副腎皮質ホルモンが赤血球系に関与している事は,諸家のほゞ一致する所であるが,白血球系に関してはなお定説をみるに至らない.私共は副腎皮質ホルモンと血液像特に白血球系につき,検討を加えた.ウイスター系ラットの両側副腎を一挙に摘出し, Comp. F, DOCA, Testosterone, Estradiol, Thyrasine投与による血液像の変動を追究した.副腎摘出により惹起される大赤血球性貧血はComp. F 5mg又はDOCA 2.5mgの投与で貧血も赤血球直径の増大も阻止され, Testosterone 1mg, Thyrasine 1mgの投与では赤血球数の回復にもかゝわらず,直径は減少傾向を示した.骨髄像は前二者ではほゞ正常,後二者では過形成を示した. Estradiolでは貧血をかえつて助長し,骨髄像も低形成であつた.副腎摘出ラットにComp. F, DOCAの投與により,前者では好中球の増加,後者では減少が認められた. Nitrominとの併用により, DOCAでは好中球の減少は更に顕著となるに反して, Comp. Fでは依然好中球の著明な増多が認められた.この現象の場を,骨髄像並びに白血球の試験管内放置実驗より,骨髄並びに末梢血液の両者に求める事が出来る.一方Nitromin投与後の副腎摘出は好中球の囘復を著明に遅延せしめる.又副腎摘出ラットはTestosterone, Thyrasineの投興では好中球の増加を来たすが, Estradiolではその減少がみられた.これらの事実は副腎並びにその他のホルモンが諸血球系に対し,重要な影響を及ぼずすことを示すものである.
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