日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
52 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 戸田 安士
    1963 年 52 巻 3 号 p. 179-192
    発行日: 1963/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Kallikrein-inaktivator (KI)を用いて,生体内外におけるtrypsin活性阻害作用および膵炎に対する効果を実験的,臨床的に観察した.in vitroでtrypsin溶液にKIを加えると,活性の減弱がみられ,また,交叉ろ紙電気泳動で, KIとtrypsinとの干渉が認められることから, KIのtrypsinに対する作用はKI-trypsin-compoundの形成によるものであることを推定した.さらに, trypsin静注実験で, KI流血中でもtrypsin活性を阻害することを確認し,ついで,実験的膵炎犬にKIを使用して,血液amylase, catalase,血糖の変動,膵および肝の臓器脂質分画と,その組織学的所見をKI非使用群と比較検討して, KIによる膵障害の軽減効果を確認した.さらに臨床的にもこれを使用して,とくに急性膵炎に対して有意義であることを観察した.以上の諸成績から, KIは活性trypsinの阻害により,膵炎に対して,治療的効果を有するものと考えられる.
  • 木村 耕二
    1963 年 52 巻 3 号 p. 193-207
    発行日: 1963/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高血圧患者の腎機能を総合的にみるために腎機能表を考え,腎血流量,腎血漿流量,糸球体濾過値,濾過率の値を排列して,観察した結果高血圧患者においては一連の腎機能障害の型があることをみた.そうしてその分類を試み,正常型, L型I, L型II, L型II A, L型III B,くの字型の6型に分類した.これらの型にしたがつて本態性高血圧,腎性高血圧をみれば,おのおの腎機能表に記載した諸検査成績及び血圧,血清総コレステロール値,ヘモグロビン量等と有意な相関関係をしめした.又治療による腎機能の変動を観察すれば,正常型, L型I, L型II, L型III Aを示す症例では改善例が多くみられたのに反し, L型III B,くの字型を示した症例では改善例はほとんどなく不変または惡化した。このように総合的に腎機能を観察し,一連の腎機能障害の型を考えることが高血圧症における病態,治療効果,予後をみる上にきわめて有意であることがわかつた.さらに心拍出量,全末梢血管抵抗を測定し,体循環と腎循環との関係をみた.
  • 種本 基一郎, 松浦 覚, 上羽 康之, 岩崎 忠昭
    1963 年 52 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 1963/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Dubin-Sprinz症候群とRotor型の異同を鑑別する上に興味ある体質性過ビリルビン血症の1例を経験した.患者は20才の男子.新生児黄疸に引続く眼結膜の黄染と家族に同症状を有する姉妹を認め,臨床機能検査ではBSP20%,直接ビリルビン4.81mg/dl,総ビリルビン6.42mg/d1,胆嚢造影は可能であつた.試験開腹では,肝,脾は正常色,総胆管狭窄は認められず,肝病理組織学的に肝細胞は正常,炎症性変化及び胆汁のうつ滞等を認めないが,肝細胞内に微細な少量の黄褐色の色素顆粒を認めた.電子顕微鏡学的には肝細胞, mitochondriaは異常なく,顆粒は電子濃度の高いものであつたが異型的なD-S症候群のものと比べ少量かつ微細であつた.組織化学的にはリポフスチン様であつた.本症例が体質性過ビリルビン血症のいずれの型に属するかを種々検討し, Rotor型よりD-S症候群への移行型と推定した.
  • 木村 郁郎, 太田 善介, 浅野 健夫, 影山 浩, 渋谷 貢一, 小谷 秀成, 松浦 良三, 土田 潤一郎, 瀬崎 達雄, 平岡 敏延, ...
    1963 年 52 巻 3 号 p. 213-222
    発行日: 1963/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    惡性腫瘍の治療にかんして,直接癌細胞を対象とした従来の方法とは異なり,癌の間質成分を抑制することにより,二次的に癌実質を障害せしめんとする,全く独自の新しい理念に基づいて,線維芽細胞抑制剤であるクロロキンを用い基礎的臨床的研究を行なつた.その結果動物の移植腫瘍に対して諸種の面から抑制効果を認め,組織学的に壊死の増大と間質結合織の抑制像を認めた.ヒト癌においては多くの例に自覚症の改善を見,腫瘍の縮小を認めることもあり,また全身症状のかなり改善されることがしばしば見受けられた.本剤の作用機序については間質成分の抑制による二次的な実質の障害の他に,本剤の有する抗炎症作用,あるいは宿主に対する全身的な影響が考えられるところである.現在の段階では本療法は手術不能例あるいは手術前後にその適応が考えられる.なお間葉性腫瘍である惡性リンパ性腫瘍の治療に本剤を用い,目下腫大リンパ節あるいは脾腫の縮小傾向を認めている.
feedback
Top