Cronkhite-Canada症候群は外胚葉性変化を伴つた遺伝性のない消化管ポリポージスで,現在までに29例報告されている.われわれの2例とも下痢で発症し,脱毛,爪甲異常,皮膚色素沈着および,低蛋白血症を伴い,胃,十二指腸,小腸,大腸,直腸に著明なポリポージスがみられた.症例1のリンパ管造影では全く正常で,対症療法で20ヵ月後悪液質で死亡した.症例2は右結腸切除術と対症療法で一時軽快したが,消化性潰瘍の出血で71カ月で死亡した.本症候群に伴う低蛋白血症は血漿蛋白の消化管への漏出によるとされているが,われわれのリンパ管造影所見と各ポリープの組織像より,蛋白漏出はリンパ管とあまり関係なく,ポリープの嚢胞状に拡張した腺管腔より直接,または,間接に起こると思われる.外胚葉性変化の原因としてビタミン,アミノ酸,電解質などの吸収障害,血漿蛋白漏出による蛋白代謝異常,または内分泌系の異常がいわれているが,本症候群に固有な変化と思われる.ポリープは腺腫性ポリープとか,炎症性ポリープとか,若年性ポリープに類似しているといわれているが,胃のポリープの大部分は腺腫性ポリープに似た腺管の増殖性変化を主に示し,胃の一部,小腸,大腸,直腸のポリープは若年性ポリープに似た嚢胞状腺管拡張を示した.本症候群の半数は各種の治療にもかかわらず死亡している.治療に際して,対症療法を選ぶか,手術療法を併用するか,の判断は難しく,個々の症例で慎重に検討されるべきだと考える.
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