日本内科学会雑誌
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111 巻, 4 号
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内科学会NEWS
目次
特集 慢性疾患としての骨粗鬆症―内科的管理と多職種連携―
Editorial
トピックス
  • 荒井 秀典
    2022 年 111 巻 4 号 p. 724-731
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    高齢化とともに骨粗鬆症,サルコペニア,フレイル等の加齢に伴う病態を有する高齢者が増加している.骨粗鬆症,サルコペニアはそれぞれ骨,骨格筋の加齢に伴う変化に加えて,遺伝的要因,疾病要因,生活習慣等が加わって発症する.一方,フレイルは臓器特異的ではなく,全般的な変化としてとらえられるが,いずれの病態も健康寿命の妨げになるため,早期診断,早期治療・介入が必要である.なかでも骨粗鬆症とサルコペニアは骨と骨格筋に特化した病態であるとともに相互に連関が認められ,合併することにより転倒・骨折のリスクが顕著に増加する.従って,加齢に伴って発生しやすくなるフレイルとともに適切なスクリーニング,診断,予防,治療が重要であり,これらにより健康寿命の延伸が期待できる.

  • 竹内 靖博
    2022 年 111 巻 4 号 p. 732-738
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症とは全身の骨脆弱性をもたらす疾患であり,その多くは閉経等の性腺機能低下症と加齢によりもたらされる.過去25年の間に,骨粗鬆症の考え方は,骨量と骨構造の問題から骨脆弱性の問題へと変化し,疾患としての問題から骨折リスクの問題へと質的な変遷を遂げた.それに対応して,診断基準が改訂され,ガイドラインの内容がアップデートされてきた.このような背景を理解することは,骨粗鬆症の診療,そして質の高い内科診療の実現に貢献するものである.

  • 今西 康雄
    2022 年 111 巻 4 号 p. 739-746
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    続発性骨粗鬆症は,内分泌疾患はじめ,多くの疾患・身体的状況において発症し得る.また,ステロイド治療やホルモン療法に随伴して発生する医原性の骨粗鬆症も存在する.これらを十分に鑑別し骨粗鬆症治療につなげることが,日常臨床において期待されている.

  • 井上 大輔
    2022 年 111 巻 4 号 p. 747-757
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    生活習慣病は,元来,心血管イベントを意識して提唱された概念であるが,骨粗鬆症とも関連が深い.特に糖尿病,慢性閉塞性肺疾患,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は骨折リスクとの関連が確立されている.これらの疾患では骨密度と独立の骨折リスクも付加されることから,原発性骨粗鬆症の診断基準を満たさない骨量減少症でも薬物治療の対象となる.治療薬の選択は原則的に原発性骨粗鬆症に準じるが,CKDでは薬物代謝等にも配慮が必要となる.

  • 岡田 洋右, 田中 健一, 田中 良哉
    2022 年 111 巻 4 号 p. 758-764
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症の予防と治療の目的は,骨折を予防し骨格の健康を保って,生活機能とQOL(quality of life)を維持することである.そのためには,種々の骨粗鬆症治療薬から個々の症例において,症例背景や作用機序を考慮して薬剤選択をするべきであり,骨密度増加・骨折予防効果のエビデンスのみならず,アドヒアランス,副作用,薬価も念頭においた治療方針を立てる必要があり,長期的な視点に立ち個々の患者に適した薬剤を選択することが重要である.

  • 藤田 博曉
    2022 年 111 巻 4 号 p. 765-771
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    健康寿命の延伸のためには足腰を丈夫に保つことが重要である.骨粗鬆症は「骨折の連鎖」が大きな問題であり,初発の骨折だけでなく,再骨折予防は重要な取り組みとなる.骨粗鬆症対策として薬物治療とともに栄養と運動の対策は宇宙医学で検討されている.骨に対する荷重運動や筋力トレーニング等の複合運動は効果が認められている.内科診療においても「ロコトレ」等の運動指導を行うことは可能である.

  • 上西 一弘
    2022 年 111 巻 4 号 p. 772-778
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症の予防及び治療における栄養療法の基本は,適切なエネルギー摂取量を確保した上でのバランスの良い食事である.「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」や「日本人の食事摂取基準」を参考に,適正な体重を維持するためのエネルギー摂取とたんぱく質摂取,骨の健康に重要なカルシウム,ビタミンD,ビタミンK,そしてB群ビタミン,ビタミンC等のバランスの良い食事を心がけることが必要である.骨粗鬆症の治療薬を服用している場合にもカルシウムやビタミンDの摂取は必要である.

  • 萩野 浩
    2022 年 111 巻 4 号 p. 779-786
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症治療の課題は薬物治療率と継続率が低いことである.その解決のために多職種連携による骨粗鬆症リエゾンサービス(Osteoporosis Liaison Service:OLS)が実施されている.OLSには最初の骨折を防止する1次骨折予防と,脆弱性骨折例での2次骨折予防の活動がある.骨粗鬆症マネージャーは看護師,療法士,薬剤師等のOLSの中心となるメディカルスタッフで,1次骨折予防のための連携医療や2次骨折予防から地域での啓発までその活動は幅広い.

MCQ
シリーズ:地域医療を実践する内科医とは
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 椙村 益久
    2022 年 111 巻 4 号 p. 830-835
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    ・リンパ球性下垂体炎(lymphocytic hypophysitis:LH)は,下垂体や視床下部にT細胞及びB細胞からなるリンパ球や形質細胞浸潤が認められる慢性炎症疾患で,自己免疫機序の関与が想定されている.

    ・LHの患者は,下垂体前葉機能低下症や中枢性尿崩症とともに,頭痛,視野障害,高プロラクチン血症を呈することが多い.

    ・MRI(magnetic resonance imaging)検査で下垂体及び下垂体茎の腫大を認める.

    ・ホルモン分泌障害や下垂体腫大等類似の症状を呈する,下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫,ジャーミノーマ等の腫瘍性疾患との鑑別が重要であるが,困難な場合が少なくない.

    ・LHは,主たる病変部位によって,リンパ球性下垂体前葉炎,リンパ球性漏斗下垂体後葉炎,リンパ球性汎下垂体炎に分類される.

    ・リンパ球性漏斗下垂体後葉炎の診断マーカーとして抗ラブフィリン3A抗体が知られてきている.

    ・LHによって,下垂体前葉機能低下症,中枢性尿崩症が発症した場合は,重症度によって指定難病として公費の補助を受けることができる.

    ・IgG4(immunoglobulin G4)関連下垂体炎,免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎が知られてきており,病態,診断を理解することが重要である.

  • 大郷 剛
    2022 年 111 巻 4 号 p. 836-843
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    肺高血圧症は右心不全を来たし,自然予後は極めて不良な難病である.肺高血圧症は発症機序により5群に分類され,近年特に1群の肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)と4群の慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)は病態の解明が進み,治療の進歩が著しい.PAHにおいてはプロスタサイクリン系路,エンドセリン経路,一酸化窒素経路の3系路それぞれの治療薬が登場し,予後は大きく改善してきた.さらに近年,初期併用療法の有効性が報告され,標準的な治療となり今後さらなる長期予後の改善が期待される.CTEPHにおいては外科的手術に加えて,近年肺動脈カテーテル治療及び内服治療薬が登場し,治療は劇的に進歩し,多くの患者の予後及びQOL(quality of life)を改善させることが可能となってきた.しかし,PAH,CTEPH患者においても多くの課題が残されており,今後のさらなる研究が必要である.

  • 八田 善弘
    2022 年 111 巻 4 号 p. 844-850
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)はフィラデルフィア(Philadelphia:Ph)染色体の有無でPh+ALLとPh-ALLに大別される.Ph+ALLはチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)の導入,Ph-ALLは小児型化学療法の導入で予後が改善している.しかし,寛解(complete remission:CR)率は約80~100%に達するようになったものの長期予後はまだ十分ではない.予後不良因子のある症例には同種造血幹細胞移植が適応となる.微小残存病変(minimal/measurable residual disease:MRD)陽性は予後不良因子であるが,評価の時期は確立していない.再発,難治例には抗体薬やキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子改変T細胞(CAR-T)療法の使用が可能になっている.今後は新たな分子病態の解明と新規分子標的薬の登場が期待される.

専門医部会
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