日本内科学会雑誌
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81 巻, 10 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
  • 原 耕平, 賀来 満夫
    1992 年81 巻10 号 p. 1583-1585
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 国井 乙彦
    1992 年81 巻10 号 p. 1586-1591
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌は1961年にすでに報告されているが,大多数の抗菌薬に耐性のMRSAが難治性の院内感染原因菌として警告されたのは1981年以後のことである.
    その後全国的な規模でMRSAの検出率は急速に増加の一途を辿り,これによる難治性感染症例の報告も増加している.この約10年の間にも,薬物耐性型,コアグラーゼ型,ファージ型別,エンテロトキシン型等の面からみても明らかな変遷が認められる.
  • 平松 啓一
    1992 年81 巻10 号 p. 1592-1598
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRSAとは,メチシリンに代表されるβ-ラクタム系の抗生物質に耐性となった黄色ブドウ球菌で,遺伝学的な観点からは,黄色ブドウ球菌の環状染色体の7時の位置にメチシリン耐性遺伝子mecAを担った大きなDNA断片, mec領域DNA,が挿入された菌がMRSAである.このDNAの由来は現在不明であるが,その分布は広くブドウ球菌菌種間に及んでおり,ブドウ球菌属の菌種間でmec領域DNAの相互伝達がおきると考えられる.
  • 山口 惠三
    1992 年81 巻10 号 p. 1599-1603
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRSAとは,ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌用ペニシリン(PRP)として開発されたメチシリンに耐性を示す黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus)のことを意味する.従って,分離された菌が黄色ブドウ球菌と同定され,かつそれがメチシリンに耐性であることを証明することによって初めてMRSAであることが確認される.耐性菌であることの確認は, (1)希釈法(MIC法), (2)ディスク拡散法,などの薬剤感受性試験法に基づくものと, (3)耐性遺伝子(mecA遺伝子)の証明によって行われる方法とがある.
  • 中浜 力
    1992 年81 巻10 号 p. 1604-1608
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRSAはヒトや病院内環境に広く存在しており,その感染症の発生機序には複数の因子が相互に関与して成立している.本項ではそれらの因子の内,病棟環境内のMRSA分布と感染,患者気道フローラへの感染とその特徴,そして医療スタッフの鼻腔内キャリアーの問題点とその対策を中心に概説した,また環境や生体フローラの解析は,各施設で感染予防対策を計画,評価する際に,その有用性は高いものと考える.
  • 松本 慶蔵, 高橋 淳
    1992 年81 巻10 号 p. 1609-1614
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1982年4月より1991年11月間に3回の病原性発揮の黄色ブドウ球菌の全国調査を実施し, MRSA発生率の有意の増加とメチシリン以外の薬物の耐性化の亢進が認められることを確認した.最新の第3回調査のMRSAコアグラーゼ型別分布の特徴はII型が53.7%に達することであり,薬物耐性ではニューキノロン,ミノサイクリンの耐性増加が懸念される.外国でのMRSA感染症も近年増加しており,他菌のバンコマイシン耐性の急増が注目されている.
  • 和田 光一, 川島 崇, 塚田 弘樹, 荒川 正昭
    1992 年81 巻10 号 p. 1615-1619
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Methicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA)による菌血症は,白血球減少例,術後などの深部臓器膿瘍例,カテーテル留置例など基礎疾患の重篤な症例で,院内感染として認められることが多い.治療は, vancomycin, arbekacinなど, MRSAに対して抗菌力の強い抗菌薬の使用と,カテーテル抜去,ドレナージなどによるfocusの除去が大切である.また,緑膿菌などによる感染を合併することも多いので,これらに対する治療も必要である. MRSA菌血症の予後は,全体の除菌率で64.2%,カテーテル菌血症症例では77.8%であった.
  • 小田切 繁樹
    1992 年81 巻10 号 p. 1620-1628
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRSAは喀痰から高率に検出される.この喀痰からの本菌検出を以って, MRSA呼吸器感染症として化学療法が行われている症例が少なくない.これに対し,検出菌と原因菌は基本的に別物であることを筆者の従事する呼吸器内科病棟のデータより示し,併せて,このギャップについて文献引用を加えながら私見を述べ,更に,本感染症の化学療法について言及した.
  • 石山 賢, 渡邊 千之, 宇都宮 勝之
    1992 年81 巻10 号 p. 1629-1634
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    手術後の執拗かつ重症な下痢とMRSAとの関連が, MRSA腸炎といわれ話題となっている. 450例の消化器手術後の患者のうち, 127例(28.2%)が下痢症状を示した.その多くは蠕動促進薬などの諸薬物,造影剤,経腸栄養薬などによる一過性の下痢であり,抗生物質が誘導する菌交代性の細菌性下痢と考えられる症例は約10%前後であった.術後の予防投与抗生物質,院内感染などに意をつくした結果,こうした細菌性下痢の中でMRSAの検出された例は僅か3例であった.
  • 岩井 重富
    1992 年81 巻10 号 p. 1635-1640
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    多薬耐性のMRSA感染症は1988年に急激に増加した.消化器外科領域の疾患別での感染症の発生順位では食道癌術後感染が最も多く,次に肝胆道悪性疾患,膵臓癌,大腸癌,胃癌術後の順である.感染症の種類では創感染,呼吸器感染,腹腔内感染が多い.本菌は強い病原性を有し,伝播性も強い.菌量の変動に伴い,臨床症状,臨床検査値も変化している.他菌との複数菌感染が非常に多く,薬物の併用療法にあたっては十分な配慮が必要である.
  • 力富 直人, 坂本 翊
    1992 年81 巻10 号 p. 1641-1645
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    A病院老人病棟において1991年の院内感染症を調査した結果MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染が多く,肺炎においては約55%,菌血症では44%を占めた. MRSA呼吸器感染症は非経口栄養の長期臥床患者にコントロールの老人より10倍高率に発症しその原因はこれらの患者群の上気道にMRSAが高率に定着するためと考えられた.院内感染防止のために病棟の塩化ベンザルコニウム消毒,医療従事者の手指消毒を始めとする清潔操作,紫外線による室内の殺菌,患者上気道をポビドンイオジンで処置した.その結果病棟の汚染度は86%減少し, MRSA呼吸器感染症は68%減少, MRSA菌血症は67%減少した.
  • 砂川 慶介, 横田 隆夫, 新田 靖子
    1992 年81 巻10 号 p. 1646-1651
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRSAによる感染は一般に難治性であることに加え,小児科領域では治療に使用出来る抗生物質が成人に比べて制限されていることから深刻な問題となっている.この項では感染防御能の低下している新生児の重要な感染症である敗血症についてまずその頻度及び原因菌について紹介し,次いで小児科でのMRSAの現状,治療について述べてみたい.
  • 小林 寛伊
    1992 年81 巻10 号 p. 1652-1656
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRSA感染は,治療に抵抗を示す症例が少なくなく,感染が起らないよう交差汚染を防止することが重要である.そのためには,消毒が大きな役割をはたす.消毒薬は,一定の抗菌スペクトルを持った不完全なものであり,対象と処理時間,処理濃度等を考慮して適切に使用しなければならない.有機物の存在は,消毒薬の効果を低減する場合が多く,有機物汚染を洗浄あるいは除去してから適用することも大切な点である.
  • 那須 勝
    1992 年81 巻10 号 p. 1657-1661
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRSAは,多薬耐性菌であり,ヒトの常在菌叢の一員でもあることから,その感染症対策はきわめて重要である.本稿では, MRSAの院内分布,感染様式,院内感染対策について概説した.病院はそれぞれに特殊性があることから,それに合わせた対策を行うことが必要であり,まずは医療従事者の各自が自覚をもち, “手洗いの励行”という当たり前のことを確実に実行してゆくことが必要である.
  • 稲松 孝思
    1992 年81 巻10 号 p. 1662-1667
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRSA感染例には単なるコロニゼーション例から敗血症などの重篤な感染症例まで多様な病態がみられ,しばしば緑膿菌などとの混合感染例や,体内異物が関与する症例がみられる. MRSAに対して臨床効果の期待できる薬物はバンコマィシン,アルベカシン, ST合薬, minocy-cline, new quinolone,各種併用療法等に限られるが,病態に合わせて適切な抗菌化学療法を行うことによりMRSA感染症の被害を最小限にとどめることが可能である.
  • 本間 篤, 小池 亮子, 湯浅 龍彦, 宮武 正, 後藤 隆夫, 高橋 益広
    1992 年81 巻10 号 p. 1692-1694
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の女性,多クローン性高γ-グロブリン血症と著明な貧血を呈し, Castleman病と診断され経過観察中に,脳幹梗塞を発症した.血漿交換,輸血,化学療法により神経症状と血液学的な異常は著明に改善し,脳梗塞の発症に血液粘度と貧血の両者が関与したと考えられた. Castleman病に脳血管障害を合併した報告はみられず,貴重な症例と考えた.
  • 犬尾 元, 池田 幸宏, 須田 隆文, 守田 政彦, 藤沢 弘芳, 根本 正樹, 西村 満, 宇津 正二, 田港 朝彦, 吉見 輝也
    1992 年81 巻10 号 p. 1695-1697
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    妊娠16週目に突然の高血糖,ケトアシドーシスで発症した糖尿病の1例を経験した. C-ペプチドは,尿中,グルカゴン負荷試験にて,低値であり,さらに経過より, IDDMと診断した.胎児は,妊娠18週目,水頭症を発症し,人工中絶を施行した.妊娠前期に発症するIDDMは,極めてまれであり,また,糖尿病性ケトアシドーシスを,胎児の器官形成末期に発症した事が,水頭症の誘因となったと推測された.
  • 牛嶋 潤一郎, 藤井 徹, 白橋 浄, 大泉 耕太郎
    1992 年81 巻10 号 p. 1698-1699
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    患者は46歳,女性,起床時に下腹部の腫瘤に気付き来院し精査目的入院となる.エコー, CTにて腹腔内に鶏卵大の孤立性腫瘤を認めるが,消化管および腹腔内腺組織に異常は認めなかった.血管造影検査にて腸間膜悪性腫瘍を疑い腫瘍摘出術施行.病理組織診にて高分化腺癌と診断,再度全身検索行うも他部位に原発巣はなく,腸間膜原発の腺癌と最終診断した.本例は文献報告例も少なく,極めてまれな1症例と思われ報告した.
  • 橋本 修, 峯信 一郎, 小嶺 憲国, 塚田 順一, 織田 進, 森本 勲夫, 江藤 澄哉, 瓜生 康平, 海津 嘉蔵
    1992 年81 巻10 号 p. 1700-1702
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    化学療法により大量の腫瘍組織が急速に崩壊するときにtumor lysis syndromeが発症することがある.今回我々は,悪性リンパ腫の化学療法後に著明な高リン血症,高尿酸血症と意識障害をおこしたtumor lysis syndromeの2例を経験した. 2例共に腎不全を伴っており,緊急の血液透析にて救命しえた.腎機能低下を伴った悪性リンパ腫例では特に,化学療法後のtumor lysis syndromeの発生を十分念頭において治療する必要がある.
  • 幸山 正, 阿南 隆一郎, 前田 雅人, 清永 和明, 有馬 新一, 中尾 正一郎, 田中 弘允, 井畔 能文, 竹元 雅一, 大塚 早苗
    1992 年81 巻10 号 p. 1703-1705
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性.労作時及び安静時の動悸,息切れがあり,運動負荷試験で有意なST低下を認めた.冠動脈造影で,左冠動脈前下行枝近位部に完全閉塞,回旋枝近位部に99%狭窄とその直後の瘤形成を認めた.左室壁運動は正常.冠動脈バイパス術を施行時に得られた大動脈の組織標本より弾力線維性仮性黄色腫(PXE)が疑われた.さらに眼底のangioid streaksと皮膚病変が認められたのでPXEと診断した.冠動脈病変をきっかけに診断されたPXEの症例である.
  • 木村 哲
    1992 年81 巻10 号 p. 1706-1710
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Sepsis syndrome (仮訳:敗血症症候群)はsepsis (敗血症)の病態に1個以上の臓器の灌流または機能の障害を併発した状態をさす.この状態を放置するとseptic shock (敗血症性ショック)に移行する可能性が高く,ショックに陥ることを防止すべき最後のステージと言える.最近抗エンドトキシン抗体や抗TNF抗体が入手可能となり,ショックに移行する前に,これらによる治療もできるようになって来たので,この病態を的確に診断することの重要性が注目されるようになってきた. sepsisとsepticemiaは共に敗血症と訳されているため混乱が見られるが, septicemiaと異なりsepsisでは血液培養が必ずしも陽性である必要はなく,感染の存在とそれによる呼吸促迫,頻脈,体温異常などが見られればsepsisと診断される.これらsepsisの所見の他にPaO2/FIO2≦280,血中乳酸値の上昇あるいは尿量減少(0.5ml/kg/h)などで代表される臓器障害の所見が加わったものがsepsis syndromeである. sepsis, sepsis syndrome, septicshockの一連の病態にはendotoxin, enterotoxin, TNF-α, IL-1その他多くのmediatorが関与している.これらの関与様式,相互作用の実態を明らかにすることにより, sepsis syndrome, septic shockの有効な治療法が開発されるものと期待される.
  • 古川 美子, 古川 昭栄
    1992 年81 巻10 号 p. 1711-1718
    発行日: 1992/10/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    神経成長因子(nerve growth factor; NGF)は,知覚神経二ューロン,交感神経ニューロン,中枢の一部のコリン系ニューロンの分化・成熟を促し,生存・機能を維持し,突起伸展を引き起こす,分子量約26000の蛋白質である. NGFは,神経科学,発生学の分野において最も古くから実体の明らかにされていた分子のひとつで, NGFの研究で得られた膨大な知見から神経回路の形成過程や調節機構の概要が窺い知ることができるようになった.最近では, NGFを投与すると,末梢神経の軸索再生が促進されること,遅発性ニューロン死が抑制されること,老化による学習記憶能力低下が抑制されること,などが報告され,臨床応用への期待も高まってきている.
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