日本内科学会雑誌
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100 巻, 1 号
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内科学会NEWS
日本内科学会雑誌第100巻記念の座談会を企画して
第100巻記念座談会
特集 小腸疾患:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.診断法の進歩
  • 松本 主之, 飯田 三雄, 頼岡 誠
    2011 年 100 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    21世紀を迎えてカプセル内視鏡やバルーン内視鏡を用いた小腸の内視鏡観察が容易となり,小腸疾患の診断と治療のアルゴリズムに変化が起こっている.しかし,小腸X線検査は小腸病変の有無を確認する最も簡便な検査法であり,粗大病変や狭窄病変の存在診断,あるいは炎症性疾患の経過観察に必須な検査法である.基本は充満像と丹念な圧迫法の併用による病変の同定であり,二重造影像で微細な病変が描出可能となる.今後も,小腸内視鏡検査に先行する検査法として重要な意義がある.
  • 細江 直樹, 緒方 晴彦
    2011 年 100 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    原因不明消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding)に対するカプセル内視鏡の診断能は,プッシュ式小腸内視鏡,小腸X線造影検査,CTアンギオグラフィーと比較し優れていると報告されている.ダブルバルーン小腸内視鏡との比較において診断率はほぼ同等と報告されているものが多い.保険適用ではないが,Crohn病に対するカプセル内視鏡の有用性も海外から報告されている.
  • 喜多 宏人
    2011 年 100 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    バルーン内視鏡の到来により,深部小腸への内視鏡挿入が可能となり,小腸疾患に対する診断・治療戦略は大きく変化した.バルーン内視鏡は経口的にも経肛門的にも挿入できる.内視鏡をコントロールしながら病変部を観察できるので,生検,内視鏡的止血術,内視鏡的拡張術,ステント留置,ポリペクトミー,EMR等ができるようになった.バルーン内視鏡はカプセル内視鏡と共に小腸内視鏡のスタンダードであり,相補的な役割を果たしている.
  • 大塚 和朗, 工藤 進英
    2011 年 100 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    CT,MRIは低侵襲性,客観性,さらに腸管全体から管外の情報も得られるため,小腸検索の重要な手段である.検出器を多列化したmultidetector-row CTは良好な空間分解能が得られるため,得られたCT値を元に画像を作成するCT enterography/enteroclysisが臨床応用されてきている.また,MRIは,撮像時間が短縮され,消化管も検査対象となってきており,MR enterography/enteroclysisが施行されている.内視鏡検査とは相補的な関係にあり,画像診断法の特性を踏まえて,適切な診断戦略をたてる必要がある.
II.診療の進歩
  • 藤森 俊二, 高橋 陽子, 江原 彰仁, 小林 剛, 瀬尾 継彦, 三井 啓吾, 米澤 真興, 田中 周, 辰口 篤志, 坂本 長逸
    2011 年 100 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    原因不明消化管出血(OGIB)は,原因検索追求の程度・再発性の有無により多種の消化管病変を含む.本邦では上下部消化管内視鏡を施行して原因が不明な消化管出血をここに含むことができるが,出血源が上下部内視鏡で検索が困難な小腸に存在するとは限らない.小腸内視鏡の進歩により50%近いOGIBの出血源を発見・診断・治療可能になった.同時に非ステロイド性抗炎症薬服用OGIB患者の出血源が高率に小腸潰瘍性病変であることが明らかとなり対策が求められている.
  • 渡辺 憲治, 鎌田 紀子, 十河 光栄, 亀田 夏彦, 谷川 徹也, 山上 博一, 渡辺 俊雄, 富永 和作, 藤原 靖弘, 荒川 哲男
    2011 年 100 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    顕性出血においては,まず小腸出血であることを診断するため,出血症状から可及的速やかにカプセル内視鏡検査を行うことが肝要である.また止血処置を兼ねてバルーン内視鏡の経口的挿入も有用である.しかし,こうした対処にて診断がつかない症例には,次回出血症状時の緊急カプセル内視鏡の他,腹部造影CTやシンチなども行うべきである.こうした他の検査法の特徴も理解したうえで,症例の病態,病状,経過に合わせた方針を立てる必要がある.
  • 松岡 克善, 日比 紀文
    2011 年 100 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    小腸のウイルス感染症としては,急性胃腸炎が最も臨床的に多い疾患である.ウイルス性急性胃腸炎は集団感染も引き起こすため,疫学的にも重要である.ウイルス性胃腸炎の原因としては,ロタウイルスとノロウイルスがほとんどを占めるが,その他にも腸管アデノウイルス,アストロウイルスなども急性胃腸炎を引き起こす.また,近年免疫抑制状態の患者におけるサイトメガロウイルスによる腸炎が注目されている.
  • 大川 清孝, 青木 哲哉, 大庭 宏子, 上田 渉, 佐野 弘治
    2011 年 100 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    小腸の細菌および寄生虫感染症について診断,画像診断,治療について主に述べた.病歴では食事歴,海外渡航歴,居住地などが重要である.また,各病原体の潜伏期,症状,画像所見,確定診断の方法などを把握しておくことが重要である.また,最近問題になっているClostridium difficile小腸炎は主に潰瘍性大腸炎やCrohn病の大腸全摘・亜全摘術後におこる致死率の高い疾患であり,その存在を念頭におくことが予後の改善につながる.
  • 辻川 知之, 余田 篤
    2011 年 100 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    小腸の重篤な虚血性疾患には塞栓症,血栓症に加え血管閉塞を伴わないNOMIがあり,早期診断が予後改善のために必要である.また虚血性小腸炎は限局性の虚血によるが頻度は少ない.狭窄型が多く,発症後の腸閉塞が特徴的である.診断には造影CT(computed tomography)や血管造影が有効であるが,発症早期の症状は非特異的なため,高齢者,心疾患,動脈硬化など高リスク患者の腹痛では必ず小腸虚血性疾患を念頭に置くことが重要である.
  • 久松 理一, 日比 紀文
    2011 年 100 巻 1 号 p. 85-95
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ヒトゲノム解析が進みCrohn病の病態には多くの疾患感受性遺伝子が関与していることが明らかとなり,特に自然免疫応答の制御異常が注目されている.Crohn病病態において局所の免疫異常の中心的サイトカインと考えられているTNFαに対する抗体製剤(インフリキシマブ,商品名:レミケード®)の保険承認はこれまで永らく変化のなかったCrohn病治療体系に大きなインパクトと変革をもたらした.またCT(computed tomography),MRI(magnetic resonance imaging)の進歩や小腸鏡の開発などによりわれわれの知り得る情報は飛躍的に増加している.また小腸鏡を用いたバルーン拡張術はこれまで手術に頼っていた狭窄病変に対する内視鏡治療として期待されている.このように診療面において大きな進歩があったCrohn病であるが同時に各治療法の適応や副作用マネージメント,高騰する医療費など新たな問題も明らかとなってきている.
  • 平井 郁仁, 松井 敏幸
    2011 年 100 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    NSAIDs起因性小腸病変,非特異性多発性小腸潰瘍症は比較的稀な小腸の炎症性疾患である.前者はNSAIDsが原因であり,小腸内視鏡を用いた最近の研究ではNSAIDs内服者における発生頻度は決して低くない.加えて高齢化社会である現在,NSAIDsや低容量アスピリンを内服する患者は増加する傾向にあり,消化管出血の一要因として重要である.後者は原因不明で,持続する潜出血による貧血症状を主症状とする疾患である.特徴的な臨床像や形態学的所見によって診断されるが,日常的に遭遇する疾患でないために非特異的な小腸潰瘍を本症と誤って認識するもしくは他の疾患との鑑別に苦慮する場合も多い.本稿では両疾患について概念,最近の画像所見についての知見や治療について概説する.
  • 矢野 智則, 西村 直之, 三浦 義正, 新畑 博英, 佐藤 博之, 林 芳和, 宮田 知彦, 砂田 圭二郎, 山本 博徳
    2011 年 100 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    カプセル内視鏡とバルーン内視鏡という新たな方法が登場して小腸疾患に対する診断・治療戦略が大きく変化した.これまで困難であった小腸良性腫瘍の内視鏡的診断が可能になり,正確な診断をもとにして治療方針を決定できるようになった.また,内視鏡的治療も可能になったことで,Peutz-Jeghers syndromeの小腸ポリープなど,開腹手術となる前に早期発見して治療することが重要となってきている.
  • 荒木 昭博
    2011 年 100 巻 1 号 p. 108-112
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    ダブルバルーン内視鏡,カプセル内視鏡の登場によりこれまで内視鏡でみることのできなかった小腸も確認できるようになった.小腸癌の診断系のみならず概念自体が大きく変化している.小腸における疾患頻度や診断に至るためのツールの選択が変化しているため,それを理解した上で,何をきっかけにどの疾患を疑いどのような順序で検査を行っていくかが重要である.
  • 仲瀬 裕志, 山本 修司, 松浦 稔, 千葉 勉
    2011 年 100 巻 1 号 p. 113-118
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    小腸腫瘍の頻度は原発性消化管腫瘍の6%未満とされてきた.しかしながら,近年,カプセル内視鏡や小腸内視鏡などの開発により様々な小腸の腫瘍性病変に遭遇する頻度が増加傾向にある.小腸腫瘍性病変の鑑別には,上皮性,非上皮性,転移性などの多岐にわたる疾患を念頭に置く必要がある.小腸疾患診断に関するmodalityの進歩に伴い,我々臨床医はできるだけ多くの小腸疾患についてその臨床的像および画像所見の特徴を理解しておくことが重要である.
  • 清水 誠治
    2011 年 100 巻 1 号 p. 119-125
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    他項で取り上げられた小腸疾患以外で,臨床で遭遇する疾患はまれであるが多彩な疾患が含まれる.その内,とくに重要と考えられる小腸疾患を取り上げた.膠原病と類縁疾患に関する小腸病変として,全身性硬化症,SLE,Henoch-Schönlein紫斑病,Churg-Strauss症候群の小腸病変,それ以外では好酸球性胃腸炎,放射線性小腸炎,リンパ管拡張症,アミロイドーシス,慢性偽性腸閉塞症,腸管子宮内膜症の疾患概念,診断,治療について概説した.
III.最近の話題消化管の恒常性維持と病態解明
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 伊藤 裕
    2011 年 100 巻 1 号 p. 191-198
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    肥満,インスリン抵抗性を基盤にメタボリックシンドロームが生じ,その合併症として,慢性腎臓病(choronic kidney disease:CKD)が起こり,CKDは心血管病発症につながる(心腎連関).この一連の流れは,「メタボリックドミノ」として捉えられる.メタボリックドミノの上流から下流にいたるまで,その病態生理にレニンアンジオテンシンアルドステロン系が連続的に関与する.CKDにおいて血中アルドステロン濃度は上昇し,インスリン抵抗性の増悪に寄与していると考えられる(腎性インスリン抵抗性症候群).またメタボリックドミノにおいて認められる難治性高血圧症の発症に,ミネラルコルチコイド受容体の活性化が関与している可能性があり,我々はこうした病態を,「ミネラルコルチコイド受容体関連高血圧症」とよんでいる.メタボリックドミノの治療においてはこうした病態を考慮した戦略の構築が望まれる.
  • 齋藤 好信, 弦間 昭彦
    2011 年 100 巻 1 号 p. 199-207
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    薬剤性肺障害は,呼吸器専門医のみならず,広く臨床医に認識されるようになった重要な疾患である.これまで薬剤性肺障害の診療には様々な問題が存在し,正確な実態把握の困難さ,診断の不確実性などのほか,リスク因子,適切なマネージメントなどは情報が不足していた.現在も解決すべき問題は多いが,最近の進歩として,新薬に関しては製造販売後の全例調査などを通じて,薬剤性肺障害の発現状況が正確に把握されるようになった.結果として,リスク因子の解明とデータに基づいた適正使用が推進され,成果が得られてきている.また,薬剤性肺障害は外国人と比較して日本人に発現が多いことがいくつかの薬剤で示されている.日本人に発現が多い理由は未だ不明であるが,遺伝子解析などの研究が進められており,その成果に期待が寄せられている.今後さらに薬剤性肺障害の病態について研究が進められ,薬剤性肺障害の発現を可能な限り予防することが望まれる.
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