日本内科学会雑誌
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67 巻, 2 号
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  • 尾前 照雄
    1978 年 67 巻 2 号 p. 133-144
    発行日: 1978/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎性高血圧の成因と,その取り扱いを中心に,最近の知見を加えて解説した.腎性高血圧は,高血圧の成因論のなかで最も重要な部分を占め,すべての高血圧は,腎と直接あるいは間接のかかわりをもつといつてもよい.従来最も関心の払われてきたrenin-angiotensin系についても,これが直接血管を収縮させる作用のほかに,生体の水電解質代謝とふかいかかわりをもつこと,自律神経系とも密接な機能的関連をもつて血圧の調節に関与していることが明らかにされてきた.最近,その作用をblockするangiotensin II ana〓ogue, angiotensin Iをangiotensin IIにするconverting enzyme inhibitor (SQ 20881)が合成され,それらの臨床知見が報告されている. β受容体遮断剤が高血圧治療に導入されてから10年以上の年月が経過したが,その作用機序もrenin分泌に及ぼす影響と交感神経機能との関連を中心に解析がすすめられてきた,腎の降圧物質については, prostaglandinsについての研究が多いが,高血圧の成因における役割については未だ未解決の点が多い. reninにかんしてはその前駆体(prorenin),腎以外に由来するrenin (isorenin)が話題になつているので,これらについても簡単に解説した.腎不全時の高血圧の病態については,透析療法の普及によつて明らかにされた点が多いが,体液量の増加が成因に関与している場合が多い.以上の点にかんして,臨床の問題を中心に述べたが,腎性高血圧の成因は症例によつて必ずしも単一ではないことを強調したい.
  • 茅野 眞男, 小野 康平, 相馬 康宏, 吉津 博, 半田 俊之介, 中村 芳郎
    1978 年 67 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 1978/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    左室疾患が右室機能に及ぼす影響を検討した.正常血行動態19例,僧帽弁狭窄症(MS) 24例,心筋硬塞症(MI) 25例,うつ血型心筋症(COCM) 15例を対象とした.左室障害の指標としては, MS群では僧帽弁閉鎖不全等の合併による左室肥大(MS+LVH)の有無, MI群とCOCM群では左室駆出率LVEFをとりあげた.右室機能の指標は,右室機能曲線として右室拡張終末期容量(RVEDV)と右室一拍仕事量(RVSW)関係,右室圧容量関係として右室拡張終末期圧(RVEDP)とRVEDV関係である.熱希釈法より求めた正常例のRVEDVは諸家の成績と一致した.肺高血圧による右室afterloadの条件を同じくするため,正常,および左室障害のほとんどないisolated MSの描く右室機能曲線,右室圧容量関係をcontrolとし,他群と比較した.その結果, MS+LVHの4例, LVEF高度低下MIの4例において,右室機能曲線の低下(RVEDV増大, RVSW低下),右室圧容量関係ではRVEDP不変, RVEDV増大がみられた. COCM群においては, LVEF高度低下群ほどRVSWに比してRVEDVは逆に減少し,一方RVEDPは上昇した.結論として,左室はその対側心たる右室へ,肺高血圧を介するbackward effectとは別に二つの様式で影響を与えると思われる.すなわち, MS+LVHやMIでみられる如く, RVEDPをあまり上昇させることなくRVEDVを増大させる様式.またCOCMでみられたRVEDVの増大を伴わずRVEDPを上昇させる様式.しかし後者は病理学的変化が右室壁へ及んでいるための可能性もあると思われた.
  • 宮坂 信之, 吉沢 靖之, 原 義人, 西戸 孝昭, 奥田 正治
    1978 年 67 巻 2 号 p. 152-159
    発行日: 1978/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群(SjS)にみられる肺病変について自験61症例(sicca alone 39例, overlap 22例)を観察対象として臨床的検討を行なつた.胸部X線像上,異常陰影は25例, 41% (sicca alone l2例, overlap 13例)に認められた.これら25例の呼吸器症状は,労作時呼吸困難が5例,乾性咳漱が3例にみられ,また胸部聴診所見では,ヴェルクロ・ラ音が7例,湿性ラ音が1例に認められた.胸部異常陰影の性状は,粒状影および粒・網状影がそれぞれ32%を占め,次いで無気肺12%,スリガラス状影および斑状影おのおの8%,網状影および肺野血管影の減少おのおの4%であり,これら異常陰影の大部分は中~下肺野に認められた.呼吸機能では拘束型障害が18例中4例(22%)に認められ,動脈血ガス分析では低酸素血症,低炭酸ガス血症がそれぞれ16例中7例(44%)に認められ,いずれもびまん性の粒・網状影を呈した症例のみであつた.気管支鏡検査は4例に施行, 3例に気管支粘膜の乾燥化を認め,さらに経気管支的肺生検組織(3例)では間質のリンパ球浸潤および線維化が認められた.以上の観察成績より, SjSの肺病変には, 1)無気肺あるいは斑状影を呈し,呼吸機能障害を伴わない限局性,実質性の気管支,肺病変と, 2)粒・網状影ないしスリガラス状影を呈し,かつ拘束性呼吸機能障害と低酸素血症,低炭酸ガス血症を伴うびまん性,間質性肺病変の二つの病型を指摘しうるのではなかろうかと推察された.
  • 症例報告と文献的考察
    加納 正, 仁木 敬倫, 村田 安雄, 太田 賢
    1978 年 67 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 1978/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Cryo-Bence Jones (BJ)蛋白の尿中排泄を認めたBJ型骨髄腫例を経験した.症例を概説し,文献的考察を加えた.症例: 59才,女性.左前腕打撲時の左尺骨の病的骨折により,骨髄腫が疑われ,尿中BJ蛋白と骨髄中の骨髄腫細胞の証明により骨髄腫と診断された. Hb 6.8g/dl,白血球数6,000,血沈(平均)69mm,熱試験でBJ蛋白(〓), BUN 18mg/dl, WaR(-),血清電解質, GOT, GPT, LDH, alk-P-ase正常.総蛋白7.5g/dl, γ-globulin 0.7g/dl,骨髄中骨髄腫細胞25%.濃縮尿の電気泳動分析でγ域にBJ(κ)蛋白が証明された.濃縮尿(蛋白濃度3g/dl)は4°Cでゲル化し, 37°Cで溶解した. CryoglobulinにはBJ蛋白以外の蛋白は関係していない. Cryo-BJ蛋白について次のことが明らかにされた. (1) BJ蛋白はdimer型である. (2) 0.1M 2MEあるいは4M尿素処理で寒冷沈降性は消失する. (3)pH5以下あるいはpH 7.5以上で寒冷沈降性は減弱する. (4)塩濃度は低く,蛋白濃度が高いほど寒冷沈降し易い. (5)熱試験後あるいは加熱と冷却を反復すると寒冷沈降性は減弱する.現在まで,本例を含めてcryo-BJ蛋白を伴う骨髄腫は10例に達する.次のような特徴が指摘される. (1)全例が骨髄腫で,かつBJ型が大部分で,ほかに単クローン性免疫グロブリンが証明されたのは2例である. (2) Cryo-BJ蛋白はすべてdimer型である. (3)全例にcryo-BJ蛋白の存在に由来する臨床症状は認められていない.
  • 柏崎 禎夫, 山田 伸夫, 島 悟, 岡田 純, 古明地 智, 保科 博登, 田崎 義昭
    1978 年 67 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 1978/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    18才,女性. 17才時レイノー現象で発症.その後,労作時息切れ,動悸が出現し来院.理学的に第2肋間胸骨左縁で第2音の亢進と漸減性拡張期雑音を聴取し,爪甲周囲皮膚の小硬塞症状およびsclerodactyliaを認め,検査で白血球減少,血小板減少,高ϒ-グロブリン血症,抗核抗体およびリンホサイトトキシンの陽性を示した.心電図で右軸偏位,右室肥大とstrain patternを,胸部X線像で肺動脈の著明な突出を,右心カテーテル検査で肺動脈圧の上昇(85/40平均52mmHg)を証明した.肺高血圧症を来たす基礎疾患が見出されず,いずれの膠原病の診断基準にも合致しないことから,自己免疫疾患的要素を多く有する原発性肺高血圧症(PPH)と診断した.同時に,自験例および本邦報告例の検討から,レイノー現象を伴つたPPHは種々の肺外症状と多彩な血清学的異常所見を合せ持つことを明らかにし,従来のPPHの中からレイノー現象および血清学的異常所見を有する症例群を一疾患単位として独立させる臨床的有用性と妥当性について述べ,新症候群の成立の可能性を示唆した.
  • 藤田 信一, 杉山 達郎, 舟田 久, 森 孝夫, 原田 実根, 服部 絢一
    1978 年 67 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 1978/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    溶連菌感染症に続発したと考えられる結節性紅斑(EN)の2症例を経験した.両症例ともENは上気道炎に罹患後1~2週間に出現し,紅斑の出現とほぼ一致してantistreptolysin O値とantistreptokinase値の上昇がみられた.皮下結節の組織学的検索でもENの定型的組織像を呈していた.症例2では入院時に行なつた咽頭培養にてA群溶連菌8型が純培養状に分離された. PHAとstreptolysin O (SLO)の添加によるリンパ球幼若化反応を3H-thymidineのとりこみで,健康人を対照にして検討したところ, PHAによるstimulation index (SI)はENでは健康人よりも約50%低下していたが, SLOの場合にはEN症例で健康人よりもSIで1.5~3倍と高値を示したため,溶連菌感染症に続発したEN症例では, SLOに対する特異的細胞性免疫が成立していることが予想された.本症の治療はペニシリン剤と抗炎鎮痛剤の併用が効果的で,とくに重症例ではステロイドホルモンの投与が著効を呈すると考えられた.
  • 与芝 真, 板橋 明, 松本 俊夫, 山口 徹, 鈴木 秀郎, 織田 敏次
    1978 年 67 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 1978/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    中枢神経系に多発するhemangioblastomaを主病変とする疾患は, 1926年Lindauにより一つの疾患単位としてまとめられている.この疾患は濃厚な遺伝性が認められているが,本邦ではその家系は現在迄6家系報告されているに過ぎない.われわれが経験したLindau病は父と長男の2症例であり,家系調査より優性遣伝と考えられる.長男例は家族歴,右眼底血管腫,脊髄hemangioblastomaと考えられる血管像,右腎の腫瘍,父親例は両側眼底血管腫,組織学的に確認された小脳hemangioblastomaを診断根拠としてLindau病と診断した. Lindau病の歴史,疾患概念からは遺伝性,中枢神経のhemangioblastoma,内臓病変が本疾患の基本となるが,臨床診断基準は中枢神経のhemangioblastomaの存在または遺伝性を重視する考え方に分かれるがいずれも広義に解釈されており,われわれの診断根拠は確実なものと考えられた.また,長男例は脊髄hemangioblastomaと考えられる血管像の認められた症例であるが,臨床所見で第IX胸髄以下の知覚障害,錐体路症状のほか小脳症状が見られており,椎骨動脈撮影では後頭蓋窩に異常所見は認められなかつたが,今後の経過で再検討の必要があると考えられる
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