日本内科学会雑誌
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104 巻, 7 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
内科学会NEWS
目次
特集 貧血:基礎知識から治療の最前線まで
Editorial
トピックス
  • 川端 浩, 高折 晃史
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1367-1374
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    赤血球は,ヘモグロビンに結合した酸素を肺から末梢組織まで運搬する.赤血球が少なすぎると貧血を来たし,多すぎると血栓症のリスクが増大する.このため,体内にはこれを適切な数に調節する仕組みが存在する.例えば,貧血状態では,腎臓における低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor:HIF)の発現,エリスロポエチン(erythropoietin:EPO)産生,赤芽球前駆細胞におけるエリスロポエチン受容体からのシグナルを介して,赤血球造血が刺激される.この調節には多くの分子が関わっており,これらの異常は貧血や多血症を引き起こす.
  • 成田 美和子
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1375-1382
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    貧血は臨床的に遭遇する最も多い病態の1つである.重篤な造血器疾患の可能性もあるため,他系統の血球減少を伴う場合は速やかな診断が必要であるが,頻度的には他の病態に由来する場合が圧倒的に高い.ここでは一般検査項目から見た貧血の診断方法についてまとめた.
  • 張替 秀郎
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1383-1388
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    鉄は酸素運搬に必須の元素である.体内で利用される鉄のほとんどは,老廃化しマクロファージで処理された赤血球由来の再利用鉄であり,少量の鉄が食事から供給される.鉄関連貧血で最も頻度が高い貧血は鉄欠乏性貧血であり,その主たる原因は月経,消化管出血などの鉄喪失,成長や妊娠による需要の増大である.最近,これらの原因が同定されない鉄欠乏性貧血の発症にHelicobacter pyloriが関与しているとの知見が得られている.
  • 臼杵 憲祐
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1389-1396
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    溶血性貧血は,網赤血球の増加,ビリルビン高値(間接ビリルビン優位),LDH高値,ハプトグロビンの低値などから診断する.溶血性貧血の症例の半数はCoombs試験陽性を呈する温式自己免疫性溶血性貧血であり,副腎皮質ホルモン療法が有効である.1/4は発作性夜間ヘモグロビン尿症である.約1割を占める遺伝性球状赤血球症では,小型球状赤血球とMCHC高値が特徴であり,EMA結合能測定試験が陽性所見を呈する.
  • 植田 康敬, 西村 純一
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1397-1404
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    発作性夜間血色素尿症は,後天的なPIGA遺伝子変異を持つ造血幹細胞クローンの拡大によって引き起こされる,造血幹細胞疾患である.血管内溶血,血栓症,造血不全を3主徴とし,根治には造血幹細胞移植が必要だが,明確な適応基準がない.多くの症例で対症療法が中心となるが,エクリズマブの登場により血管内溶血が劇的に抑制され,造血不全を除く諸症状も改善され,さらに生命予後の改善も期待されている.
  • 廣川 誠, 藤島 直仁, 面川 歩, 植木 重治
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1405-1413
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    再生不良性貧血および赤芽球癆は,ともに造血幹細胞・前駆細胞の量的減少により発症する骨髄不全症であり,前者は貧血,血小板減少,好中球減少のうち2つ以上の血球減少を,後者は貧血のみを呈する.その原因は多様であり,病因を特定できない特発性と,薬剤投与やウイルス感染症,自己免疫疾患,妊娠などに伴う続発性がある.特発性再生不良性貧血および基礎疾患の治療に反応しない慢性赤芽球癆には免疫抑制療法が行われる.
  • 鶴屋 和彦, 平方 秀樹
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1414-1424
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    慢性腎臓病患者の貧血は腎性貧血以外にも様々な要因で生じ,赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis-stimulating agent:ESA)治療開始前に原因精査を行うことが重要である.2015年版ガイドラインでは,目標ヘモグロビン値として,血液透析患者で10~12 g/dl,保存期および腹膜透析患者で11~13 g/dlが推奨された.鉄剤については,ESA投与前の患者では血清フェリチン濃度50 ng/ml未満,ESA投与中の患者ではトランスフェリン飽和度(transferrin saturation:TSAT)20%未満かつ血清フェリチン濃度100 ng/ml未満で投与が推奨され,300 ng/ml以上で休薬するよう推奨されている.
  • 宮﨑 泰司
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1425-1431
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)は造血幹細胞の異常に起因するクローン性疾患で,無効造血による血球減少と白血病化を特徴として多彩な病態を示す.様々なゲノム,エピゲノム異常が同定されており,高齢者に多いため,本邦でも患者数増加が想定されている.根治療法は同種造血幹細胞移植だが,一部の低リスク例に対してダルベポエチンが,5q―症候群にはレナリドミドが有効である.移植が実施されない高リスク例にはアザシチジンが投与される.
座談会
MCQ
特別連載 新しい内科専門医制度の実施にあたって
今月の症例
  • 平澤 康孝, 河野 千代子, 山田 嘉仁, 前村 啓太, 竹島 英之, 槇田 広佑, 山口 陽子, 一色 琢磨, 鈴木 未佳, 山口 哲生
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1457-1459
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    症例1は,78歳男性.インフルエンザワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにて両下葉背側に多発浸潤影を認め,同ワクチンによる薬剤性肺障害が疑われた.集学的治療を行うも,第32病日に死亡.症例2は,68歳男性.特発性肺線維症にて無治療経過観察中であったが,同ワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにてすりガラス影の出現を認め,接種契機の間質性肺炎急性増悪が疑われた.治療を行うも,最終的にニューモシスチス肺炎にて死亡.インフルエンザワクチン接種による肺障害の可能性に注意を要すると考えられた.
  • 行本 敦, 橋本 悠, 花山 雅一, 小幡 善保, 谷平 哲哉, 清家 裕貴, 岡本 傳男, 市川 幹郎, 寺岡 正人
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1460-1463
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.呼吸困難感を主訴に来院した.来院時,舌の著明な腫大がみられた.高血圧に対し,エナラプリルマレイン酸を内服していた.同薬による血管性浮腫を疑い,同薬を中止し,入院とした.喉頭の浮腫は軽度であったため,7 Fr経鼻エアウェイを挿入し,気管切開は行わず,経過観察とした.72時間後には舌の腫大は改善し,発語も明瞭であった.同薬を中止し,経過をみているが,再燃はみられていない.
  • 岡田 知久, 矢部 勇人, 安藤 利奈, 岩城 寛尚, 西川 典子, 永井 将弘, 勢井 洋史, 西田 直哉, 野元 正弘
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1464-1469
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    通常,破傷風は開口障害や後頸部痛で発症するが,嚥下障害で初発することもあり,診断が遅れる要因となる.当院でも嚥下障害で初発した破傷風を経験したため,報告する.症例は58歳,女性.2014年6月初旬,嚥下障害を自覚し,近医を受診するも診断に至らず.6月中旬に開口障害が出現し,当院へ入院した.入院時には後頸部痛もあり.詳細な聴取で軽微な外傷の既往も確認できた.破傷風を疑い加療を開始したところ,症状は1カ月程度で改善し,退院できた.
医学と医療の最前線
  • 樋口 雄二郎, 髙嶋 博
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1470-1478
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    遺伝性ニューロパチーは,運動・感覚または自律神経障害を呈する疾患の総称であり,臨床的にも遺伝的にも非常に多様である.これまでに70以上の原因遺伝子が同定されており,分子病態は細胞内の様々な小器官に複雑に関与していることがわかっている.遺伝性ニューロパチーの遺伝子診断は次世代ゲノムシークエンサー(next-generation sequencer:NGS)を用いたターゲットリシークエンスやエクソーム解析が非常に有用であり,診断確定だけでなく患者の予後予測や治療法の確立につながる.また,分子病態ごとに様々な治療法が開発されており,モデル動物では有効性が確認されている薬剤もあり,なかでもクルクミン治療は我が国でヒトへの臨床試験が計画されている.
  • 鈴木(堀田) 眞理
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1479-1485
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    神経性やせ症は若年女性のありふれた疾患になった.患者は回避という心理機転のために体重増加を容易には受け入れない.しかし,救命,合併症・後遺症の予防,飢餓症候群を改善して精神療法に導入するためにある程度の体重増加が急がれる.栄養療法を導入するには,心理教育的アプローチで個々の患者にとって現実的でインパクトのある治療動機を探して強化することに尽きる.栄養バランスの良い規則正しい食事摂取の達成は容易ではなく,特有の食のこだわりを容認しつつ必要エネルギーの確保を目指す.低血糖昏睡,偽性Bartter症候群による低K血症,再栄養症候群,ビタミンDやK不足など留意すべきである.グレリンは重篤な副作用なしに摂食量を増加させ,複数回の入院を繰り返さざるをえない慢性遷延化した低体重患者には在宅中心静脈栄養法を導入して生活の質を上げることが可能である.
  • 向山 政志
    2015 年 104 巻 7 号 p. 1486-1494
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    腎臓は内分泌臓器の1つであり,また種々のホルモンの標的臓器として極めて重要であると同時に,多くの内分泌機能調節の鍵を握っている.したがって,腎臓の内分泌機能の異常,あるいはホルモン受容・情報伝達機構の異常に伴い,様々な疾患が生じる.一方,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に代表される腎障害の際には,他臓器におけるホルモンの産生・分泌・代謝・情報伝達のあらゆる面においてしばしば異常がもたらされる.これらの病態を理解することは,内分泌代謝学の面からも腎臓病学の面からもともに重要である.本稿では,腎疾患と内分泌異常について,代表的な疾患を中心に概説する.
専門医部会
第18回四国支部専門医部会教育セミナーまとめ
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