日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
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72 巻 , 8 号
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  • 阿部 裕
    1983 年 72 巻 8 号 p. 989-994
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 水重 克文
    1983 年 72 巻 8 号 p. 995-1005
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    異型狭心症発作時,左室壁運動と血行動態との経時的対応から左室動態について検討した.対象は,冠動脈造影で冠〓縮を確認した異型狭心症群12例と,冠動脈に異常を認めなかつた対照群5例である. ergonovine maleateを静脈内投与して狭心発作を誘発し,心エコー法によつて壁運動の変化を観察した.同時に,動脈圧,肺動脈圧,心拍出量,心電図を連続記録した. (1)断層心エコー法によつて異型狭心症群全例で,冠動脈〓縮部位に相応する左室壁がasynergyを呈するのを観察した. (2)asynergyの出現は心電図ST-T変化の出現よりも106±90 (mean±SD)秒先行した. (3)狭心症発作時, Mモード心エコー図より求めた局所壁平均収縮速度は,異型狭心症群では虚血領域で減少(30.8±6.9 vs 17.2±7.5mm/sec)し,非虚血領域で増加(27.7±11.2 vs 33.0±13.0mm/sec)した.断層心エコー図より求めたmVcFは,相対する壁がともに非虚血領域である場合増加(0.66±0.09 vs 0.87±0.llcirc/sec)し,一方が虚血領域である場合減少(0.60±0.12 vs 0.38±0.12circ/sec)した. asynergyを呈した領域(% non contractile segment)が40%を越えない例ではstroke indexは変化しなかつた.肺動脈拡張終期圧は壁運動の変化と平行して上昇(8.8±2.0 vs 17.0±3.4mmHg)した.以上の結果から,虚血発作時,虚血領域の機能低下に対して非虚血領域は前負荷の増加にともなつて機能亢進し,虚血領域が狭い場合にはかかる代償的機序によつて心臓全体としての機能は保たれるものと考えられた.
  • 余川 茂, 杉本 恒明, 浦岡 忠夫, 井内 和幸, 秋山 真, 能沢 孝
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1006-1012
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    運動負荷試験が,不整脈の誘発およびその病因診断において,どの程度の有用性をもつかを, treadmi11亜最大運動負荷試験を行なつた1148人を対象として調べた.運動負荷により93人で心室期外収縮, 4人で心室頻拍, 50人で上室期外取縮, 3人で心房細動が誘発された.心室期外収縮の出現頻度,左室源性の心室期外収縮の出現頻度は負荷試験陽性群で多かつたが,心室期外収縮出現時の心拍数には負荷試験陽性群と陰性群で差はなかつた.心室期外収縮以外の不整脈の出現頻度と運動負荷試験の結果には,明らかな関係はなかつた.すでに発作の確認されている頻拍発作症例で,運動により,その頻拍発作が再現されたものは,発作性心室頻拍例4人中2人,発作性心房細動例11人中2人であり,発作性上室頻拍は誘発されなかつた.負荷前の洞頻度が毎分60未満で,かつ運動中の心拍数が毎分120に達しなかつた20例のうち3例のみが,洞不全症候群症例であつた.また,洞不全症候群症例において,運動中の心拍数が目標心拍数に達したものと,達しなかつたものとでは,長時間心電図上の最大RR間隔,右房高頻度刺激後の洞自動能回復時間に差はなかつた.以上より,運動負荷試験は,不整脈の病因診断,頻拍発作例での不整脈誘発法として限界があり,洞不全症候群の診断法としては有用でないと思われた.
  • 浜田 希臣, 松崎 圭輔, 風谷 幸男, 重松 裕二, 加藤 正和, 土井内 純治, 越智 隆明, 伊藤 武俊, 国府 達郎
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1013-1019
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症(HCM)と高血圧心(HT)を鑑別する目的でHCM群35名(閉塞型10名,非閉塞型25名), HT群22名,健常対照群(N群)22名に拡張早期時相分析を行ない検討した.拡張早期時相は心エコー図,心尖拍動図,心音図を同時記録し, (1) IIA-O時間(IIA音から心尖拍動図のO点まで), (2) IIA-MVO時間(IIAから僧帽弁開放点まで), (3) MVO-O時間および, (4) MVO-O/IIA-MVO比を測定した.結果: (1)IIA-O時間はN群119±9msec, HT群170±20 (p<0.001, VS N),閉塞型171±34 (NS, VS HT),非閉塞型276±73 (p<0.001, VS HT)であつた. (2) IIA-MVO時間はN群66±11msec, HT群103±13 (p<0.001, VS N),閉塞型83±13 (p<0.001, VS HT),非閉塞型100±18 (NS, VS HT)であつた. (3) MVO-O時間はN群53±9msec, HT群67±14 (p<0.001, VS N),閉塞型89±24 (p<0.01, VS HT),非閉塞型175±68 (p<0.001, VS HT)であつた. (4) MVO-O/IIA-MVO比はN群0.89±0.32, HT群0.66±0.16 (p<0.01, VSN),閉塞型1.08±0.24 (p<0.001, VS HT),非閉塞型1.79±0.71 (p<0.001, VS HT)であつた.以上の結果より, HCM, HT両群とも等容拡張期であるIIA-MVO時間の延長を認めるが, HCMではさらに血液流入時相であるMVO-0時相により著明な延長を認め,このことが両者の重要な鑑別点であることが判明した. MVO-O/IIA-MVO比がN群に比しHT群は低値を, HCM群は逆に高値を示し,特にこれまで鑑別が極めて困難とされてきたHT群と非閉塞型を明瞭に区別し得たことは,本指標が今後両者の鑑別に極めて有用であるものと考えられた.
  • 藤咲 淳, 今野 孝彦, 芝木 秀俊, 新里 順勝, 小澤 達吉
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1020-1025
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は30才,男子で,発熱,皮疹,関節痛,腹痛,粘血便を主訴として入院した.その後,回腸壊死によるイレウス症状を呈し,開腹手術を施行.切除した回腸組織は典型的な多発性動脈炎の組織像であつた.手術後,パルス療法に引き続いてステロイド大量投与を行ない,腹部症状,皮疹,その他の臨床症状も急速に改善した.また,本症例は入院時HBs抗原が陽性であり,その後, GPT上昇, HBs抗原陰性化, HBc抗体, HBs抗体陽性となり, HBウイルス初感染後のB型肝炎の像を示した.多発性動脈炎の死亡率は高く,特に消化管症状を呈するものの予後は不良であるとされている.本症例は早期手術と,ステロイドホルモンの大量投与により救命し得た例であり,特にパルス療法の効果が著しく,多発性動脈炎に対するパルス療法の有効性を示した1例である.さらに,最近多発性動脈炎の病因として, HBs抗原抗体複合物の関与が注目されており, HBs抗原陽性例の報告が欧米では多い.本邦ではこの様な例はきわめて少ないが,本症例は, HBウイルス初感染時に多発性動脈炎を発症した例で, HBウイルスの多発性動脈炎発症への関与を示唆する貴重な1例と考えられた.
  • 瀬田 孝, 斉藤 善蔵, 坂戸 俊一, 森瀬 敏夫, 一二三 宣秀, 水毛生 直則, 木越 俊和, 上田 幸生, 中林 肇, 竹田 亮祐
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1026-1034
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本邦第5例目に相当する副腎皮質女性化腫瘍の1例を報告する.症例は48才,男性,両側女性化乳房,リビドー低下,右精索静脈瘤を主症状として入院. CT scanにて右腎直上に11×12×13cmの球状腫瘤陰影が認められ,内分泌学的検査では血漿estrone (E1), estradiol (E2)ならびに尿中estrogenの著明な高値と,尿中17-KS, 17-OHCS, dehydroepiandrosterone, pregnanediol, pregnanetriol,血漿17-OH-progesterone, 11-deoxycortisol, cortisolの高値が認められた.血漿deoxycorticosterone, corticosteroneは正常で,腫瘍中の11β-hydroxylase活性低下は考え難く,また,尿中hCGの増加もなく腫瘍細胞に栄養膜細胞類似の機能は見出せなかつた. in vivoにおけるhCGならびにACTH-Z負荷に対してestrogenは軽度増加傾向を示した.手術にて摘出した腫瘍は重さ1270gで組織学的に副腎皮質癌と診断された.腫瘍組織中のE1およびE2の含有量はそれぞれ1280, 420pg/g湿重量と著明に高く,また,腫瘍組織にδ4-androstenedioneならびに3H-testosteroneを添加して行なつた培養実験から,これらの前駆体からestrogenへの転化が明らかにされ,しかも, estrogen生成過程において, testosteroneからestrogenへの転化がandrostenedioneからtestosteroneへの転化と同等に亢進していることが示唆された. in vitroにおいてもhCGならびにACTH負荷により腫瘍のestrogen生成は促進され, in vivoの成績と合わせ,本腫瘍細胞にhCGならびにACTH receptorが存在する可能性が示唆された.
  • 早津 正文, 盛 英機, 井沢 和弘, 仲里 弘, 小石 陽一, 山辺 英彰, 大熊 達義, 金沢 武道, 小野寺 庚午, 佐藤 達資
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1035-1040
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    68才の男性,会社員.主訴:右片麻痺.昭和54年8月頃より右上肢の,同年11月頃より右下肢の麻痺がそれぞれ出現.精査のため12月19日当科入院.脳血管写, CTスキャン,脳シンチグラムにて,左前頭葉と左中心溝附近に転移性脳腫瘍像が認められた.胸部写真では右下肺野に径5cmの腫瘤状陰影があり.喀痰の細胞診では腺癌であつた.消化管および肝機能検査は正常であつたが,血中α-fetoproteinのみ32×104ng/mlと著しく高値を示した. 2月に入り頭痛,悪心,食欲不振を訴え, IVH・化学療法などを行なつたが, 5月7日呼吸不全のため死亡した.経過中α-fetoproteinは,常に10000ng/ml以上を示した.剖検では右肺下葉原発の中等度分化の腺癌で,肝・脳・リンパ節などに転移が認められた.癌組織をホモジネートして, RIA法で測定すると,腺癌組織のα-fetoproteinは37.6 (μg/g湿重量),肝癌組織43.8 (同),リンパ節組織213.5 (同)で,対照肝組織0.86 (同)に比べ高値であつた, α-fetoproteinに対する蛍光抗体法で,各癌組織とも陽性となり, α-fetoproteinの局在を示唆した. α-fetoprotein陽性癌は,内胚葉前腸由来の肝・肺・胃,中胚葉由来の卵巣の癌腫に集中しており,本症例も肺由来のものであつた.本症例は脳症状を初発としたα-fetoprotein産生肺癌であり,極めて希有な症例であつた.
  • 清水 満, 三浦 武, 土井 義之, 北村 和夫, 福田 芳郎
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1041-1049
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺動脈原発肉腫の報告は極めて少なく,現在までに73例の報告をみるのみである.症例は51才,男性.死亡5ヵ月前より漸時増強する呼吸困難と浮腫を主訴に近医に入院し,心膜炎の疑いにて心膜穿刺術を受け,一時症状の改善を認めたものの死亡1ヵ月前には起座呼吸の状態となり当科へ転科となつた.転科後心タンポナーデ様症状増悪したため,確定診断に至らないまま心膜腔ドレナージ術施行したが,術後低拍出症候群をきたし死亡した.剖検にて肺動脈原発肉腫で,病理組織学的検索により骨格外骨肉腫であることが判明した.肺動脈原発肉腫は非常に希な疾患ではあるが,本疾患の存在する可能性を念頭に置き,適確な診断と積極的な外科療法が現時点では救命しうる唯一の方法と思われるため報告する.なお,肺動脈原発の骨肉腫の報告は世界で2例目,本邦では第1例目と思われる.
  • 片渕 律子, 服部 文忠, 大地 信彰, 保利 敬, 小野山 薫
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1050-1054
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Heat strokeは,異常高体温により全身の臓器障害を呈する,非常に重篤な疾患で,致死率は10~70%と報告されている.諸外国では一夏に数百~数千の犠牲者が報告されているが,気候の温和な我国ではその数は極めて少なく, 4例の症例報告があるのみで,うち2例は死亡,他の2例は比較的軽症例である.今回我々は,多彩な合併症を伴う重症のheat strokeの1例を救命し得たので報告する. 15才,男性.炎天下で7時間のラグビー練習後倒れ, 30分後より不穏状態出現.脈拍178/min,血圧60/0mmHg.瞳孔散大.対光反射消失.直腸温は42.7°Cまで上昇し, ice blanketによる体外冷却にて3時間後, 37.0°Cまで低下した.以後,急性腎不全,播種性血管内凝固症候群,重症肝障害,敗血症などが次々に出現した.急性腎不全に対しては腹膜潅流,血液透析にて治療し,第54病日に利尿期に入つた.第82病日に行なつた腎生検では,糸球体に著変なく,尿細管は散在性に拡張し,尿細管上皮の脱落,扁平化がみられ,急性尿細管壊死の回復期と診断した. Heat strokeにおける急性腎不全は,予後を左右する重篤な合併症で,その機序として,熱の腎への直接作用, rhabdomyolysisによるmyoglobinuria, shock,脱水,運動などがあげられている.乏尿期は6~30日と報告されているが,本例では54日に及んだ.その理由として,前述の種々の病態に加え,播種性血管内凝固症候群,敗血症,抗生物質の大量長期投与などが尿細管上皮の再生を遅らせたためと考えられた.
  • 清水 倉一, 野中 達也, 中尾 彰秀, 寺本 民生, 大橋 辰哉, 岡 博
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1055-1062
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性骨髄性白血病に尿崩症が合併し,しかも多尿の発現状況を観察しえた症例を経験した.症例は56才,女.体重減少,息切れ,下腿腫瘤を主訴として入院.貧血(赤血球311×104, Hb 9.0g/dl),骨髄生検ならびに左脛骨腫瘤生検の組織所見などより,原発性骨髄線維症と診断された.入院3ヵ月後,急性骨髄性白血病への転化が生じ,白血病転化5ヵ月後の入院中,患者は突然,多尿,頻渇,多飲を訴えた.この時,尿量は約6l/日,尿比重1008前後であつた.諸検査(水制限,高張食塩水,バゾプレッシン試験)の結果,中枢性尿崩症と診断された.患者の陳述では,一定日に多尿,多飲が突然生じたという.しかし,蓄尿の記録によつて,患者の自覚に先行して, 2週間前より尿量の段階的増加,尿比重の段階的低下が生じていることが判明した.つまり,多尿はあるが,患者が自覚しない‘無自覚的多尿期’が存在することが確認された.多くの成書によれば,尿崩症の多尿は或る日(或る時間),突然生じるという.しかしこの認識は主に病歴聴取に基づくものである.この症例の成績は,尿崩症の発症は患者が自覚する程,急激ではないこと,したがつて,尿崩症の発症状況に関する既成概念には修正されるべき余地があることを示している.なお,当内科において昭和16年以後に経験した尿崩症53例中,白血病に合併したものは,本症例の1例のみであつた.
  • 上遠野 栄一, 椛島 悌蔵, 河野 一郎, 山根 一秀, 桜井 徹志, 柏木 平八郎
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1063-1067
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデスに軟部組織の石灰化が併発した報告は希である.今回我々はかかる1症例を経験し,摘除した石灰化結節の組織学的検討と成分分析を行なつたので,その成績を報告する.症例は46才,女性. 31才時に発熱,多発関節炎,日光過敏症,脱毛,蛋白尿,白血球減少が出現し全身性エリテマトーデスと診断され,ステロイド投与を受けた. 40才頃より皮膚の脆弱性を認め,その2年後には下腿浮腫が出現し難治性の潰瘍を合併するようになり,昭和55年7月当院入院となつた.入院時両下腿に潰瘍と瘢痕を散在性に認め,皮下に多数の結節を触れた.皮下結節は両上腕および殿部にも認められ,これらはX線写真上直径数cmの石灰化として証明された.血液,尿,腎機能,免疫学的検査では中性脂肪の増加と抗核抗体強陽性(diffuseパターン), LE細胞陽性のほかは正常であつた.両上腕および殿部の結節は圧痛著しいため摘除した.摘除された結節は皮下脂肪層から深層におよんでいたが,筋膜には至らず,線維性の結合織により被覆され,一部は脂肪壊死巣に隣接していた.本結節はプラズマ発光分析と赤外線スペクトル分析の結果,リン酸カルシウムおよび炭酸カルシウムが主成分であると推定された.筋肉注射や打撲をうけた部位に一致して石灰化結節が生じたことより軟部組織の外傷が石灰化の誘因と推測された.
  • 森田 茂樹, 中田 恵輔, 室 豊吉, 古河 隆二, 楠本 征夫, 棟久 龍夫, 長瀧 重信, 石井 伸子, 小路 敏彦, 岡島 俊三
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1068-1073
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    トロトラストは,放射性同位光素232Thを主成分とする造影剤で網内系に取りこまれるが,生物学的半減期が200年以上であり,半永久的に体内にとどまる.このためトロトラストのα線内部照射による発癌率は高く,肝悪性腫瘍や白血病などの報告が多くみられる.多発性骨髄腫の合併は外国で7例報告されているが本邦では,まだみられない.本論文では,トロトラスト注入約40年後多発性骨髄腫を発症した71才,男性例につき報告する.本例は昭和14年トロトラストによる脳血管造影を受けた.昭和55年, M蛋白血症が出現し,急増したため昭和57年1月8日当科に入院した.腹部単純X線像および腹部CT像では,肝門リンパ節の石灰化様陰影と,レントゲン密度が増加し萎縮した脾臓がみられた.ヒューマンカウンターではトロトラスト原液と同一のγ線スペクトルを示し,肝組織像では褐色で光沢を有するトロトラスト顆粒が認められた.血清の免疫電気泳動像では, IgG型(κ型)のM-bowがみられ, 99mTc-MDP骨シンチグラムでは左腸骨と左第3, 5肋骨に集積像を認めた.胸骨骨髄穿刺では,異型性の強い形質細胞が7%存在し,左腸骨骨髄腫生検標本からは232Thの娘核種(212Pbなど)の放射能活性がみられ,トロトラスト沈着症に関係して発症した多発性骨髄腫の可能性が示唆された.
  • 天野 裕子, 南部 勝司, 和田 偉将, 崎田 隆一, 上山 洋, 今井 康充, 上田 英雄
    1983 年 72 巻 8 号 p. 1074-1079
    発行日: 1983/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    体質性ICG排泄異常症の5例を報告した. ICG血中消失率(K)は0.0092から0.0216の範囲にあり,平均値および標準偏差は0.0170±0.0053 (mean±SD)で,正常例に比べ著しく低下していた. ICG 15分停滞率(R15)は72.8%から87.4%に分布(77.8±6.3%)し, ICG試験は高度に異常であつた.これに対しBSP試験では, Kは1例を除いて正常か正常に近く, R45は, 1例を除いて全例正常であつた. 5例中2例は,肝生検による組織学的検索で,光顕的には著変が認められず,このうちの1例はさらに電顕的に検索し, Disse腔内に細網線維の増加が観察された.家族内調査を行ない得た2例(この中の1例は肝組織像も検討)では,いずれもICG異常例の家族内集積がみられた,すなわち, 5例中3例は肝機能も正常であることから体質性ICG排泄異常症の典型例と考えられた.残りの2例中1例は,血清トランスアミナーゼ値の一過性上昇があり, BSP試験が異常であつた.他の1例は広範囲熱傷による輸血後肝機能障害に加え, ICG試験の高度異常が認められた.これらの2例は,いずれも体質性ICG排泄異常症に肝障害を合併したものと推測され,肝硬変や肝炎後ICG排泄異常症との鑑別について考察した. ICG移行率では,全例肝摂取率が著しく低下しており,本症の原因は,肝へのICGの取り込みの障害であることが示唆された.
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