日本内科学会雑誌
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54 巻, 12 号
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  • Corticosterone分泌機構とくにACTHとの関係について
    近藤 隆
    1966 年 54 巻 12 号 p. 1349-1354
    発行日: 1966/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    健常人および諸種内分泌疾患における血中corticosterone (=compound B以下Bと称する)をcortisol (=compound F以下Fと称する)とともに測定し,さらにACTH, dexamethasone投与前後の血中B, Fの変動を検索した.血中B, Fの正常値はそれぞれ1.1±0.6mcg/dl, 8.5±4.2mcg/dlであり, F/B比は8.1±4.2であつた. B, Fの日内変動は両者ほゞ並行し,午前8時から10時にピークを認めた. ACTH25単位6時間点滴ではB, Fともに有意の増加を示し,この際F/B比のやゝ低下する傾向が認められた.しかしACTH-Z12日間連続投与ではF/B比の著明な上昇が認められた. dexamethasone投与ではFはほゞ完全に抑制されたがBは抑制されにくい傾向を示した. Addison病ではB, Fともに極めて低値を示すか,あるいは検出不能であつたが, Simmonds病,および皮質過形成によるCushing症候群ではBは正常値に止まるものがあり, Fの増減と必ずしも並行しなかつた.また皮質過形成によるConn症候群では尿中aldosterone排泄量はほゞ正常であつたが,血中Bの著明な高値が認められた.
  • 金井 武彦
    1966 年 54 巻 12 号 p. 1355-1366
    発行日: 1966/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    甲状腺機能亢進症に対する131I療法は,最も期待し得る治療法であるが,その投与量について意見が一致しない.すなわち甲状腺重量の決定が体外計測では困難な上に,甲状腺機能は腺腫の大きさと必ずしも平行せず,甲状腺によつて131Iの感受性に差があるなどの理由による.ま131Iの大量投与は危険な副作用をもたらす怖れもある.甲状腺機能亢進症は他の内分泌臓器にも少なからぬ影響を与えているので,これら諸臓器間の相関々係に113I大量療法で,急激な不均衡をきたすのは適当でなく,この意味においても著者は分割投与が有効であると考えた. PVPが131Iの甲状腺への集積をたかめ,有効半減期を延長せしめるという作用を利用し, PVP-131Iを甲状腺機能亢進症161例に注射して,その分割投与の治療効果を検討した.すなわち自覚症状は著明に改善され,血圧, BMR. 131I摂取率, PBI,血清cholesterol, alkaline phosphatase心電図などの臨床検査所見も著しい改善をみた.治癒は132例(81.9%)に認め,軽快は22例(13.6%),不変は7例(4.3%)であつた. PVP-131Iの総投与量は5~15mc,平均8mcであつた.
  • 菅野 辰子
    1966 年 54 巻 12 号 p. 1367-1387
    発行日: 1966/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    種々の疾患を原因とする肺高血圧症において,肺動脈幹の組織学的検索を行なつた.特に,肺動脈幹中膜の弾力線維の形状配列について, Heath (1959年)およびSalda〓a (1963年)らの分類に従い,弾力線維の太さ,密度,連続性,平行性より,大動脈型(胎児型),遺残型,移行型A, B,成人型の5型に分け,肺高血圧の重症度との関連性を考察した.その結果,重症の後天性肺高血圧症において,太く長い線維が密に配列するところの大動脈型あるいは遺残型を認め,この所見は,弾力線維が成人型に移行した後は,弾力線維の形状配列は変化しないというHeathらの説とは異なり,僧帽弁狭窄症において,弾力線維の増生を認めたMeyerの説と一致した.すなわち,後天性肺高血圧症では長期に持続する肺高血圧に抵抗して,弾力線維の増生が起こるだけでなく, “新生”さえも起こり得ることを暗示し,従来否定的な意見が多いところの弾力線維の“新生”にかんして,一つの問題を提起すると思われた.
  • 延永 正
    1966 年 54 巻 12 号 p. 1388-1397
    発行日: 1966/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肝疾患においては各種の血清反応が試みられているが,本論文では,慢性関節リウマチ(RAと略)の反応として現今最も広くおこなわれているRA-testをとりあげ,これが各種肝疾患における陽性頻度,ならびに他の諸肝機能検査成績との関係,そしてさらにはこれら肝疾患の経過における本反応の消長などを追究した.その結果,本反応は慢性の肝疾患において相当高率に陽性を呈し,診断的価値を有すること,各種肝機能検査のうち血清膠質反応やコリンエステラーゼ値と関係があること,肝疾患の消長と平行して変動すること,などが明らかとなつた.このような成績は,本反応が血清蛋白異常と何らかの関連性を有することを示唆しているが,著者は,たまたま肝疾患患者血清のあるものが,慢性関節リウマチ患者血清との間に寒天ゲル内にて沈降反応を呈することを認め,これらの事実から,肝疾患におけるRA-test陽性因子の発生機転,ならびにその病態生理学的意義について若干の考察を加えた.
  • 西本 幸男, 佐藤 哲也, 野島 達也, 行武 正刀, 浜田 将, 重信 卓三, 佐々木 正博
    1966 年 54 巻 12 号 p. 1398-1407
    発行日: 1966/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    サルコイドージスは従来わが国においては比較的まれな疾患とされていたが,昭和35年から開始された実態調査以後サルコイドージスに対する認識が俄かに高まつてきて,発見の機会が増加しつゝある.従つてこの疾患に対する治療も重要な課題の1つと考えられるに至つた.従来サルコイドージスに対しては,副腎皮質ステロイドが唯一無二の治療薬のごとく考えられ,また実際に大多数の例に著効を奏したと報告されてはいるが,症例によつては長期にわたる投与を余儀なくされ,その結果ステロイド薬による副作用も当然考慮されねばならない現状である.われわれは最近肺病変を主とした3例のサルコイドージスに対しステロイド薬とクロロキン薬とを併用し認むべき効果を挙げたが,この経験にもとずいてクロロキン薬はサルコイドージスに対して有効であり,ステロイド薬の投与量を節約し,その長期連用による副作用を回避するためにも有益な薬物であると考えるに至つた.かくしてサルコイドージスの治療に対し,ステロイド薬のほかにクロロキン薬を加え得ることを提唱したい.
  • 上田 英雄, 山本 英雄, 権平 達二郎, 岩井 淳一, 池田 隆夫, 中島 宏二
    1966 年 54 巻 12 号 p. 1408-1414
    発行日: 1966/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    患者は39才の美容師で,コールドパーマ第2液用のブロム酸力リウム15gを服用し,直後からはげしい嘔吐・下痢を生じ,血圧下降,耳鳴・難聴あり, 5日間無尿がつゞいた後当科に入院した.入院時,浮腫,黄疸はなく,軽度の高血圧を呈し,血清クレアチニン13mg/dl,尿素窒素82mg/dl,カリウム7.4mEq/l,間接型ビリルビンの軽度増加のほか肝機能正常.心電図でST下降, T平低を認めた.腎クリアランス検査でRBF 124cc/min, GFR10.4cc/min,入院3日目の腎生検で,尿細管特に近位尿細管に一部核の消失を伴なう高度の空胞変性,間質の一部に軽度の出血を認めたが,糸球体,血管系はほゞ正常であつた.入院後直ちに24時間連続腹膜透析施行,その後も反復合計10回施行した.尿量は入院7日目頃から1000cc以上となり,その後尿量の増加と頻回の透析により血中窒素成分も正常域まで減少し, 3カ月後退院した.本例は文献上コールドパーマ第2液中毒例として本邦第2例である.
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