大量療法などの免疫療法が行われ,一定の有効性が認められる.
  • 下島 恭弘, 池田 修一
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1773-1782
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    神経障害は血管炎症候群における主要な臓器障害の1つである.血管炎に合併する末梢神経障害や脳梗塞は,栄養血管壁の炎症性変化にともなう虚血に起因して出現する.また血管壁の破綻にともなう頭蓋内出血や,脳実質への炎症波及による脳症なども見られる.リンパ球の活性化や炎症性サイトカインの関与が重要であり,また抗好中球細胞質抗体は病態に大きく影響している.こうした病因に即した新たな治療戦略が開発されている.
  • 冨安 斉, 冨安 敏夫, 吉井 文均
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1783-1789
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(RA)の神経・筋合併症として上位頸椎病変を中心に,多発性モノニューロパチー,絞扼性ニューロパチー,髄膜炎・脳炎,治療薬による神経合併症について概説した.一般内科医がRAの診療にかかわることは少なくない.RAの関節症状のため神経・筋合併症の発見が遅れることもある.中には環軸椎亜脱臼のように致命的になりうる疾患もあるので,RA患者に対しては神経・筋障害の合併を想定しながら診察していく必要がある.
  • 松下 拓也, 吉良 潤一
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1790-1794
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    混合性結合組織病は全身性エリテマトーデス,強皮症,多発性筋炎の症状を混合して示す,独立した病態を有する結合組織病である.筋炎は混合性結合組織病の40%程度,神経症状は10~20%に認められる.混合結合組織病に特徴的な神経症状は三叉神経障害と無菌性髄膜炎であり,無菌性髄膜炎の場合は薬剤誘発性の頻度が高い.筋炎の症状は軽度である場合が多く,病理学的には多発性筋炎と皮膚筋炎の双方の特徴を示す.
  • 清水 潤
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1795-1802
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    従来,多発筋炎・皮膚筋炎の診断には,BohanとPeterの診断基準が用いられてきたが,近年の血清中の筋炎自己抗体や生検筋組織所見に関する知見や理解の進歩に伴い,本基準は筋炎の病態解明や治療開発には不十分であることが明らかになってきた.多発筋炎・皮膚筋炎は,皮疹の有無・膠原病や悪性腫瘍などの合併疾患の有無,検出される自己抗体の種類,筋組織所見から特徴づけられ,臨床像においても病態機序においても均一ではない.筋炎の病態解明と治療開発のためには,臨床像解析,自己抗体解析,組織所見解析などを通した多方面からの総合的アプローチと新しい分類基準が必要である.
  • 田中 正美
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1803-1808
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    高齢者に多い本症は,高齢化社会を迎えて,今後さらに増加してゆくと思われる.日本人には失明の危険のある,巨細胞性血管炎(側頭動脈炎)の頻度は低いが,長期予後は必ずしも良好とは言えず,急性期ではステロイドに良く反応するが,慢性化して再発したり,減量が困難なことが少なくない.欧米の診断基準が利用されることが多いが,日本人向けの感度の高い診断基準が必要と思われる.
  • 菊地 弘敏, 廣畑 俊成
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1809-1814
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Behçet病は,再発性口腔内アフタ性潰瘍・皮膚症状・外陰部潰瘍・眼症状を4主症状とする急性炎症を繰り返す原因不明の疾患である.特殊病型には腸管型・血管型・神経型があり,神経型の中枢神経病変はさらに急性型と慢性進行型に分類される.急性型と慢性進行型ではその治療方法も大きく異なり,病型に適した治療方法を選択することが極めて重要である.近年,Behçet病の難治性ぶどう膜炎に対してinfliximabが保険収載され期待通りの効果を示している.infliximabは難治性の中枢神経病変にも効果が期待される.
  • 久永 欣哉
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1815-1820
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    神経Sweet病は特徴ある有痛性隆起性紅斑を呈する良性・再発性の脳炎・髄膜炎である.類縁疾患である神経Behçet病がHLA-B51と強い相関を示すのに対し,神経Sweet病ではHLA-B54およびHLA-Cw1の頻度が際だって高い.その神経病変は皮膚病変と同様に壊死性血管炎の所見を欠き,ステロイドによく反応して改善するが再発することも少なくない.好中球の機能亢進が示唆される脳炎・髄膜炎では神経Behçet病と神経Sweet病の両疾患を包括する神経好中球病という大きな枠でとらえ,他の脳炎・髄膜炎との鑑別診断を十分に進めた上で,ステロイドを中心とした治療方針を立てることが重要である.
  • 河内 泉, 西澤 正豊
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1821-1829
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    肥厚性硬膜炎は,硬膜を病変の主座とする慢性炎症性疾患で,頭痛,多発性脳神経障害などの神経症状を来す.近年,MRIをはじめとした画像診断の進歩により,極めて稀な疾患から,頭痛を扱う内科日常診療で常に念頭に置かなければならない疾患へと変貌している.また抗好中球細胞質抗体,IgG4をはじめとした血清学的検査法の進歩により,自己免疫性肥厚性硬膜炎の病態機序が明らかになりつつある.
  • 作田 学
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1830-1836
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスの神経病変は,サルコイドーシス死亡例の約7%に認められる.サルコイドーシスの診断基準にしたがって診断をおこない,治療には主に副腎皮質ステロイドを使用する.しかし,あわてて診断的治療をしてはならないし,診断計画をきちんと立て,実行する事が大切である.その上で治療を開始する.
  • 松本 美富士
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1837-1844
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    線維筋痛症は実際には比較的頻度が高いにもかかわらず,これまで本邦ではあまり注目されてこなかった原因不明の機能性リウマチ性疾患である.本例では身体の広範な部位の慢性疼痛とこわばりを主症状とし,その他に多彩な身体,精神・神経症状を伴い解剖学的に明確な部位の圧痛を認める以外,身体所見,臨床検査,画像検査上明らかな異常を認めず,機能性身体症候群の一つに含まれ,診断は操作的であり,抗うつ薬や抗てんかん薬が治療の中心となる.
II.膠原病における神経病理
  • 吉田 眞理
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1845-1852
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    膠原病に関連する中枢神経の基本的病理像は全身臓器の病理像と共通する.血管炎症候群では原発性の動脈炎を認め侵される血管径に疾患毎の特徴がある.全身性エリテマトーデスでは小血管のフィブリノイド壊死や血栓形成を認める.神経Behçetでは小血管周囲の炎症細胞浸潤と脱髄・不全軟化巣の形成をみる.Sjögren症候群のミエロパチーでは脱髄疾患と類似した像を示し,神経サルコイドーシスでは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認める.
  • 小池 春樹, 祖父江 元
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1853-1857
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    膠原病においては,末梢神経系にも血管炎や神経節障害などの病変が生じうる.血管炎では,神経線維は軸索変性をきたし,長期間経過した例では再生像を認める.神経束毎の神経線維の障害度の差異や楔状の神経線維の脱落は血管炎を示唆する所見である.神経節障害はSjögren症候群に関連して生じることが知られており,障害される神経細胞の選択性により,痛みや感覚失調などの特徴的な臨床症状を呈する.
III.最近の話題
  • 永井 立夫, 廣畑 俊成
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1858-1864
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ループス精神病では,血清中の抗リボソームP抗体(抗P抗体)と髄液中の抗NMDA受容体サブユニットNR2抗体(抗NR2抗体)の上昇が見られる.抗P抗体は活性化したヒト単球系細胞からのTNFαやVEGFなどの産生を増強することから,これらを介して血液脳関門の透過性を亢進させ,中枢神経内への自己抗体の侵入を促進する可能性がある.一方,抗NR2抗体は神経細胞表面のグルタミン酸受容体に結合し,神経細胞死を誘発する.
  • 木村 暁夫, 犬塚 貴
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1865-1870
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    神経障害を伴う膠原病患者において自己免疫異常を背景として出現した抗神経抗体は神経障害に密接な関りをもつ可能性がある.したがって特異的な抗神経抗体を同定することは,その病態解明に重要である.また,時に神経系の日和見感染症や精神疾患との鑑別が問題となるこれら神経症状の,適切な診断と治療効果のメルクマールの確立につながると考えられる.我々はプロテオミクス解析の手法を用いて,神経障害を伴う膠原病に特異的と考えられた新たな抗神経抗体をいくつか同定してきたので報告する.
  • 伊藤 聡
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1871-1877
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節リウマチの治療に生物学的製剤が導入され,劇的な効果をあげている.我が国では4製剤が認可され,それぞれの特徴を考慮して使用されている.生物学的製剤は,神経Behçet病,多発性/皮膚筋炎,血管炎症候群などの,膠原病,膠原病関連疾患における神経・筋障害においても使用が開始され,有効例も報告されている.しかし,保険適用外であり,報告された症例数も少ないため,使用にあたっては,十分なインフォームドコンセントが必要である.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 白石 正
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1916-1922
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    消毒は滅菌と異なり全て微生物を殺滅することはできず,感染を生じない程度に数を減らすことと定義されている.滅菌は加熱およびガスなどを利用するため生体に適用できず,このため消毒薬が微生物数を減らす手段として使用される.消毒薬は,抗微生物スペクトルの相違によって高・中・低水準の3つに分類されている.高水準消毒薬は,最も広い抗微生物スペクトルを有するが,人体に使用できず,内視鏡類などの医療器具が対象となる.中水準消毒薬は,比較的広い抗微生物スペクトルを有し,生体,環境などに使用できる.低水準消毒薬は,狭い抗微生物スペクトルであるが安全性は高く,生体,環境の消毒に使用される.これらの消毒薬は,それぞれ特性を有し消毒対象(生体,器具,環境)によって使い分けられている.
  • 宮坂 信之
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1923-1927
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(RA)は,関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である.RAの最大の問題点は,関節破壊とそれによって起こる生活の質の低下である.RAにおける関節破壊は発症後1~3年がもっとも進行が早いため,早期診断・早期治療がきわめて重要である.近年,早期診断のためのツールとして抗CCP抗体や関節超音波検査,MRIなどが臨床応用されつつあり,早期からの診断が可能となってきた.さらに,2009年末にアメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会とが協同で新たなRA診断基準が提出された.新たな診断基準の目的は,できるだけ早期からRAを診断するだけではなく,メトトレキサート(MTX)での治療を早期から開始することで関節破壊を阻止しようというものである.
  • 竹田 秀
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1928-1933
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    近年,心腎連関など,臓器間の相互作用による代謝調節機構(臓器間クロストーク)が注目されている.骨と他の臓器のクロストークについても,その詳細な分子メカニズムが早くから検討されてきた.その結果,旧来,骨代謝は骨近傍に存在するホルモン,サイトカインなどによってのみ調節されると考えられていたが,交感神経系や中枢神経系に存在する神経ペプチドが骨形成,骨吸収を多面的に制御することが明らかとなった.臨床的にも交感神経系β遮断薬が骨形成を亢進,骨吸収を抑制し,骨粗鬆症患者における骨折の危険率を低下させる可能性が示されており,神経系による骨代謝調節の経路は新たな骨粗鬆症の治療標的としても期待される.
  • 一瀬 白帝
    2010 年 99 巻 8 号 p. 1934-1943
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    凝固第XIII因子(F13)は,Aサブユニット(F13-A)二量体とBサブユニット(F13-B)二量体からなる異種四量体として血中を循環しており,トロンビンによって活性化されてフィブリンを架橋結合する.先天性F13欠損症は,出血,創傷治癒異常,反復性流産が3主徴であり,出生後の臍(帯)出血で初発することが多い.一方,大手術や各種の疾患でF13の過剰消費や産生障害による二次的F13欠乏症を生じるが,一般にF13低下は軽度で出血を伴うことは少ない.最近,後天性血友病13(出血性後天性F13欠乏症の意)症例の相談が増えており,2009年度にその実態と原因,診断と治療についての班研究が開始された.本疾患は,ルーチン検査で凝固時間の延長や血小板数の異常が認められないので,症例が見逃されている可能性が高い.診断には本疾患を想起することが大切で,F13活性測定が不可欠である.止血にはF13濃縮製剤を投与するが,約半数の症例には自己抗体が存在するので,免疫抑制療法が必要である.幸い2010年度も班研究の継続が認められているので,本疾患疑いの症例があればご相談頂きたい.
専門医部会
シリーズ:内科医に必要な救急医療
第9回東海支部教育セミナーまとめ
シリーズ:検査法の理解と活用
シリーズ:考えてみよう (臨床クイズ) 問題
シリーズ:一目瞭然! 目で見る症例
シリーズ:内科医のための災害医療活動
シリーズ:指導医のために:プロフェッショナリズム
シリーズ:世界の医療
シリーズ:考えてみよう (臨床クイズ) 解答
地方会
会報
feedback
Top