近位尿細管の障害によつて腎性クル病,小体症をきたし,蛋白尿,腎性糖尿,アミノ酸尿,低燐血症などを認めることがあり,これはFanconi症候群,あるいはDebré- de Toni-Fancon三症候群と称されており,劣性遺伝によるとされている.しかしその後,後天的原因によるものもFanconi症候群と称されるようになつた.本例は臨床的に本症候群と診断されたが,剖検によつて両側腎の低形成が認められ,その低形成が本症候群の原因と考えられた特異の例であり,遺伝によるものとは認められなかつた.症例は男子で,血族結婚(一).小学1年の時クラスで一番小さかつた.小学6年の時X脚に気付く.貧血で17才の時初診,蛋白尿,腎性糖尿が認められた.以後次第に貧血が進行し,多飲,多尿,アミノ酸尿,血清alkaline-phosphataseの上昇が認められた.腎障害は漸次進行し,尿毒症に気管支炎,出血性素因を合併し, 20才で死亡した.
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