慢性気道感染症にはびまん性汎細気管支炎をはじめとして気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患のうち気道病変優位型である慢性気管支炎が含まれ, 欧米においてはとくに嚢胞性線維症があげられる. その病態の類似点として, 気道における粘液・水分の過剰分泌, 中枢気道の好中球の過剰集積, 末梢気道におけるリンパ球の集積, 最終的に緑膿菌の持続感染の成立があげられる. 気道の炎症進展には種々の要因・原因物質が関連しているが, とくに緑膿菌が気道に付着すると, 気道上皮細胞からのinterleukin-8などのサイトカイン産生による好中球浸潤や粘液の産生が誘導されて気道上皮障害が起こり, さらに緑膿菌は付着し易くなるという悪循環が形成される. その過程において, 緑膿菌は増殖・定着し, バイオフィルムを形成して, 宿主免疫および抗菌薬から逃避する. 従って, 宿主側の過剰炎症と菌側の機能とのinteractionを制御することが慢性気道感染症の治療戦略には重要であり, マクロライド系抗菌薬はその両者を抑制する点において極めてユニークな薬剤である.
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