日本内科学会雑誌
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68 巻, 6 号
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  • 窪倉 武雄
    1979 年 68 巻 6 号 p. 605-619
    発行日: 1979/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    大動脈炎症候群60例を血管造影および血管径の計測により分類し検討した.病型と発症年令および病変の分布との間に顕著な相違がなく,病型と経過期間との間に有意差が認められた.上行大動脈の拡張性病変が68.3%にみられ,大動脈弁閉鎖不全(AI)を51.7%に認めた. AI例の上行大動脈造影所見が3型に分類された. AIの80%に大動脈基部拡張が関与し,うち16%は同部の拡張が顕著なannulo-aortic ectasia型を呈し,大動脈の高度の硬化性病変を伴い,外科治療上留意すべき所見であつた. 20%が大動脈基部拡張を欠き, Valsalva洞の変形がみられ,大動脈弁の退縮ないし侵襲によるAIの機序が推測された.上行大動脈拡張と連続性に腕頭動脈およびその分枝の近位側の拡張(開存)を示す例が80%にみられ,病型診断上あるいは本症の早期診断上,頚部の血流診断が役立つ.高血圧症例の1/3が腎血管性であり, Goldblatt型ではび漫性の腎動脈狭窄が認められ, 1例に血管造影後腎機能の低下が認められた,肺高血圧を伴う肺動脈病変例の60%に中等度以上(収縮期圧45~80mmHg,平均26~45mmHg)の肺高血圧があり,広範な肺動脈病変が認められた.狭心症では, AI,肺・体高血圧,心肥大に基づく2次性冠不全が高率と考えられ,本症の狭心症では冠状動脈造影が必要である.活動性炎症の判定上,病変部の「X線学的硬化度」診断が必要であり, CTの併用が有用である.
  • 保科 博登
    1979 年 68 巻 6 号 p. 620-630
    発行日: 1979/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    免疫賦活薬とされている1evamisole (LMS)の末梢血リンパ球に及ぼす影響を,正常人23例,膠原病患者44例を対象としてin vivoおよびin vitroの実験系にて解析し以下の成績を得た. 1) 3種の1ectin反応はPHAとConAでは全ての疾患で低下していたが, PWMでは全身性エリテマトーデス(SLE), Sjögren症候群のみが低下を示した. 2) LMSのPHA反応への影響は正常人は患者群より上昇例,増加率共に高く,とくにSLEでは上昇例も少なく増加率も有意に低下していた. 3) 3種のlectin反応の低反応群は正常反応群に比べLMSによる上昇例,増加率共に高く,とくにPWMの増加率は有意に高かつた.しかし,膠原病のPHA低反応群は正常人の低反応群より上昇例,増加率共に低く,とくにSLEの低反応群は6例中上昇例は皆無であつた. 4) T細胞数減少症例ではin vitroおよびin vivo共にLMSの投与はT細胞数を増加させた. 5)膠原病患者8例にLMSを投与した所, LMSによるPHA反応は正常人末梢血リンパ球の反応態度に近づく傾向がみられた. 6) LMSの臨床効果は8例中2例のみにしか認められなかつた.以上より膠原病患者では細胞性免疫能の低下傾向がみられ, LMSはin vivoでは細胞性免疫能を調節させる作用のあることを明らかにした.しかし, LMSの治療薬物としての明らかな臨床効果は得られず, in vitroで得られた成績との解離などについても考察した.
  • 植松 大輔, 金沢 実, 阿部 直, 佐藤 勝, 川城 丈夫, 石井 裕正, 横山 哲朗
    1979 年 68 巻 6 号 p. 631-636
    発行日: 1979/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    胸水貯留が診断の契機となり,膵石と膵のう胞を伴う慢性再発性膵炎および腎結石を合併した原発性副甲状腺機能亢進症を術前に診断し,縦隔内腺腫を摘出し得た1例を経験したので報告する.症例は35才の男.昭和51年11月より左季肋部痛が繰り返し出現した.昭和52年4月と10月に左側胸部痛を認め胸水を指摘され11月に入院した.胸水は血性滲出性でアミラーゼは30,200SUで血清,尿アミラーゼも高値を示した.アイソザイムはいずれも膵由来であつた. ERCPで膵石症と膵のう胞を認め慢性再発性膵炎と診断した.またIVPで右腎結石を認めた.血清Caは5.5mEq/l, Pは1.3mEq/lで%TRPは72%であつた.末梢血の副甲状腺ホルモン(c-assay)は0.1ng/mlであつたが最下甲状腺静脈血では4.25ng/mlで原発性副甲状腺機能亢進症と診断した.気縦隔法で,縦隔内腺腫が疑われた.胸骨上窩部切開により縦隔内副甲状腺腺腫を摘出した.本例においてはX線検査で骨病変は認められず,血清Caの上昇も軽度で,本症例の原発性副甲状腺機能亢進症は尿路結石群と考えられる.欧米では原発性副甲状腺機能尤進症に膵炎を合併した症例の報告はかなり見られるが本邦では現在まで8例の報告があるにすぎず,胸水を伴つた膵炎を合併した原発性副甲状腺機能亢進症としては本報告が第1例である.
  • 石川 三衛, 倉富 雄四郎, 斉藤 寿一
    1979 年 68 巻 6 号 p. 637-641
    発行日: 1979/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は57才の女で,頭痛,悪心,嘔吐,下肢の痙を主訴に入院した.理学的所見に異常なく,検査成績では血清ナトリウム118mEq/l,血清カリウム4.1mEq/l,血漿浸透圧238mOsmo1/kgに対して尿浸透圧は801mOsmol/kgと高張を保つていた.血漿ADHは20Pg/ml以上で,水負荷試験でも全く抑制を受けなかつた.腎,副腎機能は正常.さらにこれらの臨床所見は厳格な水制限1日1000m1以下により著明な改善を認め, SIADHの存在が示唆された.また,入院後次第に低カリウム血症,代謝性アルカローシスー血清K2.6mEq/l, pH7.504, HCO3-30.6mEq/l-の出現を認めた.これに呼応して,尿中17-OHCS,血漿ACTH,血清コルチゾールはそれぞれ47.7mg/日, 480Pg/ml, 70.3μg/dlと高値で,最大32mgに及ぶdexamethasone投与抑制試験でも全く抑制されず,副腎皮質機能亢進症が明らかとなつた.左鎖骨上窩リンパ節生検により肺由来の燕麦細胞癌と診断され,さらに同リンパ節に高濃度のADH,ニューロヒジンおよびACTHの存在を確認した.このように本症例は,臨床的に明らかなSIADHおよび副腎皮質機能亢進を伴い, ADHおよびACTHの同時産生を認めた希有な肺癌の症例である.さらに本例では血中ニューロヒジンが高値を示し,本ベプチド測定が異所性ADH産生症の診断に有用なことが示唆された.
  • 柴崎 敏昭, 木村 靖夫, 阿部 努, 鈴木 孝雄, 宮島 真之, 酒井 聡一, 小椋 陽介, 上田 泰
    1979 年 68 巻 6 号 p. 642-647
    発行日: 1979/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    24才の女性で妊娠分娩を契機として発症, Sjögren症候群を併発したBartter症候群の1例を経験した.本例は高γ-globulin血症,血清CPK上昇から皮膚筋炎を疑われ, steroid薬を投与されていたが,筋生検は低K血症による像を呈し,眼症状,唾液腺所見からSjögren症候群と診断した.本症例はその他汎アミノ酸尿を示し,腎組織検査で高度の間質性腎炎を呈したがNH4Cl負荷にて尿酸性化障害は認めなかつた. indomethacin単独投与では血清Kは軽度上昇したのみであつたが, spironolactone, K剤で血清K正常化し,外因性angiotensin II (AGII)血管反応性の改善がみられ,血清prostaglandin (P-PG)は正常に復した. Bartter症候群の病因は諸説があり,一定の結論を得ておらず, Sjögren症候群に起因すると考えられる腎組織変化とBartter症候群との因果関係が注目される.
  • 松永 宗雄, 阿部 寛治, 成田 祥耕, 大平 誠一, 豊田 隆謙
    1979 年 68 巻 6 号 p. 648-652
    発行日: 1979/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    風疹罹患に伴い,急性小脳失調症および一過性糖尿病状態を呈した症例を経験した.症例は12才の男子で,典型的な風疹の発疹出現後に,著しい小脳性失調と軽い意識障害およびketoacidosisを伴う糖尿病状態を呈した.小脳性失調は極期には全く起立歩行不能となつたが,約1ヵ月半の経過で軽快した.風疹脳炎のうち主として小脳炎の形をとつたものであり,また臨床的には小児に多い予後良好な“急性小脳失調症”にも該当する.また糖尿病状態は,臨床的には10日以内に軽快したが, 3週間目の糖負荷試験でインスリンはなお低反応であつた.風疹ウイルスによる膵ランゲルハンス島炎によると考えられた.従来,風疹脳炎はかなりまれであると考えられてきた.しかし1975年から約2年間のわが国における大流行の際には,過去考えられていたよりも相当高頻度に発現したと推定される.風疹脳炎の中で小脳症状を呈する症例は極めて少数しか報告されておらず,本症例はウイルス感染の関与が重視されている“急性小脳失調症”の病因を考える上で貴重である.また近年,若年者の糖尿病とウイルス感染症の関連性が論じられ, Coxsackie B群ウイルスなどが注目されている.実験的にもいくつかのウイルスが膵ランゲルハンス島炎ないしは糖尿病を来すが,風疹ウイルスによる報告も散見される.風疹ウイルスによる小脳炎および糖尿病状態について,文献的検討を加え考察した.
  • Kasabach-Merritt症候群
    井田 隆, 小坂 佳子, 戸村 成男, 椎貝 達夫, 出浦 照国, 阿部 恒男, 武内 重五郎, 松原 修, 田中 道雄
    1979 年 68 巻 6 号 p. 653-659
    発行日: 1979/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    巨大血管腫に伴つた消費性凝固障害はKasabach-Merritt症候群といわれ,出血傾向を生ずる.今回,異常血管腫内の血栓形成により慢性消費性凝固障害状態が存在し,ネフローゼの経過中にその急性増悪が生じ,死亡したと考えられる1例を経験したので剖検所見をあわせ報告する.症例は17才,女性で,主訴はたんぱく尿,浮腫,出生時より存在した右半身肥大と母斑および血管腫で,家族歴に特記すべきことはない,昭和51年4月,腎静脈血をふくめ,血液凝固学的検討を行なつたところ,消費性凝固障害が認められた.選択的腎動脈造影で腎内血管腫が確認され,腎静脈血では,腎内血管腫内皮からのプラスミノーゲンアクチベータ遊離によると思われる線溶能の亢進が認められた.患者は昭和52年12月,胸腔,大腸,泌尿生殖器への出血で死亡した.剖検所見では皮下,胸膜,腎,脾,肝,左副腎,卵巣,脳に多数存在する血管腫内に多量の新旧フィブリン血栓を認めた.血尿,低補体血症を伴うステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を合併していたが,今まで,腎内血管腫とネフローゼの合併例の報告はなく,単なる合併と考える. Kasabach-Merritt症候群の報告は比較的まれとされる.本例の消費性凝固障害の発症要因などにつき考察を加えた.
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