高齢化とともに骨粗鬆症,サルコペニア,フレイル等の加齢に伴う病態を有する高齢者が増加している.骨粗鬆症,サルコペニアはそれぞれ骨,骨格筋の加齢に伴う変化に加えて,遺伝的要因,疾病要因,生活習慣等が加わって発症する.一方,フレイルは臓器特異的ではなく,全般的な変化としてとらえられるが,いずれの病態も健康寿命の妨げになるため,早期診断,早期治療・介入が必要である.なかでも骨粗鬆症とサルコペニアは骨と骨格筋に特化した病態であるとともに相互に連関が認められ,合併することにより転倒・骨折のリスクが顕著に増加する.従って,加齢に伴って発生しやすくなるフレイルとともに適切なスクリーニング,診断,予防,治療が重要であり,これらにより健康寿命の延伸が期待できる.
骨粗鬆症とは全身の骨脆弱性をもたらす疾患であり,その多くは閉経等の性腺機能低下症と加齢によりもたらされる.過去25年の間に,骨粗鬆症の考え方は,骨量と骨構造の問題から骨脆弱性の問題へと変化し,疾患としての問題から骨折リスクの問題へと質的な変遷を遂げた.それに対応して,診断基準が改訂され,ガイドラインの内容がアップデートされてきた.このような背景を理解することは,骨粗鬆症の診療,そして質の高い内科診療の実現に貢献するものである.
続発性骨粗鬆症は,内分泌疾患はじめ,多くの疾患・身体的状況において発症し得る.また,ステロイド治療やホルモン療法に随伴して発生する医原性の骨粗鬆症も存在する.これらを十分に鑑別し骨粗鬆症治療につなげることが,日常臨床において期待されている.
生活習慣病は,元来,心血管イベントを意識して提唱された概念であるが,骨粗鬆症とも関連が深い.特に糖尿病,慢性閉塞性肺疾患,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は骨折リスクとの関連が確立されている.これらの疾患では骨密度と独立の骨折リスクも付加されることから,原発性骨粗鬆症の診断基準を満たさない骨量減少症でも薬物治療の対象となる.治療薬の選択は原則的に原発性骨粗鬆症に準じるが,CKDでは薬物代謝等にも配慮が必要となる.
骨粗鬆症の予防と治療の目的は,骨折を予防し骨格の健康を保って,生活機能とQOL(quality of life)を維持することである.そのためには,種々の骨粗鬆症治療薬から個々の症例において,症例背景や作用機序を考慮して薬剤選択をするべきであり,骨密度増加・骨折予防効果のエビデンスのみならず,アドヒアランス,副作用,薬価も念頭においた治療方針を立てる必要があり,長期的な視点に立ち個々の患者に適した薬剤を選択することが重要である.
健康寿命の延伸のためには足腰を丈夫に保つことが重要である.骨粗鬆症は「骨折の連鎖」が大きな問題であり,初発の骨折だけでなく,再骨折予防は重要な取り組みとなる.骨粗鬆症対策として薬物治療とともに栄養と運動の対策は宇宙医学で検討されている.骨に対する荷重運動や筋力トレーニング等の複合運動は効果が認められている.内科診療においても「ロコトレ」等の運動指導を行うことは可能である.
骨粗鬆症の予防及び治療における栄養療法の基本は,適切なエネルギー摂取量を確保した上でのバランスの良い食事である.「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」や「日本人の食事摂取基準」を参考に,適正な体重を維持するためのエネルギー摂取とたんぱく質摂取,骨の健康に重要なカルシウム,ビタミンD,ビタミンK,そしてB群ビタミン,ビタミンC等のバランスの良い食事を心がけることが必要である.骨粗鬆症の治療薬を服用している場合にもカルシウムやビタミンDの摂取は必要である.
骨粗鬆症治療の課題は薬物治療率と継続率が低いことである.その解決のために多職種連携による骨粗鬆症リエゾンサービス(Osteoporosis Liaison Service:OLS)が実施されている.OLSには最初の骨折を防止する1次骨折予防と,脆弱性骨折例での2次骨折予防の活動がある.骨粗鬆症マネージャーは看護師,療法士,薬剤師等のOLSの中心となるメディカルスタッフで,1次骨折予防のための連携医療や2次骨折予防から地域での啓発までその活動は幅広い.
施設入所中の45歳,女性.発熱と白血球減少を認めA病院より紹介された.肝障害,脾腫,二系統の血球減少とフェリチン上昇,血球貪食像を認め,血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)と診断した.好中球内巨大顆粒,部分的白子症や神経学的所見から,Chédiak-Higashi症候群(Chédiak-Higashi syndrome:CHS)に合併したHPSと診断し,ステロイドパルス療法と免疫抑制薬投与で改善し退院した.
症例は50歳台男性.屋外作業後から強い心窩部痛が出現した.高Ca血症,胃粘膜のびらん,潰瘍,異所性石灰沈着が認められた.Ca値の補正により自覚症状,組織学的所見は速やかに改善した.活性型ビタミンDの恒常的過剰と紫外線曝露が高Ca血症の原因と判明し,さらに近親者の活性型ビタミンDも高値であることから遺伝的背景が窺われた.急性胃粘膜病変の原因として特発性高Ca血症,異所性石灰化に留意する必要がある.
慢性骨髄単球性白血病(chronic myelomonocytic leukaemia:CMML)は経過中にさまざまな機序で腎障害を来たす1,2).単球の性質上,臓器への浸潤例も少なくはないが3,4),腫瘍細胞が腎臓へ直接浸潤したことによる腎障害は極めて稀である5~7).今回,CMMLの60歳台女性が経過中に急性腎不全を呈し,腎生検にて腫瘍細胞の直接浸潤を病理学的に証明できたため報告する.
73歳,女性.難治性免疫性血小板減少症の治療中であった.感染症予防にsulfamethoxazole/trimethoprim(ST)合剤を内服していたが,肝障害のためアトバコンに切り替えていた.気分不良と嘔気,脱力感で受診され,髄液検査にて化膿性髄膜炎と診断した.Listeria monocytogenesが起因菌と判明し,抗生剤を変更し,改善を得た.リステリア髄膜炎は細胞性免疫不全と関連があり,ステロイド長期投与が発症の主原因と考えられたが,ST合剤からアトバコンへの変更も関与していた可能性がある.
・リンパ球性下垂体炎(lymphocytic hypophysitis:LH)は,下垂体や視床下部にT細胞及びB細胞からなるリンパ球や形質細胞浸潤が認められる慢性炎症疾患で,自己免疫機序の関与が想定されている.
・LHの患者は,下垂体前葉機能低下症や中枢性尿崩症とともに,頭痛,視野障害,高プロラクチン血症を呈することが多い.
・MRI(magnetic resonance imaging)検査で下垂体及び下垂体茎の腫大を認める.
・ホルモン分泌障害や下垂体腫大等類似の症状を呈する,下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫,ジャーミノーマ等の腫瘍性疾患との鑑別が重要であるが,困難な場合が少なくない.
・LHは,主たる病変部位によって,リンパ球性下垂体前葉炎,リンパ球性漏斗下垂体後葉炎,リンパ球性汎下垂体炎に分類される.
・リンパ球性漏斗下垂体後葉炎の診断マーカーとして抗ラブフィリン3A抗体が知られてきている.
・LHによって,下垂体前葉機能低下症,中枢性尿崩症が発症した場合は,重症度によって指定難病として公費の補助を受けることができる.
・IgG4(immunoglobulin G4)関連下垂体炎,免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎が知られてきており,病態,診断を理解することが重要である.
肺高血圧症は右心不全を来たし,自然予後は極めて不良な難病である.肺高血圧症は発症機序により5群に分類され,近年特に1群の肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)と4群の慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)は病態の解明が進み,治療の進歩が著しい.PAHにおいてはプロスタサイクリン系路,エンドセリン経路,一酸化窒素経路の3系路それぞれの治療薬が登場し,予後は大きく改善してきた.さらに近年,初期併用療法の有効性が報告され,標準的な治療となり今後さらなる長期予後の改善が期待される.CTEPHにおいては外科的手術に加えて,近年肺動脈カテーテル治療及び内服治療薬が登場し,治療は劇的に進歩し,多くの患者の予後及びQOL(quality of life)を改善させることが可能となってきた.しかし,PAH,CTEPH患者においても多くの課題が残されており,今後のさらなる研究が必要である.
急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)はフィラデルフィア(Philadelphia:Ph)染色体の有無でPh+ALLとPh-ALLに大別される.Ph+ALLはチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)の導入,Ph-ALLは小児型化学療法の導入で予後が改善している.しかし,寛解(complete remission:CR)率は約80~100%に達するようになったものの長期予後はまだ十分ではない.予後不良因子のある症例には同種造血幹細胞移植が適応となる.微小残存病変(minimal/measurable residual disease:MRD)陽性は予後不良因子であるが,評価の時期は確立していない.再発,難治例には抗体薬やキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子改変T細胞(CAR-T)療法の使用が可能になっている.今後は新たな分子病態の解明と新規分子標的薬の登場が期待される.