日本内科学会雑誌
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64 巻, 6 号
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  • 山名 征三, 矢野 啓介, 佐藤 慶一郎, 遠迫 克英, 西谷 皓次, 藤原 唯朗, 大藤 真
    1975 年 64 巻 6 号 p. 535-544
    発行日: 1975/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    SLEの細胞性免疫と,血中抗体を多角的に検討し,本症の発症,進展がいかなる機構の支配下にあるかにつき若干の考察を試みた. in vivoの指標として用いたPPDによる遅延型皮膚反応は40例中4例のみ陽性で, DNCBに対しては41例中9例に陽性と著明な反応低下を認めた. in vitroの指標として用いたヒツジ赤血球(SRBC)ロゼット形成細胞(T-リンパ球)の比率も33.0±17.3% (対照46.3±12.4),絶対数は367.5±305.5 (対照1142.5±635.7)と著明な低下を示した.にもかかわらずPKAに対しては正常反応を示したことから, T-リンパ球は機能的分化に応じて諸種の刺激に対する反応性を変化させると推定される. B-リンパ球は逆に増加傾向を示したが,絶対数は対照と変らなかつた. B-リンパ球と血中免疫グロブリン,抗核抗体(ANF)の染色形態,抗DNA抗体価,血清補体価との間に有意の相関を認めなかつた. MIT (macrophage migration inhibition test)と抗DNA抗体価の間にも相関関係は認められなかつた.しかしながら,急性期SLEの1例につき経時的にT-リンパ球, B-リンパ球の変動を追跡した結果,治療に伴う臨床症状,並びに免疫血清学的所見の改善と平行してT-リンパ球の増加, B-リンパ球の減少を示した症例を経験した.以上のことから, SLEの発症にはT-リンパ球の減少と機能異常に基づく細胞性免疫能の減退が重要な鍵を握つていると考えられる.本症の病態の進展には流血抗体が大きく関与していることは事実であろうが,両者の関係はいまだ明確にされるには至つていない.
  • 作田 学, 木全 心一, 千葉 省三, 柴田 整一, 小坂 樹徳
    1975 年 64 巻 6 号 p. 545-551
    発行日: 1975/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は33才,男. phenacetin (acetophenetidin)含有鎮痛剤を大量に長期服用し, 10年間の服用量はおおよそphenacetin 2kg, aminopyrine 0.7kg, barbiturate 0.3kgと算定され,全身倦怠感を主訴として入院した.検査により著明な溶血性貧血,慢性間質性腎炎および低γ-globulin血症が認められた.服薬中止により貧血は改善の傾向を示したが,腎障害の改善は見られなかつた. phenacetin服用に基因する溶血性貧血の機序としては, 1) G 6 P D欠損症を基盤とするもの, 2)自己免疫的機転,あるいは, 3)赤血球に対する直接作用,などが考えられているが,本例においては1), 2)は否定的で, phenacetin大量かつ長期服用に基づく, 3)の機転によるglutathione reductase, methemoglobin reductaseを含む赤血球酸化還元機構の障害による機序が強く示唆された.一方,腎障害については, 1953年Spühier.らが間質性腎炎の症例を報告して以来,現在まで海外で2000例を越すphenacetin nephropathyの報告がある.本症例の腎障害については, acetylsalicylic acid (ASA)を患者は全く服用しておらず, phenacetinのみによる可能性が大きい, phenacetinによる低γ-globulin血症の報告は無く, phenacetinの服用に関連するものか否かについては今後の検討にまちたい.本邦におけるphenacetinによる臓器障害の報告は希で,とくに溶血性貧血の合併例は未だ報告されていない.腎障害については3例の報告があるが,本例の如く定型的な腎炎の組織像を呈し,腎不全の治療のために透析を要するに至つたほどの症例はない.
  • 早稲田 則雄, 小川 博遊, 佐野 萬瑳寿, 藤田 宗, 新保 慎一郎, 吉見 輝也, 伊藤 憲一, 恒松 徳五郎, 深瀬 政市, 島 章, ...
    1975 年 64 巻 6 号 p. 552-557
    発行日: 1975/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は20才の女性. 17才で蛋白尿・多関節痛,翌年高熱・口内炎・頬部,上肢のエリテーマ様発疹および四肢運動麻痺を来たし,低K血症を発見された.その後,耳下腺部有痛性腫脹を繰り返し,筋肉痛・脱毛・結節性紅斑および頻回の尿石排出がある.検査成績は低K血症があり(代謝性アシドーシス),尿はアルカリに傾き蛋白弱陽性.腎糸球体機能は中等度低下.ピトレッシン不応性尿濃縮力低下を示す.塩化アンモン負荷試験により尿酸性化障害を認め, Distal typeのrenal tubular acidosis (RTA)と診断した. I V PでMedullary sponge kidney (MSK)の合併を認めた.高γ-グロブリン血症があり,抗甲状腺・抗核・抗DNA抗体陽性等の多彩な免疫異常を伴う.生検像では腎,唾液腺,甲状腺の間質に小円形細胞の浸潤を認めた. Sicca syndromeの訴えはないが唾液分泌量低下し, Sialogramでびまん性Sialectasisを認めた.臨床症状および諸検査所見からSjögren症候群の範疇に入る疾患と診断した.本症候群と本症例に併存したMSK, RTAとの病因的因果関係について考察を加えた.かかる病態の組合せは今までに報告はなく非常に珍しい症例であり,ここに報告する.
  • 佐々木 淳, 福間 道雄, 千阪 恵美子, 柏木 征三郎, 今村 孝
    1975 年 64 巻 6 号 p. 558-564
    発行日: 1975/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Spironolactone投与によつて副腎皮質球状層に円形,層状構造を示す細胞封入体が発現するという報告が注目されている.症例は, 26才の女性.原発性アルドステロン症の診断のもとに極めて大きな左副腎原発の良性腺腫(17g, 27×34×25mm)が摘出された.組織検査で腺腫に圧排された正常副腎皮質球状層細胞に限局するスピロノラクトン封入体が光学ならびに電子顕徴鏡的組織検査によつて認められた.原発性アルドステロン症にスピロノラクトン封入体が認められたという報告は少ない.本症例の術前,検査として,静注可能な抗アルドステロン剤, canrenoate-K (300/日, 10日間)を使用したが,開始10日目より,妄想,幻聴などの症状が出現し,術後も持続している.この精神症状は見当織や,人格障害などなく明らかに内因性精神病とは異なつていた.原発性アルドステロン症でこの様な精神異常を合併した例の報告は見あたらない.一方, canrenoate-Kの中枢神経作用を示唆する報告があり,本症例の精神症状との関連性が疑われる.
  • 横山 芳正, 河野 保, 青木 幹雄
    1975 年 64 巻 6 号 p. 565-573
    発行日: 1975/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1951年ChurgならびにStraussは剖検例を主として13例のallergic granulomatous angitisを報告した.本症は,臨床症状として喘息,発熱,好酸球増多および多臓器病変を示し,組織所見では壊死性血管炎と肉芽腫病変を認めることが特徴である.われわれは生前に本症と診断し得た希な症例を報告する.症例は29才,女.約3年前喘息発作で発症し,関節痛および息切れを主訴として入院した.胃・小腸の多発性潰瘍を発見し,その切除組織に壊死性血管炎,類上皮細胞と巨細胞を伴う肉芽腫病変を認めた.経過中発熱,好酸球増多,体重減少,皮疹がみられた.副腎皮質ステロイド剤投与により臨床症状は軽快し,検査成績は正常化した.本症例はChurgらが記載した臨床症状および病理組織所見のほとんどすべてを認める定型的allergic granulomatous angitisと考えられる.
  • 藤井 浩, 鹿岳 研, 岩佐 昇, 西谷 定一, 西村 伸治, 三好 正人, 稲富 五十雄, 松本 繁世
    1975 年 64 巻 6 号 p. 574-582
    発行日: 1975/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Cronkhite-Canada症候群は外胚葉性変化を伴つた遺伝性のない消化管ポリポージスで,現在までに29例報告されている.われわれの2例とも下痢で発症し,脱毛,爪甲異常,皮膚色素沈着および,低蛋白血症を伴い,胃,十二指腸,小腸,大腸,直腸に著明なポリポージスがみられた.症例1のリンパ管造影では全く正常で,対症療法で20ヵ月後悪液質で死亡した.症例2は右結腸切除術と対症療法で一時軽快したが,消化性潰瘍の出血で71カ月で死亡した.本症候群に伴う低蛋白血症は血漿蛋白の消化管への漏出によるとされているが,われわれのリンパ管造影所見と各ポリープの組織像より,蛋白漏出はリンパ管とあまり関係なく,ポリープの嚢胞状に拡張した腺管腔より直接,または,間接に起こると思われる.外胚葉性変化の原因としてビタミン,アミノ酸,電解質などの吸収障害,血漿蛋白漏出による蛋白代謝異常,または内分泌系の異常がいわれているが,本症候群に固有な変化と思われる.ポリープは腺腫性ポリープとか,炎症性ポリープとか,若年性ポリープに類似しているといわれているが,胃のポリープの大部分は腺腫性ポリープに似た腺管の増殖性変化を主に示し,胃の一部,小腸,大腸,直腸のポリープは若年性ポリープに似た嚢胞状腺管拡張を示した.本症候群の半数は各種の治療にもかかわらず死亡している.治療に際して,対症療法を選ぶか,手術療法を併用するか,の判断は難しく,個々の症例で慎重に検討されるべきだと考える.
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