日本内科学会雑誌
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67 巻, 1 号
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  • 原澤 道美
    1978 年 67 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1978/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺高血圧症の多くは心・肺疾患に続発するが,この場合,僧帽弁狭窄症や左心不全などの肺静脈圧上昇をきたす疾患ではそれを介して,また左から右へのシャントを有する先天性心疾患では,体循環系血圧が肺血管床に直接伝達されることにより,そして慢性肺疾患や高地環境では,ハイポキシアによる肺動脈収縮が原因となつて,さらに肺血管性疾患では塞栓による肺血管床の器質的閉塞が,それぞれ主役を演じて肺動脈圧の上昇をみると思われる.しかし,いまだにその機序がまつたく不明な肺高血圧症もいくつか存在する.そのうちでは原発性肺高血圧症が旧くから報告されていたが,近年,臨床的にそれとの鑑別が困難な肺静脈閉塞症が注目されている.また,ときに肝硬変症に合併する肺高血圧症も,いまだその成因は不明である.数年前,二,三の国において食欲抑制剤の服用と関連して原発性肺高血圧症の一時的流行をみ,薬剤や有毒食物の摂取がその原因に擬せられ,食餌性肺高血圧症なる名称も発場したが,両者の因果関係の直接的証明は不成功に終わつた.さらに,経口的な有毒物質で発症したと思われる臨床例は認められていない.しかし,動物ではある種のマメ科植物の種子から抽出したmonocrotalineにより,確実に肺高血圧症が惹起される.この場合,それらが強い肝障害作用を有することから,肺血管床への直接効果よりも,それを介するような機序が推論されている.
  • 長谷川 建治
    1978 年 67 巻 1 号 p. 14-23
    発行日: 1978/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脳血管障害例における血液酸素解離能の変化の有無ならびに,その脳循環代謝に及ぼす影響につき検討する目的で以下の検討を行なつた.健常例21例,脳血管障害例30例の血液酸素解離曲線を解析し,ヘモグロビンが酸素により50%飽和される時点での酸素分圧をP50(温度37°C, pH7.40, Pco2 36.6mmHgの条件下)として測定し血液酸素解離能の指標とした.血液酸素解離能の関連因子として,赤血球内2, 3-diphosphog1ycerate,赤血球内pHの測定も併せ行なつた.また,脳血管障害例10例について脳動静脈酸素含量較差,脳酸素消費量およびCO2変化に対する脳血管反応性の測定を行ない, P50との対比において検討した.脳血管障害例におけるP50は健常例に比し,有意の高値を示し,その程度は神経脱落症状の重篤のものほど大であり,脳血管障害例における血液酸素解離能の増大が示唆された.しかしながら,この血液酸素解離能の増大は赤血球内2, 3-diphosphoglycerate,赤血球内pHの変動を機序とするものではないと考えられた.神経脱落症状の重症度が一定の症例10例においては,脳動静脈酸素含量較差および脳酸素消費量はそれぞれP50と有意正相関を示し,また, CO2変化に対する脳血管反応性は脳酸素消費量, P50のそれぞれと有意正相関を示した.脳血管障害の発症に伴う血液酸素解離能の増大は脳動静脈酸素含量較差および脳酸素消費量を増加させる方向に作用することが明らかとなり,脳循環代謝に占める血液酸素解離能の重要性が確認された.
  • 小笠原 文雄, 甲斐 一成, 近藤 隆, 渡辺 頴介, 大久保 満, 佐々 寛己, 丹羽 豊郎, 松井 永二
    1978 年 67 巻 1 号 p. 24-34
    発行日: 1978/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Isosorbide dinitrate(以下IDと略す)をうつ血性心不全患者25例に投与し,その臨床効果ならびに血行動態を検討した.症例を以下の3群に分類した. I群(11例,うち6例は尿毒症に基づくuremic lung): ID 5mg舌下投与した急性肺水腫例. II群(7例): ID5mg舌下投与した慢性心不全例(NYHA II度~IV度). III群(7例): ID 10mg内服投与した慢性心不全例(NYHA II度~IV度). I群ではID投与後15分頃より全例で起坐呼吸および湿性ラ音の軽減ないし消失を認めた. I群での最大効果は平均血圧-11%,呼吸数-19%,中心静脈圧-31%といずれも有意の低下を示した. I例で測定した心係数は+17%の増加を,平均肺動脈圧は-24%,全末梢血管抵抗は-20%の低下を認めた. II群では脈拍数(+19%)の有意の増加と,平均血圧(-19%),中心静脈圧(-33%),平均肺動脈圧(-37%)の有意の低下を認めた. 2例でID舌下15分後にショック症状を呈した. III群でけ平均血圧(-13%),末梢静脈圧(-32%)の有意の低下を認めたが,ショック症状を呈したものはなかった.経時変化からみると, IDの効果はI, II群の舌下投与では5分後より約2時間, III群の内服投与では15分後より約4時間持続した.以上よりID舌下投与はuremic lungを含めた急性肺水腫患者の緊急治療に簡便かつ有用であるが,慢性心不全患者ではショック症状を呈することがあり,後者にはIDの内服投与が安全で適切であろうと考えられた.
  • 三船 順一郎, 上田 慶二, 桑島 巌, 白倉 卓夫, 杉浦 昌也, 蔵本 築, 村上 元孝, 松田 保
    1978 年 67 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1978/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年心拍停止の蘇生後に消費性凝固障害を発現した臨床例の報告が見られるようになつてきたが,心拍停止前の凝血学的検査で消費性凝固障害がなかつたことが確認されているものはほとんどない.我々は心拍停止前に施行した凝血学的検査で凝血能の異常を認めなかつたが,心拍停止の蘇生後に消費性凝固障害を呈した1剖検例を経験したので報告する.患者は79才,男性.完全房室ブロックに対しぺースメーカー植込み術を施行したところ,術後第18病日に心室細動により心拍停止を来たしたが,種々の蘇生術により約30分後心拍動を認め血圧も正常に復した.心拍停止前はフィブリノゲン(312~284mg/dl), FDP (5μg/ml)などの凝血学的検査所見に異常を認めなかつたが,心拍停止の蘇生4時間後フィブリノゲン(100mg/dl)の著明な減少, FDP (40μg/ml)の著明な増加,プロトロンビン時間の延長,凝血因子の減少などの消費性凝固障害に一致する所見を呈した. 3日後には凝血学的検査所見はほぼ正常化した.剖検所見においては出血や血栓の多発は認めなかつた.
  • 久藤 文雄, 上嶋 十郎, 矢端 幸夫, 角張 雄二, 村松 準, 徳弘 英生, 木川田 隆一, 平沢 康
    1978 年 67 巻 1 号 p. 40-49
    発行日: 1978/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    生前に心生検,および血行力学的にLöffler心内膜炎を診断し,剖検にてその存在を確認し,さらに好酸球性白血病と思われる所見を認めた1例を報告する.症例は41才の男性自衛官.昭和46年7月頃より,労作時呼吸困難をきたし,他医にて貧血を指摘され,好酸球増多を伴う慢性骨髄性白血病としてbusulfanの投与を受けるも軽快せず, 50年8月,当科に入院した.入院時,外頚静脈の怒脹,腹水,下腿浮腫あり.肝・脾・リンパ節腫を触知した.貧血,血小板減少を認め,末梢白血球数58,800/cmmで, 78%の成熟好酸球増多と, 2%程度の幼若好中球の出現あり,著明な好酸球増多を伴う過形成骨髄像を示したが, Ph1染色体は陰性であつた.心は拡大し,胸水を認め,心電図にて心内膜下障害,心音図にて,心尖部と三尖弁領域に逆流性雑音あり.陽性静脈波,両心室内のtumor echoを認め,心脈管造影で著明な右房拡大,左右室腔の狭小化,腔内の隆起物の存在がみられた.剖検にて,心内膜線維症,および両心室巨大壁在血栓を認め, Löffler心内膜炎の像に一致し,さらに骨髄に幼若球を含む好酸球の腫瘍性増殖,肝・脾を主とする全身諸臓器への白血病性浸潤像を認め, Bentleyら, Benvenistiらのいうeosinophilic leukemiaに該当するものと考えられた.本例の好酸球は,細胞化学的所見,および電子顕微鏡学的所見より,通常の好酸球とは異質であり, Löffler心内膜炎と好酸球性白血病との関連に関与するものと思われる.
  • 大橋 晃, 渡辺 靖之, 中井 秀紀, 猪熊 茂子
    1978 年 67 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 1978/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    文献上世界で4家系目と考えられる家族性α1-antitrypsin (α1-AT)欠損症(Pi null)の1家系を報告した.発端者は27才,男子,若年性高血圧症と左頚動脈瘤破裂で初診,頚動脈瘤切除手術を受けた.入院時血清電気泳動でα1-globulinの異常低値が見出され, α1-ATは単純免疫拡散法で10mg/dl以下, counterimmunoelectrophoresisで0.371mg/dl以下, Laurell法によるtrypsin inhibitory capacityは0.050mg Try/ml血清と極端な低値を示した.酸殿粉ゲル電気泳動,交叉免疫電気泳動法にて,表現型はPi--と同定された.二次性高血圧症は否定され,胸部X線像では肺気腫を疑わせる所見はないが,血流および吸入シンチグラムでは肺気腫を思わせる所見であり,呼吸機能検査では, %FEV1, MVVの低下, RV, RV/TLCの増大, Cdyn/Cstの低下, CV/VCの増大, DLCOの低下など,肺気腫の初期像を疑わせる所見であつた.家族17名の検索では,兄,姉がPi--,両親含め8名がPiM-,他はPiMMであつた.両親はいとこ結婚であつた. Pi--の兄は胸部X線像上肺気腫が疑われた.これまで報告されている3家系4名を含め, Pi--と疾病との関連,遺伝形式などについて考察を加えた.今後長期にわたる経過観察により,肺気腫,高血圧肝疾患がどのように進展するか明らかにしていく予定である.
  • 森本 靖彦, 花崎 信夫, 宮武 明彦, 中尾 皖英, 野間 啓造, 八倉 隆保, 山村 雄一, 有末 一隆, 立花 暉夫, 矢野 三郎
    1978 年 67 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 1978/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    気管支喘息,サルコイドーシス, RA, SLEなどの慢性疾患110例を対象に,ステロイド治療前および治療中の種々の段階における副腎皮質機能をrapid ACTH testにより検討した.ステロイド剤は現在わが国で最も頻用されているprednisolone (P)とbetamethasone (B)を選び,投与量との関係をみた,特に,副作用軽減に有効といわれる隔日朝1回投与法における副腎機能について詳細に検討し,連日内服の場合と比較した.喘息症例を除く慢性疾患患者の副腎機能はステロイド治療前から軽度の低下を示した.連日投与の場合, Pの1日10mg以上の量では血中cortisolの基礎分泌, ACTHに対する反応とも著しく低下していたが, 1日5mgでは基礎分泌は正常域に上昇し,なおsubnormalながらACTHによく反応した. Bでは, 1日0.5mgの投与でも副腎機能の抑制が顕著であつた.隔日朝1回法でPを投与した場合,投与量の如何にかかわらず副腎機能は終始良好に保たれ,連日投与の場合に比し圧倒的に優れた成績を示した.一方, Bをこの方法で投与しても,連日投与の場合同様に副腎機能は強く抑制されていた.健常人の1例にP10mgを朝1回投与すると日内リズムに基づく翌朝の血中cortisolの上昇はみられたが, dexamethasoneとBの各1.0mgの投与では血中cortisolは終日低値を続け,翌朝の上昇もみられなかつた.同力価とされている量でもPに比しBの間脳下垂体-副腎抑制作用は強く,ステロイド療法に際して製剤の種類や投与法を考慮せずに概括的に効果や副作用を論ずることには大いに問題がある.
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