日本内科学会雑誌
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107 巻, 8 号
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内科学会NEWS
目次
特集 神経・筋疾患に対する治療の進歩
Editorial
トピックス
  • 桑原 聡
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1457-1461
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    Guillain-Barré症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)は先行感染因子と末梢神経成分の分子相同性により発症し,補体の活性化により神経障害が惹起されることが証明されつつある.現在,経静脈的免疫グロブリン療法(IVIG)及び血漿浄化療法が行われているが,近年,重症例を救済することを目的に,補体抑制療法(抗C5モノクローナル抗体(エクリズマブ)の開発が進展し,第II相臨床試験が終了した段階にある.Crow・深瀬(POEMS(P:polyneuropathy/多発神経炎,O:organomegaly/臓器腫大,E:endocrinopathy/内分泌障害,M:M-protein/M蛋白,S:skin changes/皮膚症状))症候群は,形質細胞増殖に伴う血管内皮増殖因子を中心とした高サイトカイン血症により,多発性ニューロパチーと多臓器病変を来たす重篤な全身性疾患であるが,2000年以降に形質細胞を標的とした自己末梢血幹細胞移植,免疫調節薬(サリドマイド,レナリドミド)が導入されて以来,治療は大きく進歩し,大幅な生命・機能予後の改善に至っている.本稿では,これらの2疾患を中心に免疫性末梢神経障害の治療の進歩について概説する.

  • 井島 大輔, 西山 和利
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1462-1469
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    血栓溶解療法や血栓回収療法といった脳梗塞急性期治療の進歩は著しく,脳梗塞が治る時代に突入している.また,脳梗塞は再発率が高い疾患であり,いかに再発を抑えるかということも重要な課題である.本稿では,脳梗塞の病型や病型別の急性期治療・二次予防,急性期における血栓溶解療法,血管内治療,ならびに,近年注目されているembolic stroke of undetermined source(ESUS)について概説する.

  • 中島 一郎
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1470-1476
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)の診断においては鑑別疾患の除外が重要であり,自己抗体が関与する脱髄疾患等を注意深く鑑別する必要がある.早期診断にMcDonald基準は有用であり,MRI(magnetic resonance imaging)や髄液所見を参考に早期の診断を心がける必要がある.急性期にはステロイドパルス療法が有用であり,寛解期には長期予後を考慮し,早期から疾患修飾薬を使用する.本邦でも使用可能な疾患修飾薬が年々増えてきており,それぞれの薬剤の特性を理解したうえで選択する.

  • 熱田 直樹, 橋詰 淳, 祖父江 元, 勝野 雅央
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1477-1485
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    運動ニューロン疾患は,随意運動系を支配する上位運動ニューロンと下位運動ニューロンのいずれか,もしくは両者が変性・脱落することによって,進行性の筋力低下や筋萎縮を呈する難治性疾患である.成人発症の運動ニューロン疾患である筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy:SBMA)の分子メカニズムに基づいた治療法開発が進んでおり,ALSに対してエダラボン,SBMAに対してリュープロレリンがそれぞれ進行抑制薬として薬事承認された.

  • 竹島 多賀夫
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1486-1493
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    片頭痛(migraine)の治療薬には,急性期治療薬(非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs),トリプタン),予防薬(バルプロ酸,プロプラノロール,ロメリジン等)があり,「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」(日本神経学会・他,2013年)に詳細が掲載されている.抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)抗体,抗CGRP受容体抗体の優れた片頭痛予防効果が報告され,開発治験が進行中である.非侵襲的刺激装置によるニューロモデュレーション(neuromodulation)が注目されており,経皮眼窩上三叉神経電気刺激装置(Cefaly, Cefaly Technology社,Belgium),非侵襲的迷走神経刺激装置(noninvasive vagus nerve stimulation:nVNS),経頭蓋磁気刺激装置(transcranial magnetic stimulation:TMS)等の研究が進められている.

  • 齋藤 加代子
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1494-1500
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    2016年9月,FDA(Food and Drug Administration)がDuchenne型筋ジストロフィーに対し,エクソンスキップを機序とする核酸医薬品EXONDYS 51TM(eteplirsen)を迅速承認した.脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)では,2016年12月にFDAがエクソンインクルージョンを機序とするSPINRAZATM(nusinersen)を承認し,2017年7月にEMA(European Medicines Agency)と医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:PMDA)にて承認された.遺伝性神経・筋疾患,特にSMAにおいて,核酸医薬品による治療法は臨床実装され,早期診断・治療の時代が始まった.

  • 西野 一三
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1501-1506
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    Pompe病,全身性原発性カルニチン欠損症(systemic primary carnitine deficiency:SPCD),多重アシル酸脱水素酵素欠損症(multiple acyl-CoA dehydrogenase deficiency:MADD),GNEミオパチーについて概説する.前3者は治療法のある代謝性筋疾患である.GNEミオパチーに対しては,現在,シアル酸補充療法の臨床試験が行われている.これらの疾患の頻度は必ずしも高くないが,たとえ稀であっても,治療可能な疾患を見逃してはならないことは言うまでもない.特にPompe病では,治療開始時期が予後を大きく決定付ける因子であることから,早期診断が重要である.

  • 中島 孝
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1507-1513
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    HAL(Hybrid Assistive Limb)医療用下肢タイプ(サイバニクス治療機器)は,希少神経・筋8疾患による歩行障害に対する医師主導治験の結果,医療機器承認(2015年)され,歩行運動処置(ロボットスーツによるもの)として診療報酬化された.神経可塑性を促進する運動学習メカニズムを作用機序と考え,他の疾患群に対しても順に検証試験を行うことで普及可能である.薬剤,核酸医薬,抗体医薬ならびに幹細胞との複合療法により,相加・相乗効果が期待される.

MCQ
シリーズ:地域医療を実践する内科医とは
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 吉原 一文, 須藤 信行
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1558-1565
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    身体症状症とは,さまざまな苦痛を伴う身体症状が長期に持続する疾患である.身体症状症の要因には,遺伝的要因や環境的要因(ストレス等),患者側の要因(パーソナリティ特性や認知的要因)があり,生物学的要因も示唆されている.診断には,「精神疾患の診断・統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)-5)(アメリカ精神医学会,2014年)の診断基準を用いて診断する.身体症状症には不安や抑うつが併存している割合が高い.身体症状症の治療には,医師との信頼関係が重要である.また,病因・病態の推定には心理社会的背景の聴取が必要になる.病因・病態に応じて治療を行うため,治療法は多岐にわたり,効果も一様ではない.身体症状症に効果のある薬物療法には抗うつ薬があり,特に疼痛症状に対する効果が認められる.心理療法に関しては,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT),リラクセーション法,ペーシング,段階的運動療法等の有効性が示されている.その他にも,必要に応じて家族面接や心理教育を行う場合がある.

  • 石川 隆之
    2018 年 107 巻 8 号 p. 1566-1572
    発行日: 2018/08/10
    公開日: 2019/08/10
    ジャーナル フリー

    骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)は無効造血と白血病移行を主徴とする造血器悪性腫瘍で,白血病移行の危険により,低悪性度群と高悪性度群に分類される.両者の分類には国際予後予測スコアリングシステム(International Prognostic Scoring System:IPSS)が用いられてきたが,最近,より精度の高いものに改訂された.低リスク群に対しては,造血回復を目指してダルベポエチンやレナリドミドが,高リスク群に対して白血病移行遅延のためアザシチジン(azacitidine:AZA)が導入されたが,奏効率や生存期間延長効果は十分といえない.同種造血幹細胞移植は本疾患に治癒をもたらし得るが,治療関連毒性が高いのみならず,最近,治療効果を得難い患者群が示唆された.近年,MDSの発症・進展に関する分子生物学的機序の解析が進み,特定の遺伝子変異が注目されている.これらの遺伝子変異の情報を用いることで,MDSの診断・予後予測の精度が高まり,変異遺伝子を標的とした新規治療法の開発にもつながることが期待される.

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