日本内科学会雑誌
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105 巻, 1 号
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内科学会NEWS
目次
特集 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の臨床的意義
Editorial
トピックス
  • 宮城 琢也, 竹原 徹郎
    2016 年 105 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)は,肥満との関連が強く,肥満人口の増加に伴い有病率が増加している.日本では,NAFLD有病率は30%程度と報告されており,男性が女性よりも高頻度で,特に中年層の男性,閉経後高齢層の女性で頻度が高い.慢性肝疾患の中でも最も高頻度な肝疾患とされ,肝硬変や肝癌に占める割合が今後増加することが予想される.メタボリックシンドロームや食生活との関連も疫学的に示唆されている.また,小児NAFLDへの注意も必要である.

  • 池嶋 健一
    2016 年 105 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholoic fatty liver disease:NAFLD)は,非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL)および進行性の肝疾患である非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)を含む,メタボリックシンドロームの肝病態として注目されている.NAFLDはインスリン抵抗性を基盤とした糖脂質代謝の変化に伴い,肝細胞の脂肪化および組織障害を来すが,その病態には遺伝的素因,エピジェネティック制御機構や遊離脂肪酸の脂肪毒性に加え,腸内細菌叢のバランスや自然免疫系などが関与している.

  • 御簾 博文
    2016 年 105 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)と2型糖尿病はしばしば合併する.脂肪肝では肝臓由来分泌タンパク“ヘパトカイン”の分泌異常がインスリン抵抗性を惹起して糖代謝を悪化させている可能性がある.特にselenoprotein P(SeP),LECT2(leukocyte cell-derived chemotaxin 2)など,従来では別の機能を有するとされていた肝由来液性因子が糖代謝に関与するとする報告が相次いでいる.ヘパトカインを標的とした耐糖能異常に対する新たな診断・治療法の開発が期待される.

  • 小木曽 智美
    2016 年 105 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    肥満人口の増加に伴い,非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)の頻度も増加している.肝の脂肪化は,過食とインスリン抵抗性によるde novo脂肪酸の合成亢進とミトコンドリアの機能異常による脂肪酸のβ酸化の相対的低下によって促進される.脂肪の蓄積により活性酸素種が産生され,炎症や小胞体ストレスを誘導し,肝の線維化が進行する.NAFLDの発症には,肥満,インスリン抵抗性,脂質代謝異常などの生活習慣病が深く関与する.

  • 今城 健人, 米田 正人, 中島 淳
    2016 年 105 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD),特に,非アルコール性脂肪肝炎 (non-alcoholic steatohepatitis:NASH)は,肝硬変や肝細胞癌に至る可能性のある疾患である.しかしながら,日常診療においては,肝疾患以外の疾患も少なからず合併する.その中でも,心・脳血管障害,慢性腎臓病,悪性腫瘍の合併は重篤な健康被害になる可能性が高く,また,睡眠障害や精神疾患など,生活の質を低下させる疾患を合併する可能性もあり,日常診療においても注意が必要である.

  • 小野 正文, 西原 利治
    2016 年 105 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    患者数のさらなる増加が予想される非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)患者の中から治療が必要な非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)や肝線維化進展症例を見つけ出すのは容易ではない.肝臓の組織診断がNASHと非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL)を鑑別できる唯一の方法であるものの,NASHや肝線維化進展の可能性が高い症例を画像検査,スコアリングシステムならびにバイオマーカーなどを用いて診断し,適切な時期に肝臓専門医に紹介することが重要である.今後,有用な血液バイオマーカーの登場も期待されており,肝不全や肝細胞癌の高発症リスク症例の早期診断が内科医には求められる.

  • 角田 圭雄, 瀬古 裕也, 伊藤 義人
    2016 年 105 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)の治療の原則は生活習慣の是正であるが,減量が困難な例では,薬物療法や減量手術の適応となる.肝線維化の進展度はNAFLDの予後決定因子であり,非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)においては,ALT(GPT)値の制御が肝線維化進行抑制に重要である.高度肝線維化進行例を疑う例や他疾患との鑑別が困難な例,治療抵抗例は肝臓専門医と連携し,NASHからの肝疾患関連死の抑制に努めるべきである.

  • 建石 良介, 小池 和彦
    2016 年 105 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)は,長期生命予後にほとんど影響を与えない病態から,肝硬変・肝癌に進行する病態まで非常に広い疾患スペクトラムを有している.NAFLDは,メタボリックシンドロームの肝での表現形であるとも考えられ,経過中には糖尿病や心血管イベント発症に気を配る必要がある.肝線維化進展例では,肝発癌が大きな問題となってくるため,腹部超音波検査を主体とした肝癌サーベイランスを行う必要がある.

MCQ
特別連載 新しい内科専門医制度の実施にあたって
今月の症例
  • 高橋 利匡, 原 賢太, 高吉 倫史, 大幡 真也, 竹内 健人, 杉本 健, 西山 勝人, 安友 佳朗, 横野 浩一
    2016 年 105 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,女性.貧血と血小板数減少の精査目的で入院.検査より,原因は自己免疫性胃炎と診断した.また,自己免疫性甲状腺炎を合併していた.自己免疫性甲状腺炎症例は自己免疫性胃炎を合併しやすく,自己免疫性胃炎症例は胃腫瘍性病変の頻度が高いと報告されている.当院の自験例では自己免疫性甲状腺炎症例での胃腫瘍性病変は高頻度であった.自己免疫性甲状腺炎症例に上部消化管内視鏡検査を行うことは重要であると考える.

  • 佐藤 裕行, 松田 謙, 竹内 陽一, 深水 大天, 齋藤 綾子, 長澤 将
    2016 年 105 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    62歳,女性.Basedow病に対し,MMIを増量後,発熱,下腿浮腫,点状出血,眼球結膜充血を認めた.炎症反応上昇,尿赤血球51~90/1視野かつ赤血球円柱PR3-ANCA 17.3 U/ml,MPO-ANCA 4.6 U/mlを認め,MMIによる薬剤性ANCA関連血管炎(ANCA associated vasculitis:AAV)としてステロイド開始後,全身症状は改善したが,肝動脈瘤を指摘された.その後も加療により血管炎はコントロールされ,肝動脈瘤も消退した.

  • 山田 明子, 栗原 琴美, 立木 規与秀, 重光 胤明, 福家 顕宏, 山口 利昌, 山上 啓子, 南 美枝子
    2016 年 105 巻 1 号 p. 92-98
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    症例は36歳,女性.発熱,嘔吐,下痢症状に続いて筋肉痛,四肢脱力が生じ,ショック状態となり,救急搬送.全身性浮腫と血液濃縮所見,低アルブミン血症,筋逸脱酵素の上昇を認め,血管透過性亢進による循環血漿量減少性ショック及び横紋筋融解症と診断した.大量補液とカテコラミン,アルブミン,ステロイドホルモンの投与を行い,病状は改善した.約3年前より程度の差はあるが,数カ月おきに同様のエピソードを繰り返していた.除外診断を行い,IgG-κ型のM蛋白血症を認めたことからSystemic capillary leak syndrome(SCLS)と診断した.

  • 鈴木 清澄, 林 悠太, 大塚 博雅, 織田 美紀, 桑名 司, 橋本 賢一, 笠巻 裕二, 矢内 充, 木下 浩作, 相馬 正義
    2016 年 105 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    46歳,男性.発熱,咽頭痛,呼吸困難のため救急搬送となった.両側の扁桃周囲膿瘍,右内頸静脈血栓,敗血症性肺塞栓症の画像所見に加えて,右肩および右膝の壊死性筋膜炎を認め,血液,扁桃周囲膿瘍,右肩皮下膿瘍の培養からFusobacterium necrophorumが検出された.Lemierre症候群(Lemierre's syndrome:LS)と診断し,抗菌薬投与,デブリドマン,抗凝固療法を行い,軽快した.LSは致死的な感染症であり,稀ながら壊死性筋膜炎を合併し得ることに留意する必要がある.

医学と医療の最前線
  • 竹村 佳純, 髙山 浩一
    2016 年 105 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    肺癌の最大の危険因子は喫煙であるが,最近は喫煙と関連が薄い,肺癌発生に深く関与している遺伝子異常(driver mutation)が次々と報告されている.これらに対する分子標的薬が開発され,個別化治療が登場したことにより,この 10 年で肺癌の化学治療は大きく進歩した.現在は,耐性獲得後の治療や比較的稀な遺伝子異常を伴う肺癌に対する検査・治療の開発が課題となっている.一方,早期発見にはがん検診の受診が重要である.我が国では成人40歳以上に対し,年1回の胸部X線検査による肺がん検診が実施されているが,その有効性は限られている.最近は低線量 CT による肺がん検診の有効性が示されたため,今後の肺がん検診のあり方を考える必要が出てきた.また,肺癌に伴う症状を認めた場合は速やかに医療機関を受診することが望ましい.症状の中でも2週以上長引く咳は頻度が高く,受診が遅れがちであるため,特に啓発が必要である.

  • 竹原 徹郎
    2016 年 105 巻 1 号 p. 112-118
    発行日: 2016/01/10
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    C型肝炎に対する抗ウイルス治療はDAA(direct-acting antiviral)と呼ばれる一群の薬剤(NS3/4Aプロテアーゼ,NS5A複製複合体,NS5Bポリメラーゼのいずれかに対する特異的な阻害薬)の登場により,劇的に変化した.複数の薬剤を組み合わせることにより,2015年後半から,ゲノタイプ1型,2型のいずれに対しても,12週間の治療期間で95%超のウイルス排除(sustained virologic response:SVR)が期待できる時代に突入した.DAAに特有の問題として,治療非奏効時の耐性ウイルスの出現があるが,このような症例に対する対策は今後に残された大きな課題になっている.また,DAAにより,いままで治療が困難であった高齢者や線維化進展例からもSVRが得られるようになったが,このような症例からの肝発癌率は高いことが予想され,SVR後のサーベイランスが極めて重要である.また,非代償性肝硬変など現在の治療適応外の患者群が存在し,このような症例に対する治療法の確立が望まれている.

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