日本内科学会雑誌
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59 巻, 6 号
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  • 野矢 久美子
    1970 年59 巻6 号 p. 491-499
    発行日: 1970/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Inv vivoで肺血管外水分量(pulmonary extravascular water volume, PEV)を測定することは, 1954年Chinard & Ennsにより示唆されて以来,基礎的検討がかさねられ臨床への応用が可能となつた.本論文は, Ramseyらの方法に準じて後天性心疾患におけるPEVを測定し,肺循環諸量,臨床経過および血液ガス値との関連について検討したものである.測定時の肺血管内圧とPEVとは,粗な正相関(r=0.48, P<0.02)を示すにすぎず,むしろPEVは左心不全の既往と関連があるという結果をえた.すなわち測定時の肺血管内圧は同じレベルにありながら,左心不全既往のある例は,既往のない例に比べてPEVは著明な増加を示した. PEVとPao2は有意の逆相関関係(r=-0.77, P<0.001)にあり, PEVの増加が慢性後天性心疾患における動脈血低酸素血症の成因に重要な意味をもつと考える.
  • 第1編 Kanamycinと0.4% sodium alginate液との併用による腎毒性増強について
    武田 元
    1970 年59 巻6 号 p. 500-511
    発行日: 1970/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    わたくしどもはkanamycinと血漿増量剤の併用によると思われる急性腎不全の臨床例を経験したので,果して両薬物の併用により腎障害が増強されるか否かを確かめるために,家兎を用いて実験を行なつた. kanamycin (KM)と血漿増量剤の一つである0.4% sodium alginate液のおのおのの単独投与では,主に近位尿細管の障害を認めたが,乏尿や血中尿素窒素の上昇は生じなかつた.しかし,それらの併用により,乏尿や血中尿素窒素の上昇を来たし,組織学的にも尿細管の障害が増強されることが明らかとなつた.その障害の増強はKMと0.4% sodium alginate液とによるおのおのの障害の単なる重なり合いであろうと考えられ,乏尿の成立機序は尿細管腔の閉塞によるものではなくて,尿細管の細胞傷害の増強により,何らかの腎内循環の変動を来たしたためと考えられた.以上のことより,臨床的にKMとsodium alginate液との併用時に発生した急性腎不全は,両薬物の併用による腎障害増強の結果であることが明らかにされた.
  • 第1編 諸種濃度のプラスミンによるヒトフィブリノーゲンの分解過程について
    品田 章二
    1970 年59 巻6 号 p. 512-520
    発行日: 1970/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    目的:微量~大量のプラスミン(PL)がフィブリノーゲン(Fbg)に作用したときの分解過程を経時的に追求する.方法:ヒトFbg 9容に各濃度のウロキナーゼ活性化PL (カゼイン単位/ml, u) 1容を加え37°Cにincubateし,経時的にその一部をとり出してフィブリン平板溶解能, serial thrombin time (STT),アンチトロンビン活性, Fbg量, hemagglutination inhibition titer (HIT), fibrin polymerizationおよび殿粉ゲル電気泳動にてその分解過程を検討した.結果: (1)フィブリン平板溶解能をもたない微量のPL (0, 0.05u)を加えると最初にSTT, HITが変化し,トロンビンで凝塊形成をみない時期にアンチトロンビン活性, polymerization inhibitorの出現,泳動像の変化をみた. (2)大量のPL(0.5, 5, 50u)ではincubate短時間でSTTはno clotとなり,これとほぼ平行してHITの急増,電泳像の変化, 2相性のアンチトロンビン(early FDP, late FDP), polymerization inhibitorの出現を認めた.結論: STTの測定によりPLによるFbg分解過程の初期相を把握できた.
  • 三戸 鉄雄
    1970 年59 巻6 号 p. 521-528
    発行日: 1970/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    吸収不良症候群のセロトニン代謝については,種々の報告がある.一方,ヒスタミンは消化管の運動,分泌,吸収に関与すると考えられている.しかし,その機序はまだ十分に解明されていない.そこで著者は成犬40頭を用い,実験的に広範囲に小腸を切除して吸収不良状態をつくり,セロトニンならびにヒスタミン代謝の変動,その腸管運動への影響,および両者の関係等を検討した.すなわち,切除前および切除1カ月後の腸間膜静脈血,小腸および大腸粘膜内のセロトニンとヒスタミンをFarrand蛍光分光々度計を用いて測定した.その結果,実験的小腸切除による吸収不良状態では,腸間膜静脈血セロトニン,ヒスタミンの産生は障害されないが,粘膜内セロトニン,ヒスタミンには代謝異常がおこること,およびこの両アミンが腸管運動に強く関与していることを観察した.
  • 都島 基夫, 黒田 重臣, 荒井 寿朗, 松木 駿, 浅野 誠一
    1970 年59 巻6 号 p. 529-532
    発行日: 1970/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    臨床症状,検査成績からBanti症候群と診断したが,触診上腹部腫瘤を脾と決定するのに迷わされた症例を経験した.症例は35才の女性.黄疸,腹水を主訴とし入院,左上腹部腫瘤を触れ,その最下部は〓下に達しないにもかかわらず正中線より右におよんでいること,左肋骨弓下に挿手可能であること,バロットマンがあること,切痕を触れないことなどの点で従来成書に記載されている脾腫の特徴と一致しなかつたが,開腹により巨大脾腫を確認摘脾した,このような触診上特殊な位置をとる脾腫については,如何なる原因で生じたかは不明であるが,例外的な触診所見を示す点で興味深く思われたので報告する.
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