日本内科学会雑誌
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62 巻, 4 号
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  • 大槻 真, 森 頴太郎, 立岩 誠, 馬場 茂明
    1973 年 62 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 1973/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    合成thyrotropin releasing factor (TRF) 50~100μgを視床下部下垂体疾患々者57例に投与し, TSH放出反応の程度,様式により分類検討した.下垂体障害例ではTRFに対して正常反応するものと低下あるいは無反応の症例が相半ばした. 8例が反応遅延を示したが,この内7例は開頭手術後であつた.視床下部障害症例23例中21例が正常あるいは過大反応を示し,しかも21例中17例が反応遅延を呈した.したがつて少量のTRFに十分なTSH放出反応を呈し,しかも反応遅延を示す症例は,視床下部障害の存在を示唆するものである.
  • 吉田 忠義, 杉本 俊六, 前川 正, 鴫谷 亮一, 今井 育一
    1973 年 62 巻 4 号 p. 360-367
    発行日: 1973/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Alport症候群の1家系を報告する.本家系は5世代55名よりなる.うち8名(男6名,女2名)は腎疾患に罹患し,すでに男3名が死亡し,他に男2名が腎不全に陥ている.女2名には軽度の腎障害が存在するのみである.発端者は22才の男で蛋白尿,貧血,難聴が認められ,当科に入院治療したが,昭和46年12月25日に死亡し剖検した.発端者以外の腎障害を伴う男でも難聴が見られた.鼡径ヘルニアが家系の3名に見られたが,今まで報告されたAlport症候群にこのような記載は見当らない.発端者の剖検腎は普通の慢性糸球体腎炎と区別出来なかつたし,発端者のいとこの腎生検所見も同様であつた.この疾患は常染色体性優性遺伝と思われるが,なぜ男性患者が重篤になるかについては不明である.
  • 小畠 敬太郎, 半田 俊之介, 三藤 信, 市川 陽一, 横山 哲朗, 亀谷 徹, 渡辺 陽之輔
    1973 年 62 巻 4 号 p. 368-373
    発行日: 1973/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Antidiuretic hormone (ADH)過剰症候群(SIADH)は, Schwartzらの報告以来各種疾患によつて起こることが知られている.なかでも悪性腫瘍,とくに肺癌によるものが多い.症例は76才の男で,肺癌の経過中に,食欲不振,悪心,嘔吐,吃逆,意識障害など低Na血症による症状を認め,さらに尿中には持続的にNa排泄がみられた.それらの症状はMMC投与より, X線像上腫瘍の縮小に伴い改善され, BartterおよびSchwartzらの診断基準によりSIADHと診断した.悪性腫瘍によるSIADHの発症機序として,大きく分けて, 1)腫瘍またはその浸潤あるいは転移による,直接的,間接的な生理的ADH分泌機構の障害, 2)腫瘍組織によるADH異所産生の二つが考えられる.本例では腫瘍組織より高濃度のADH活性が認められ,さらに他の剖検所見および腫瘍細胞の電顕的検索により,腫瘍組織によるADHの異所産生を強く示唆する所見が得られた.現在まで本症とその組織の電顕的観察を含めて報告された例は極めて少ない.さらに本例は,大細胞型未分化癌で異所性ADH産生を伴つた始めての報告と思われる.
  • 丸山 厚太郎, 高橋 巌, 大野 敏巳, 速水 一雄
    1973 年 62 巻 4 号 p. 374-379
    発行日: 1973/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    37才の女性. 20才時,甲状腺機能亢進症と診断されたが,充分な治療を受けなかつた. 4年前に甲状腺クリーゼで当院に入院したことがある.その後うつ血性心不全を合併したが,外来治療で軽快した. 1カ月前から心窩部停滞感があり,悪心,嘔吐を伴い,黄疸も出現した. 10日前にX線検査で胃潰瘍が認められ入院した.第3病日に大量の下血があり死亡した.剖検によりうつ血による脾腫(230g),甲状腺中毒症に由来する肝炎を基礎とした肝の萎縮(630g),門脈の拡張および蛇行,部分的に瘢痕化を伴つた,胃小弯部の潰瘍などが認められた.日本における甲状腺機能亢進症剖検例108例中で消化性潰瘍を伴つた例は3例(2.7%)に過ぎない.胃潰瘍は甲状腺機能亢進症では比較的まれな合併症と考えられる.
  • 北尾 武, 滝口 智夫, 河村 洋一, 宮保 進, 服部 絢一
    1973 年 62 巻 4 号 p. 380-383
    発行日: 1973/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    甲状腺機能亢進症と本態性血小板減少性紫斑病(ITP)の合併は約20例報告されているのみである.患者は22才の女性で, 2年前より紫斑,出血傾向,眼球突出,甲状腺腫などの症状があり,血液学的検査では,血小板は4万8千で骨髄内の骨髄巨核球数は増加しており,血小板産生は認められない.血小板抗体は陽性であつた.甲状腺機能はPBI 17.5μg/dl, BMR+36.3%, T4 10.4μg/dl,トリオソルブ48.4%, 131I摂取率36.8%, T3抑制率40%,マイクロゾーム抗体陽性,甲状腺生検像は甲状腺機能亢進症の像と一致した.バセドウ病に対してプロピルチオユラシル(300mg/day)を投与したが副作用が強く,メチマゾール(30mg/day)に変えたところ,甲状腺機能の改善とともに,血小板数も12万までに増加した.両者の合併には自己免疫的機構が作用していると考えられ,症候性ITP症候群に甲状腺機能亢進症があることを掲示した.
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