肥大型心筋症(HCM)と高血圧心(HT)を鑑別する目的でHCM群35名(閉塞型10名,非閉塞型25名), HT群22名,健常対照群(N群)22名に拡張早期時相分析を行ない検討した.拡張早期時相は心エコー図,心尖拍動図,心音図を同時記録し, (1) II
A-O時間(II
A音から心尖拍動図のO点まで), (2) II
A-MVO時間(II
Aから僧帽弁開放点まで), (3) MVO-O時間および, (4) MVO-O/II
A-MVO比を測定した.結果: (1)II
A-O時間はN群119±9msec, HT群170±20 (p<0.001, VS N),閉塞型171±34 (NS, VS HT),非閉塞型276±73 (p<0.001, VS HT)であつた. (2) II
A-MVO時間はN群66±11msec, HT群103±13 (p<0.001, VS N),閉塞型83±13 (p<0.001, VS HT),非閉塞型100±18 (NS, VS HT)であつた. (3) MVO-O時間はN群53±9msec, HT群67±14 (p<0.001, VS N),閉塞型89±24 (p<0.01, VS HT),非閉塞型175±68 (p<0.001, VS HT)であつた. (4) MVO-O/II
A-MVO比はN群0.89±0.32, HT群0.66±0.16 (p<0.01, VSN),閉塞型1.08±0.24 (p<0.001, VS HT),非閉塞型1.79±0.71 (p<0.001, VS HT)であつた.以上の結果より, HCM, HT両群とも等容拡張期であるII
A-MVO時間の延長を認めるが, HCMではさらに血液流入時相であるMVO-0時相により著明な延長を認め,このことが両者の重要な鑑別点であることが判明した. MVO-O/II
A-MVO比がN群に比しHT群は低値を, HCM群は逆に高値を示し,特にこれまで鑑別が極めて困難とされてきたHT群と非閉塞型を明瞭に区別し得たことは,本指標が今後両者の鑑別に極めて有用であるものと考えられた.
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