日本内科学会雑誌
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101 巻, 12 号
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内科学会NEWS
目次
特集 医療安全と診療の質
Editorial
トピックス
I.インシデント・アクシデントの現状
  • 本間 覚
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3368-3378
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    医学の急速な進歩と強力化は,医療における安全管理・危機管理・品質管理の導入を不可欠にした.各医療施設には医療の危険(リスク)に対する管理体制および教育体制を構築して実施することが求められている.その中で,インシデントやアクシデント(医療事故)報告は,医療安全を学ぶ教材であるばかりでなく,組織が迅速に危機管理するための情報源でもある.さらにインシデント等を品質の"はずれ値"と捉え,経験深い熟練者(管理者)によって医療品質の向上に活用させることが本質的に重要である.
  • 廣瀬 昌博
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3379-3385
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    メディケーションエラーは薬剤使用プロセスにおけるエラーと定義される.しかし,医療安全対策上,これに薬剤有害事象および薬剤有害反応を加えたほうがより実際的である.また,その投与経路により注射・点滴と内服の二つに分けると,後者は経口摂取で軽視されがちであるが,場面によっては致死的な事例が発生している.本稿では,メディケーションエラーの基本的事項とともにその重大性や予防策を論じる.
  • 矢野(五味) 晴美
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3386-3395
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    医療安全推進の観点から医療関連感染の予防は重要である.医療関連感染は,一般に入院後48時間以降に発症した感染症の総称である.代表的な疾患にカテーテル関連血流感染,カテーテル関連尿路感染,医療関連肺炎,手術部位感染,Clostridium difficile感染などが含まれる.医療関連感染は,死亡率の高さ,それにかかる余分な入院日数と医療費などから予防策の実施が不可欠である.すべての医療従事者および施設全体にエビデンスに基づいた包括的な感染対策の実行が望まれる.
  • 大出 幸子, 寺井 美峰子, 高橋 理, 大泉 綾, 嶽肩 美和子, 福井 次矢
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3396-3403
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    入院中の患者の転倒転落は,大腿骨骨折などをきたし,在院日数の延長,患者のQOL低下に大きく関わる重大な事故である1)2).米国の急性期病院での入院患者の転倒転落発生率(‰=件/1,000入院)は,2001年のInouye3)らの報告によると,3~20‰で,一方わが国における急性期病院の転倒転落率は,2010年から日本病院会が30の急性期病院(2012年度参加施設は145病院)を対象に行っているクオリティーインディケーター(QI)プロジェクト(QIプロジェクト)の報告では0.7~3.8‰とされ,Inouye3)らの報告に比べるとかなり低い.2008年10月1日より,米国のCenter for Medicare and Medicaid Servicesでは,入院中の転倒転落を"never event"「起こってはならないこと」とし,入院中の転倒転落は限りになく予防すべきであるとされている.入院中の転倒転落に関する研究は,世界中で数多く,急性期病院の入院患者を対象とした複合型予防介入プログラムの効果検証を目的としたランダム化比較試験も報告されている.
    本誌では,今までに報告された代表的な転倒転落予防に関する研究をまとめ,また,聖路加国際病院における転倒転落予防対策について報告する.
  • 林 泰広, 中野 由美子
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3404-3412
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    チューブ関連インシデント・アクシデントの頻度は全体の15~20%程度で,薬剤関連の約30%,療養上の世話(転倒・転落など)の約20%に次ぐ.末梢点滴ルートの自己抜去が約半数で,自然抜去,接続はずれ,切断・破損がこれに続く.アクシデント事例は多くはないが死亡事故の報告もある.予防には患者状態の適切な評価,身体抑制・鎮静を含めた対策が強調されているが,事故防止のために医師が関与すべき点について述べた.
II.医療の質測定と改善
  • 嶋田 元, 堀川 知香, 福井 次矢
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3413-3418
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    厚生労働省では,平成22年度より医療の質の評価・公表等推進事業を進めており,「国民の関心の高い特定の医療分野について,医療の質の評価・公表等を実施し,その結果を踏まえた,分析・改善策の検討を行うことで,医療の質の向上及び質の情報公表を推進すること」を目的としている.平成22年度は国立病院機構,全日本病院協会,日本病院会の3団体が,平成23年度は全日本民主医療機関連合会,恩賜財団済生会,日本慢性期医療協会の3団体が本事業を実施した.
  • 今中 雄一
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3419-3431
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    医療の質については,古典的に構造(Structure),過程(Process),結果(Outcome)の3つの側面1)からのアプローチがある.医療の質の指標(臨床指標)は,特に,プロセスやアウトカムの可視化やその向上に役立ちうるものである.本論説ではそれぞれの側面からどのように質を指標化・可視化できるかについて,特にDPC(Diagnosis Procedure Combination)データに基づく具体例をもって概観する.医療の質の評価に関する研究はわが国でも次第に進んできたが,データ収集と分析には,多施設から比較可能な標準的様式で情報を収集する電子的情報システムが一つの鍵となる.病名のほか,医薬品や手術・処置などの詳細情報も含むDPCデータは,共通基盤に基づく指標の算出において大きなポテンシャルを有する.
  • 福井 次矢, 嶋田 元, 脇田 紀子, 堀川 知香, 寺井 美峰子, 大出 幸子, 小松 康宏
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3432-3439
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    医療過誤が起こると,その影響は患者や家族だけでなく,医療者や社会に与える影響は深刻かつ甚大である.そのために,過去20年間で,安全性を高める取り組みは世界中に速やかな広がりを見せた.それに比べると,医療の質を高める取り組みの広がりは遅い.医療の質を示す指標(Quality Indicator:QI)を測定し公表することで,診療現場でのPDCAサイクルを回すことが可能になる.聖路加国際病院では過去7年間,約100項目のQIを用いた改善活動を行っており,4分の3の指標が著しく改善した.その背景には,医療者の質改善への動機づけが効果的になされること,個人の意識や能力よりも組織としての対応が重要とのパラダイムシフトがある.
  • 上原 鳴夫
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3440-3447
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    医療の質保証とは診療やケアがそれぞれ目的とすることを確実に実現できるようにすることである.あるべき姿と現実とのギャップを問題と称し,このギャップを埋めるための一連の営為を改善と呼ぶ.コッドマンに始まる医療の質保証の取り組みは過去20年間で急速に進化し,現在の考え方は"KAIZEN"が基調になっている.医師と医療の質保証はメディカル・プロフェッションの社会的責務であり,改善する能力は医師に求められる資質と考えられるようになっている.
  • 長谷川 友紀
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3448-3454
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    医療の質向上の方策としては,構造,過程,結果に着目した方法,第三者評価・認定が代表的である.各国では,さらに情報公開,診療報酬などを併用しながら質向上を進めることが通例である.医療では,(1)データが断片化されており相互利用が困難,(2)患者の個別性,重症度の調整が困難,(3)評価手法の開発は個々の施設の評価に留まっていること,などにより,これまでは適切に評価を行い,改善に結び付けることが困難であった.今後は,データの標準化,医療機関が改善につなげやすい還元方法の開発,医療機関への支援策の検討が優先して行われる必要がある.
III.安全性と質管理:理論と教育
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 近藤 光子, 玉置 淳
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3525-3532
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    気道分泌は,粘液線毛輸送系の構成成分として肺における生体防御機構の維持に重要である反面,気道分泌の増加や喀出困難は日常生活の障害,気道感染の助長,換気障害をもたらす.気管支喘息ではムチン分泌亢進,アルブミンの漏出,好酸球による気道上皮障害から粘調な痰となり喘息死とも関連する.COPDでは過分泌はその増悪に関わり予後に影響を与える.近年,ムチン分泌の亢進や杯細胞化生の制御には上皮増殖因子受容体やインターロイキン13が関わっていることが明らかになった.気道分泌の治療には粘液産生の低下,分泌反応の抑制,分泌物の排除の促進の3つの方法がある.病態に応じた治療法の選択を行うことが基本であり,好酸球性炎症による過分泌には吸入ステロイド,抗ロイコトリエン薬などが,好中球性炎症による過分泌にはマクロライド,抗コリン薬などが用いられる.分泌物の排除の促進にはβ刺激薬や去痰薬,理学療法が用いられる.
  • 中村 哲也, 渡辺 守
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3533-3539
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    組織幹細胞を用いて傷害組織の再生を図る技術に注目が集まっている.特異的な幹細胞マーカーとしてLgr5分子が同定されたのを契機とし,腸管上皮幹細胞研究が大きく進展した.腸管上皮幹細胞がいかに維持されるか,幹細胞の複製・分化に関わる機構,さらにはこれに関わるニッチの作用に関し,新しい事実が明らかになりつつある.一方で,幹細胞治療に重要な技術,すなわち体外培養技術も急速に進みつつある.これまでその体外培養が極めて困難とされてきた腸管上皮細胞は,いまや幹細胞を体外で増やしうる数少ない組織幹細胞としての認識が広まりつつある.体外で増やした腸管上皮幹細胞を,安全かつ有効に体内に戻し,さまざまな疾患で傷害を受ける腸管上皮組織を再構築する新しい再生治療を視野にいれた最新の研究について概説する.
特別企画:教育病院連絡会議特別シンポジウム 総合医と内科医
  • 渡辺 毅
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3540-3541
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
  • 池田 康夫
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3542-3546
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    日本専門医制評価・認定機構(機構と略)では専門医制度改革に向けた基本構想をまとめ発表した.専門医は個人,学会単位ではなく診療領域単位の専門医として中立的第三者機関認定とする事.更にその枠組みとして基本領域と専門的医療領域の二段階制とする事などを骨子としている.基本領域には,地域を診る医師として疾病・外傷の初期対応能力や,複数の臓器に疾病を有する高齢者などの総合的診療能力を有する医師を「総合医・総合診療医」として位置づける事が提唱されて居り,その研修プログラムの構築に向けた取組みが進んでいる.機構を中心として議論されている改革案について,厚生労働省に設置された「専門医のあり方に関する検討会」でも検討が進んでいる.
  • 福井 次矢
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3547-3552
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    総合医とは「頻度の高い疾病と傷害,それらの予防,保健と福祉など,健康にかかわる幅広い問題について,わが国の医療体制の中で,適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的視点から提供できる医師」と定義できる.総合医を専門医制度に正式に組み入れ,多数(将来的には,全医師の20%程度)養成することで,わが国の医療の有効性,効率性は大いに高まる可能性がある.卒前教育を含む医師養成課程全般の見直しも必要となろう.
  • 高杉 敬久
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3553-3556
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    専門医制度に対する日本医師会の主張は明確である.専門医の評価・認定はプロフェッショナルオートノミーを基盤として行う,現行の医療制度と整合の取れた専門医制度とし,現在,地域医療に従事しているかかりつけ医の評価に十分配慮する,専門医制度を医師の偏在是正を目的にすることにより制度を歪めない,専門医のインセンティブについては慎重に議論する,専門医の認定・更新にあたり日医生涯教育制度を活用すること,等である.
  • 前沢 政次
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3557-3561
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    多くの内科医はプライマリ・ケアの現場に身を置いて活動している.国民に分かりやすい形でその役割を十分に果たしていくためには,医師を総合医療群と専門分化医療群に分けることが必要である.総合医療群の役割は地域住民とのつながりを重視し,幅広く健康問題の相談にのり,保健予防や介護福祉との連携が取れ,全人的医療ができることである.日本プライマリ・ケア連合学会はこの医師を家庭医医療専門医として育ててきた.今後は日本内科学会とも連携し,総合医療研修プログラムを確立したい.
  • 阿部 昌彦
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3562-3566
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    内科医不在になった病院で総合内科医が主体となって内科を再建,再構築した事例を報告する.1病院での体験からではあるが総合内科が内科診療の中核となった場合の効果などについて以下のような事が言えると思われる.
    (1)少数の医師によっても診療の再開,診療体制の再構築が可能であった.
    (2)総合内科の教育研修を求める若手医師が集まる魅力的環境を作ることで継続的人材確保が出来る.
    (3)そのためには臨床現場を診療のみならず教育研修環境にかえていくことが重要である.
    (4)指導医と研修医からなる総合内科グループが比較的少数の臓器別専門医と業務を効率的に分担することによって臓器別縦割りではない新しい内科診療体制と教育システムが生まれる.
    (5)医師不足のへき地だけでは無く都会型の病院においてもこの方法は有効と思われる.
  • 宮崎 俊一
    2012 年 101 巻 12 号 p. 3567-3569
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/10
    ジャーナル フリー
    内科という広い領域の専門医である"総合内科専門医"は,外科系診療領域における特定の診療行為の専門家とは異なる.総合内科専門医は病院における役割,医学における役割,地域における役割がそれぞれ異なっており,内科全般にわたる広い知識を活用して,広い守備範囲を特徴とする専門医と言える.ただし,基本的には総合内科専門医の診療面における役割はgeneralityを発揮してプライマリケアにおける初期対応をおこない,必要な場合は適切な時期に臓器別専門医へ紹介することなどが主要な役割となっている.一方,プライマリケア専門医とは異なり,取り扱う対象疾患はあくまでも内科領域である.
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