持続的な高血圧症を有する33才,男子で,レヂチン試験が陽性で,グルカゴン試験では高血圧発作が誘発されるとともに,同時に測定した尿中カテコラミンも増量がみられた.尿中カテコラミン測定の結果では,特にノルアドレナリンの増加が著しかつた.これらの結果から褐色細胞腫と診断した.後腹膜気腹により右腎上内方に鵞卵大の腫瘤が認められた.手術の結果,腫瘍は副腎外のもので,大きさは6.5×8.5×4.0cm,重さ115gであつた.腫瘍1gあたりのアドレナリン,ノルアドレナリン含有量はそれぞれ159γ, 3,200γであつた.電顕組織では,ノルアドレナリンと考えられる直径2,000~3,000αで,電子密度の高いcoreと一層のunit membraneをもつ小顆粒が多数認められたが,アドレナリン顆粒はほとんど認められなかつた,血漿HGHとACTHの早朝安静時の値は正常であつた. HGHはインスリン低血糖に対し,正常上界を越える過剰な反応を示したが, ACTHのインスリンに対する反応は正常上界であつた. α-交感神経遮断剤(phentolamine)20mgを2時間にわたり点滴しながらインスリン低血糖に対する血漿HGHとACTHの反応をみると,両者ともにはつきり抑制されるのがみられた. HGH分泌に及ぼすα-受容体の刺激効果は既に報告されているが, ACTH分泌にかんしても同様の機序が示唆された.
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