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(III)高安動脈炎患者の補体アロタイプについて
沼野 藤夫, 根岸 駿夫, 下門 顕太郎, 鈴木 広一, 松本 秀雄, 占部 和敬, 木村 彰方, 笹月 健彦
1989 年 78 巻 4 号 p.
485-492
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
高安動脈炎の成因,病態に関し遺伝要因の関与が注目されている. HLA検索より本症患者にはHLA A24-Bw52-Dw12の出現頻度の高いことが確かめられたので(Angiology 33:98, 1982), 80名の患者につきClass IIIに属する補体蛋白多型を調査した.その結果,本症患者ではC4A2(
x2=27.2, rr=3.8, p<0.01) C4BQ0(8.7, 2.1, p<0.01)の出現頻度が有意に高い結果が得られた.しかもBw52(+)の患者37名中35名はC4A2-4BQ0のhaplotypeを有していた.すなわち本症患者ではA24-Bw52-C4A2-C4BQ0-Dw12のcomplotypeと連鎖不平衡にある遺伝要因の関与が考えられる.さらにC4BQ0(null type)につきDNAの存在をしらべたところ欠除している例はなくgene conversionの可能性が示唆された.
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工藤 啓, 保嶋 実, 清野 正英, 佐藤 牧人, 尾股 健, 樋渡 正夫, 金澤 雅之, 吉永 馨, 阿部 圭志
1989 年 78 巻 4 号 p.
493-499
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
昭和50年より当教室で経験した78例の腎血管性高血圧(RVH)について,最近の治療,診断学の進歩を中心に検討を加えた.経皮的血管拡張術(PTA)の導入後,それまでの血行再建術を中心とする治療からPTAを第一選択とする治療法が主流となり,腎摘出術は激減した.アンギオテンシンI変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の登場はRVHの降圧薬に大きな変化をもたらし,それ以前の利尿薬+β遮断薬から利尿薬+ACE阻害薬さらにCa拮抗薬を加えたものに変化し, ACE阻害薬は他降圧薬と併用するとRVHを良好に管理できることが明らかになった.また, ACE阻害薬はRVHのスクリーニングにも有効性を発揮する結果となっている.
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河合 潔, 河合 章
1989 年 78 巻 4 号 p.
500-505
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
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成人風疹23例につき血清乳酸脱水素酵素(LDH)の変動,そのアイソザイムパターンの特徴, LDHの上昇と異型リンパ球との関係について検討した.その結果,風疹例のLDHは対象群と比較して急性期に有意に上昇したが有熱4日以上の重症例が顕著であった.各アイソザイム分画は対象に比しLDH-3の顕著な上昇, LDH-4の軽度上昇, LDH-1, LDH-2の低下が特徴と判明した.異型リンパ球は急性期に8.0±4.1%(平均±標準偏差示す)の出現を認め,回復期には4.1±2.7%に減少した.風疹急性期のLDH-3絶対値と異型リンパ球実数との間に相関関係を認め,回復期に同一比率で減少した.この事実により風疹におけるLDH総活性の上昇の由来臓器としてリンパ組織を推定した.
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岡崎 仁昭, 狩野 庄吾, 畠 清彦, 三浦 恭定, 元吉 和夫, 斎藤 政樹, 檜森 巽, 麻生 昇, 柏木 誠, 馬場 健児, 荒井 秀 ...
1989 年 78 巻 4 号 p.
506-511
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
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症例は43才,男性.胸部X線像上,右胸壁に接する腫瘤影を指摘され入院.精査の結果,悪性胸膜中皮腫(2相型)と診断された.その後腫瘍増大に伴って末梢白血球数(成熟好中球と好酸球)が増加し,死亡直前には135000/mm
3 (成熟好中球91%,好酸球2%)に達した.剖検時採取した腫瘍継織をヌードマウスに移植したところ,著明な末梢好中球増加,脾腫を来たし,ヌードマウス移植片の培養上清中には顆粒球系コロニー刺激活性が認められ,以上からCSF産生腫瘍と確診された.本症例は文献的検索の限り世界で第2例目のCSF産生悪性胸膜中皮腫であり,また成熟好中球だけでなく好酸球増加を呈した点に関しても貴重な症例と考えられたので報告した.
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村上 研, 祖父 江元, 熊沢 和彦, 寺尾 心一, 石川 敦子, 湯浅 和哉, 満間 照典
1989 年 78 巻 4 号 p.
512-518
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
後天性全身性無汗症の3例を臨床病理学的に分析し,その責任病巣と共に病態を検討した.症例は28才男性, 39才男性, 23才女性で,おのおの27才, 39才, 21才時より無汗とそれに伴う発熱発作が出現していた.いずれも無汗以外に神経学的な異常を認めず,定性的,定量的発汗機能検査では温熱性発汗,ニコチン,ピロカルピンによる局所発汗のいずれも発汗は認めなかった.皮膚生検では3例中2例で汗腺の形態異常を認めた.また1例に血清IgEの上昇を認め,プレドニゾロンの投与により3例中2例で無汗の改善を認めた.無汗の責任病巣としては汗腺が最も考えられ,何らかのアレルギー性の機序の関与が推察された.
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岡田 誠治, 小松 則夫, 大阪 顕通, 吉田 稔, 坂本 忍, 三浦 恭定, 桜林 郁之助
1989 年 78 巻 4 号 p.
519-522
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
58才,男牲.頚部リンパ節腫大を主訴に来院.リンパ節生検により, immunoblastic lymphadenopathy (IBL)様T細胞リンパ腫と診断.入院時,高アミラーゼ血症を認め,電気泳動法でP2からSにかけて幅広い分画を示した.免疫向流法および免疫固定法で, IgGκ type結合型マクロアミラーゼの存在が確認された.近年酵素結合性免疫グロブリンは症候群としての位置づけが提唱され,免疫学的な観点からも注目されている.一方IBL様T細胞リンパ腫は高ガンマグロブリン血症,自己抗体の出現などを伴うことが知られており,両疾患と免疫異常との関係を知るうえで貴重な症例と考えられた.
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中根 博, 吉田 富士男, 岡田 靖, 佐渡島 省三, 石束 隆男, 井関 邦敏, 藤島 正敏, 恒吉 正澄
1989 年 78 巻 4 号 p.
523-526
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
72才,男,昭和62年6月,右片麻痺,感覚性失語症をきたし脳梗塞と診断された.治療中,播種性血管内凝固症候群(DIC),脳梗塞の再発,心内膜下梗塞,腎不全,消化管出血,菌血症など多彩な全身症状を呈し, 10月呼吸不全のため死亡した.剖検により,胃低分化腺癌,多発性脳梗塞および梗塞巣内への腺癌の転移,心内膜下梗塞が認められた.また僧帽弁の非細菌性血栓とともに大動脈弁にはカンジダ性血栓の形成がみられ,多臓器塞栓症の原因となったと考えられた.悪性腫瘍, DIC患者における真菌性血栓性心内膜炎の合併と,胃癌の脳梗塞巣への転移はいずれもまれとも思われ,その機序について考察した.
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鈴木 理志, 日比野 敏子, 恒花 昌明, 小山 哲夫, 紅露 恒男, 成田 光陽
1989 年 78 巻 4 号 p.
527-533
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
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ループス腎炎を示す若年患者に合併した虚血性心疾患を3例経験した.症例1は35才女性. 22年間のステロイド薬治療歴があり頻発する狭心痛の精査の結果,冠動脈造影で狭窄所見が得られた.症例2は22才女性, 10年間ステロイド薬治療をうけていたが突然胸痛が出現し急性心筋梗塞と診断された.症例3は28才男性, 14年間ステロイド薬治療をうけていたが,やはり突然胸痛が出現し急性心筋梗塞の診断のもとに冠動脈造影を施行し,発症後早期だったためにPTC-Rが成功し得た.
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梅山 茂, 神田 亨勉, 林 陸郎, 菅野 仁平, 鎗田 宏, 鈴木 忠, 村田 和彦
1989 年 78 巻 4 号 p.
534-537
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
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症例は40才,男性. 7才頃から上・下肢の萎縮ならびに筋力低下が出現し, 20才頃から歩行不能となった.進行が比較的緩徐であることからBecker型筋ジストロフィーと診断した.心エコ一,心臓カテーテル検査の結果,心室中隔の非対称性肥大が認められ,右室生検心筋像も典型的な肥大型心筋症(HCM)の所見に一致した.一般に筋ジストロフィーに拡張型心筋症(DCM)様の心筋障害を合併することはよく知られており,特にDuchenne型でその頻度が高い.一方, Duchenne型の良性型とも言えるBecker型に心病変を合併することはまれとされているが,本症例はHCM様の心筋障害を呈し,まれな症例である.
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多田 浩, 三澤 利博, 金 秀樹, 藤原 隆一, 林 多喜王, 久津見 恭典, 中井 継彦, 宮保 進
1989 年 78 巻 4 号 p.
538-543
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
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心内膜炎を伴った感染性心内膜炎の加療中に重篤な出血性心タンポナーデを併発した1症例.心膜ドレナージ,輸血等にて心タンポナーデの症状・所見改善するも,心不全が増悪し,緊急大動脈弁置換術を施行した.術中所見にて,大動脈弁上部の上行大動脈壁に頭足方向に28mmの亀裂を認め,この部位からの出血により心タンポナーデが発症したことが示唆された.
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片岡 直之, 梅澤 滋男, 尾林 徹, 全 栄和, 是永 正義, 稲田 美保恵, 三浦 溥太郎, 金山 正明
1989 年 78 巻 4 号 p.
544-548
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
72才の女性.胸部異常陰影の精査目的にて当科受診,聴診上I音の分裂を認め,心エコーにて右房内に巨大腫瘤を確認した.腫瘤は右房内ほとんどを占め,可動性はなく茎は不明で, I音の第1・第2成分がそれぞれ僧帽弁・三尖弁の閉鎖と一致した.また,腫瘍と一致して
201thalliumの異常集積を認めた.心臓カテーテル検査では上,下大静脈圧は上昇し,腫瘤には左右冠動脈より太い栄養血管が分布し,冠動脈血流のstea1現象を認めた.摘出手術の結果,中隔に茎をもつ64gの右房粘液腫で,術後経過は順調である.
201thalliumは種々の腫瘍に取り込まれるが,心臓粘液腫への
201thallium異常集積の報告は調べ得た範囲ではなかった.本例は腫瘍に豊富な栄養血流があり,
201thalliumはほかの核種と異なり,その取り込みには血流にdependentな性格があるものと考えられた.
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木嶋 祥麿, 前田 益孝, 小沢 潔, 中西 太一, 東海林 隆男, 笹岡 拓雄
1989 年 78 巻 4 号 p.
549-556
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
男性化症状を呈する21才,女性を精査したところ,まれな副副腎Leydig細胞腫であったので報告する.患者は初潮がなく, 17才時顎髯と下肢体毛に気づいた. 18才時のホルモン投与も20才時の卵巣楔状切除術も無効であった.血中testostterone,尿中17-KSは異常高値で,血中DHEA-S, androstenedioneも高かった. CTにて左腎の上に副腎像と腫瘍像,シンチでは左副腎付近に集積がみられ,選択的副腎静脈採血でも同部位の異常が確認できた.腫瘍は98gで正常副腎に付着しており, Reinke結晶を有するLeydig細胞,骨髄様脂肪化生巣より構成されており,病理学的には悪性副副腎Leydig細胞腫であった.本腫瘍はまれで,病理学的,発生学的に貴重な1例である.
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山崎 文靖, 土居 義典, 小田原 弘明, 浜重 直久, 近森 大志郎, 楠目 修, 米沢 嘉啓, 小沢 利男
1989 年 78 巻 4 号 p.
557-560
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
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3年前より労作時の胸部圧迫感・息切れを自覚し,心雑音・心電図異常も指摘されていた62才,男性が,急性左心不全のため入院した.心尖部に全収縮期雑音を聴取し,心エコーにて非対称性中隔肥大,僧帽弁弁尖の接合不全および後尖の左房内への反転を認め,後尖腱索断裂による急性僧帽弁閉鎖不全と診断した.心不全の内科治療の後,僧帽弁置換術を行い,後尖内側の一次腱索に断裂を認め,組織学的には粘液変性像がみられた.また左室心筋には軽度の錯綜配列および核の大小不同を認めた.肥大型心筋症において,僧帽弁腱索断裂に伴う急性僧帽弁閉鎖不全の報告はみられないため考察とともに報告する.
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池田 昭夫, 嶋本 義範, 小田 健一郎, 佐野 雅之, 青木 洋介, 松崎 美和子, 末岡 栄三朗, 山口 雅也, 鈴木 久三
1989 年 78 巻 4 号 p.
561-562
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
症例は76才,女性.全身倦怠感,両下肢脱力および貧血が急速に進行した. Hb 5.4g/d1,白血球数900/μ1,骨髄は赤芽球系過形成では環状鉄芽球を15%認め顆粒球系異常芽球を散見した.血中ビタミンB
6濃度は低値で,筋電図検査はポリニューロパチーを示唆した.ピリドキサルリン酸60mg/日の内服で貧血,脱力共に改善した.原発性後天性鉄芽球性貧血とポリニューロパチーの合併はまれで,さらにビタミンB
6で軽快したことが本例の特徴である.
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山形 章夫, 広瀬 昭一郎, 若栗 宣人, 本定 秀雄, 中川 彦人, 西邨 啓吾, 久保 正
1989 年 78 巻 4 号 p.
563-564
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
患者1は28才,女子で食欲不振・やせを訴え肥満度-44%であった.入院後さらにやせGOT 925U, GPT 691U, Al-p28KAU, LDH 970Uとなった.患者2は16才女子で食欲不振・無月経を訴え肥満度は-41%であり,肝機能はGOT 1550IU/
l, GPT 1097IU/
l, Al-p 788IU/
l, LDH 1793IUm/
lであった. 2例共IVH後肝機能は速かに正常化した.肝機能異常はウイルス性肝炎よりは神経性食欲不振症における栄養障害による可能性が大と思われた.
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大島 喜八, 岡田 秀一, 小内 亨, 馬原 充彦, 小林 節雄, 小林 功, 片貝 重之
1989 年 78 巻 4 号 p.
565-566
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
13カ月の経過で自然寛解した特発性尿崩症を報告する.症例は女性, 10年前37才の時に突然多尿が出現,中枢性尿崩症とする以外に諸検査に異常所見なく特発性尿崩症と診断した.加療により尿量はコントロールされていた.発症13カ月後に加療が中断されたが無症状であった.中止後4カ月目での検査に異常なく, 9年後の再検査でも同様で,現在無症状に経過している.
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松村 到, 宮田 哲, 多胡 基, 大木 篤, 川上 房男, 奥野 巍一
1989 年 78 巻 4 号 p.
567-568
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
症例は発熱を主訴に入院した35才の男性.超音波, CTで肝内に多数の低吸収域を認め,超音波下穿刺で得られた膿よりK. pneumoniae肝膿瘍と診断した.肝膿瘍の基礎疾患として,慢性骨髄性白血病が発見された.肝膿瘍はしばしば致死的な疾患であるが,超音波下ドレナージと抗生物質の全身および局所投与により治療に成功した.本例では,顆粒球の遊走能, NBT還元能の低下が認められ,肝膿瘍の発症に関与した可能性が考えられた.
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吉田 滋, 福田 彰, 池上 陽一, 坂根 貞樹, 北岡 治子, 高松 順太, 中野 ひろみ, 森井 浩世
1989 年 78 巻 4 号 p.
569-570
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
症例は62才,女性.低血糖発作を頻発し入院.インスリノーマを疑い,経皮経肝門脈採血検査にて膵尾部に血中IRI値の上昇を認めた.末梢血中カルシトニン値も高値であったためカルシトニンとCGRP濃度についても同様に測定したところ,やはり膵尾部にて上昇がみられた.膵尾部腫瘍を摘出し,酵素抗体法にてこれら3種のホルモンの存在を確認した.本例はin vivoにてCGRP分泌腫瘍を診断し得た初めての報告であると思われる.
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坂田 茂樹, 山本 真由美, 宅野 洋, 不破 義之, 地守 研三, 三浦 清
1989 年 78 巻 4 号 p.
571-572
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
糖質ステロイド薬治療中のSLEの1症例(18才,女性).血清中に,偶然抗TSH抗体の存在が見いだされた.本症例の甲状腺機能は正常であったが,抗TSH受容体抗体は-59.9%~-44.5%と,採血日により値は異なったが,常に異常低値を示した.さらに,患者血清γ-グロブリンと
125I-bovine TSH (bTSH)との結合率は13.0%で,かつ,非標識TSHの添加によりこの結合は完全に抑制された.
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深谷 善章, 沼田 幸子, 公文 義雄, 吉田 健三, 山本 道也, 末廣 正, 山野 利尚, 大野 文俊
1989 年 78 巻 4 号 p.
573-574
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
症例は61才,男性.発熱,黄疸,肝腫大, II度の肝性昏睡,血清GOT 9130, GPT 6325IU/
l, T-Bil 11.1, IgM 760, IgG 2150mg/dl, IgM抗HAV抗体陽性などより重症A型肝炎と診断した.なお血中にIgG・λ型M成分および末梢血リンパ球のT
4/T
8比0.7, PHA低値を認めた.入院後著明な胆汁うつ滞性黄疸に加え貧血増強,肝障害時の赤血球膜脆弱化による溶血の合併が考えられたためプレドニゾロンを投与,約1カ月で症状所見の改善をみたがIgM抗HAV抗体長期持続陽性を示した.本例の免疫異常と関連して興味深い.
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谷口 浩也, 臼井 忠男, 稲本 康彦, 塩津 宏晃, 上床 博久, 北村 和人, 新保 慎一郎
1989 年 78 巻 4 号 p.
575-576
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
患者は25才男性で労作時呼吸困難を主訴に来院し,胸部レントゲン線写真,心エコーにて心膜水を認めた.胸水細胞診にて大型異形リンパ球を認め,その後生じた頚部リンパ節生検にてdiffuse mixed型の非ホジキンリンパ腫と診断した.胸部CTにて前縦隔原発が考えられた.心膜水,胸水を初発とする悪性リンパ腫はまれで, lymphoblastic型に多いとされるが,本症例はdiffuse mixed型であり興味ある症例と考えた.
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杉本 高士, 伊藤 國彦, 飯野 史朗, 中澤 博江
1989 年 78 巻 4 号 p.
577-578
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
心房組動を伴うバセドウ病の塞栓症についての検討を行った. 1982年から1986年までの5年間に経験したバセドウ病11309例中,心房細動を合併したものは288例であった.そのなかで6例(2.1%)に塞栓症が見られた.塞栓症の診断は,神経学的に病巣が確定し,臨床症状と臨床所見が塞栓症に合致したものとした.発作時の甲状腺機能は, 5例で亢進していた. 2例でβ-blockerが使用されていた.心房細動の型は4例が持続性,残りは発作性であった.バセドウ病では心房細動が唯一の塞栓症の誘発因子と考えられた.
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針金 三弥, 大原 裕康, 河村 攻, 永井 国雄, 元田 憲, 長尾 守
1989 年 78 巻 4 号 p.
579-580
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
48才の女性が,水様性下痢便に続く著明な腹水で,近医より紹介された.末梢血白血球分画で好酸球が42%と著増を示し,また,腹水中の好酸球が84%を占めていた.開腹による小腸楔状切除生検にて,粘膜下層から漿膜下層にわたるほぼ全層に,好酸球の浸潤を認めた.これらから,本例はいわゆるMcNabbらの言うtransmural eosinophilic gastroenteritis with ascitesに相当すると思われる.
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佐藤 準一, 村瀬 弘, 塚越 廣
1989 年 78 巻 4 号 p.
581-582
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
Bell麻痺様の急性-側性末梢性顔面神経麻痺で発症し,その寛解後に亜急性経過で両側性第8脳神経障害を呈した急性梅毒性髄膜炎の1症例を報告した. penicillin系抗生物質で,髄液所見はほぼ完全に改善したが,難聴が残存した.第7脳神経障害を併発した梅毒性髄膜炎の報告は最近40年間,国内国外を通じ11例しかなく,貴重と思い報告した.
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杉本 正毅, 佐藤 祐二, 熊谷 安夫, 末永 松彦, 橋本 博史, 廣瀬 俊一
1989 年 78 巻 4 号 p.
583-584
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
症例は34才,男性. 24才よりCrohn病と診断され,サラゾピリン服用により経過良好であったが,昭和62年9月ネフロ-ゼ症候群が出現.抗核抗体,抗DNA抗体,抗Sm/nRNP抗体陽性,血中免疫複合体の上昇を認め, SLEと診断した.腎生検所見は膜性増殖性腎炎を呈し,係蹄壁・メサンギウムにIgG, Clq, C3, C4の沈着を認め,ループス腎炎と診断した.ある種の薬物には潜在するループス素因を顕性化する作用があることが知られており,サラゾピリン投与中の患者では炎症性腸疾患の腸管外症状とSLE症状を誤認しない注意が必要である.
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袴田 睦, 伊藤 光泰, 須藤 裕一郎, 後藤 吉規, 遠藤 茂樹, 小川 法良, 大橋 弘幸, 奥川 忠正, 山崎 昇
1989 年 78 巻 4 号 p.
585-586
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
症例は48才,男性. 9年前より糖尿病を発病を発症したが未治療のまま経過し,右殿部・大腿部痛,を主訴に来院した.右殿部には2カ月前に出現した〓の痂皮化が認められた.蜂巣織炎を疑い抗生物質の投与が行われ,炎症反応は改善したが症状は変わらず, 3週間後に右大腿部に広範な皮下気腫が出現した.切開創より,無臭乳白色の膿が皮下と筋膜下に認め,非クロストリジウム菌が検出された. 3週間のドレナージで劇的に改善した.
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高田 誠, 桑原 英真, 高橋 仁公, 植原 政弘, 増田 淳, 後藤 和弘, 神保 進, 関原 哲夫, 根本 俊和, 小林 節雄, 本間 ...
1989 年 78 巻 4 号 p.
587-588
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
ジャーナル
フリー
遠位尿細管アシドーシス(distal renal tubular asidosis, dRTA)による低カリウム血症のため,呼吸筋麻痺が生じてCO
2ナルコーシスに陥った症例. CO
2ナルコーシスにまで陥る尿細管アシドーシスは極めてまれであり,加えて多彩な自己免疫異常を認めた.橋本病および, Sjögren症候群を合併しており,抗dsDNA抗体も陽性であった.遠位尿細管アシドーシスの発症に免疫学的機序の関与を示唆する症例であり,自己免疫疾患の形質発現を考える上でも貴重な症例と考えられた.
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小松 則夫, 北川 誠一, 大田 雅嗣, 坂本 忍, 三浦 恭定
1989 年 78 巻 4 号 p.
589-590
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
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症例. 23才,女性.右鎖骨上窩リンパ節生検により,ホジキン病,結節硬化型と診断され, 4年後に,ホジキン病の血行性によると思われる頭蓋内転移をきたし,頭部への放射線照射と化学療法を併用,病巣は著明に縮小した.その後約3年を経過しているが,再発は認めていない.ホジキン病の中枢神経系への浸潤はまれで,しかも本例は化学療法と放射線照射の併用が著効し,長期生存しており,貴重な症例と考え,ここに報告する.
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木村 克巳, 前多 隆吉, 蔀 幸三, 高田 健右, 須藤 克彦, 山内 俊明, 岡田 俊英, 金田 浩
1989 年 78 巻 4 号 p.
591-592
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
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7年間の全身性エリテマト一デスの罹患歴をもつ38才の女性に,解離性大動脈瘤の併発をみた.文献上両者の合併は僅か2例のみで,いずれも短期間で死亡している.しかし本症例では,血液透析を施行しつつ1年半にわたり生存し得た.本例における解離性大動脈瘤の病因としては,慢性腎不全による高血圧と,長期にわたるステロイド薬の投与による動脈硬化とが考えられるが,臨床経過より前者が主因をなしたと思われた.
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中山 昌明, 木村 靖夫, 渡辺 修一, 栗山 哲, 斎藤 篤, 宮原 正
1989 年 78 巻 4 号 p.
593-594
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
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本例は子宮癌手術後に膀胱直腸瘻が形成され,その瘻孔が局所の腫脹やsludgeの状態により閉鎖と開放が繰り返され,其の都度,急激な代謝性アシドーシスと代償性の呼吸性アルカロ一シスを合併する混合性酸塩基平衡障害をきたし,意識障害を繰り返した症例である.膀胱直腸瘻では高C1性アシざ一シスを呈するが,繰り返す意識障害を示す症例はまれである.
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秋庭 隆治, 長内 智宏, 松村 治男, 菊池 敬, 横野 良樹, 永洞 浩幸, 小沢 一浩, 山辺 英彰, 金沢 武道, 小野寺 庚午
1989 年 78 巻 4 号 p.
595-596
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
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症例は69才女性.子宮頚癌に対しcisplatin 100mgとadriamycin 30mgの内腸骨動脈注入療法を受けた後,持続的な低K血症が生じた.検査成績はBartter症候群類似の病態を呈し, indomethacin投与により低K血症の改善をみた.本症例はdistal fractional chlorine reabsorptionの低下を示し,低K血症の主因として,抗癌薬によるHenle係蹄上行脚におけるCI再吸収の障害が考えられた.
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馬場 俊也, 橋本 裕二, 小林 孝寛, 丸山 義明, 沼野 藤夫, 前沢 秀憲
1989 年 78 巻 4 号 p.
597-598
発行日: 1989/04/10
公開日: 2008/06/12
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59才,女性.主訴はめまい.胸骨左縁に駆出性収縮期雑音を聴取した.断層心エコー検査にて僧帽弁弁輪部に付着し,左室流出路内で振り子様運動を示し,収縮期にはパラシュート状を呈する弁状構造物を認めた.パルスドプラー心エコ-検査では左室流出路内に乱流エコーが認められ,心臓カテーテル検査にて左室-大動脈間に35mmHgの圧較差が証明された.以上より僧帽弁副組織と診断した.本症例は内外の文献上最高令と思われる.
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