日本内科学会雑誌
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54 巻, 2 号
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  • 中島 昌弘, 大塚 幸雄
    1965 年 54 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1965/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血液凝固過程において,血小板が重要な役割を演ずることは周知の事実である.しかしそのざい,血小板が如何なる機序にまつて作用するやは現在なお充分には究明されていない.著者らはこの問題を形態学的な面から検索することを企て,多血小板血漿にカルシウムを再加して凝固を進展せしめ,経過を追つて血小板の微細構造を観察した.微細構造上著明な変化を示したのはgranulomer αおよびミトコンドリアである.すなわち前者は初め膨大し,その数も増加し,後減少,消失する.ミトコンドリアも初め膨大し,後減少,消失する.かくて凝固の完結期には,血小板の多くは無構造様となる.右の事実からgranulomer αおよびミトコンドリアに血小板凝血因子の生成或いは局在性が示唆されると思われる.凝固の終末段階になると凝塊中の血小板の膜が消失し,血小板としての形態が判別出来ないようになる。血餅退縮にかんする重要な問題の一つがこゝに伏在すると考えられる.なお血小板にトロンビンを作用させたさいにも, granulomer αおよびミトニンドリアは前記したところと同様の変化を示すが,凝塊を作る血小板の膜は長く保全せられる.
  • 宮川 隆
    1965 年 54 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 1965/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糸球体腎炎およびネフローゼ症候群(リポイドネフローゼおよびネフローゼ加味腎炎)においては,病変の進展とともに糸球体の硝子化,瘢痕化および線維化と間質系の線維化がみられる.これらを考える際に多糖体とコラーゲンの代謝が問題となり,これを追求するため多糖体の特異成秀でglucosamine (GL)とgalactosamine (GA)から成るhexosamine (HA)およびコラーゲンの特異成分であるhydroxyproline (HP)をラットのaminonulceoside (AN) nephrosisおよびnephrotoxin (NT) nephritisの腎皮質,腎髄質,肝,血清および尿について測定し,あわせて腎,肝の病理組織について検討を加えた.両腎疾患において病態が進むにつれ,腎皮質,腎髄質において,まずHAが増加,ついHPが増加する所見を認めた.これは組織所見で未だ証明されていない時期において,線維化を暗示する所見と考えられる.両腎疾患の腎皮質,腎髄質ともにGAについては,初期群で増加,極期群で減少を示し,変動に相違はみられなかつた. GLについては,両疾患のいずれの時期においても,腎皮質は腎髄質よりもおよそ50%前後の高値を示し,極期群は初期群に比べ, AN nephrosisでは減少, NT nephritisでは増加するという特徴がみられた.この相違は両腎疾患の成因の相違によるものと考えられ,また光顕的および電顕的組織所見の相違に対応するものと考えられる.尿中HAおよびHP排泄量は尿蛋白排泄量に平行して増加をみ,尿HAの増加は血清蛋白結合HAの傷害腎からの排泄増加によるものであり,尿中HPの増加は腎を含む体内のコラーゲンあるいはレチクリンの破壊の亢進あるいは代謝回転の亢進のためと考えられる.両腎疾患では腎の初期群,極期群のHAの増減はHAを含む中性mucopolysaccharideあるいは中性mucoidあるいは中性mucoproteinによるものと考えられる.
  • 桝井 秀雄
    1965 年 54 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 1965/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Basedow病患者血中にLATSが発見され,病因究明上注目されている. LATSとTSHの差異にかんして,抗ウシTSH血清による中和の問題には異論がある.著者は抗牛ならびに抗ヒトTSH血清を作成,それぞれのウシならびにヒトTSHの中和価を測定,抗ウシTSH血清はウシTSHを,抗ヒトTSH血清はヒトTSHをよりよく中和することを確認した.抗ヒトTSH血清によりLATS活性は全然中和されなかつた. Basedow病剖検例下垂体TSH活性のbioassayの時間反応曲線は諸家の報告の如く正常TSH型を示した.死亡時hyperthyroid状態の3例では,下垂体TSH活性含有量は対照例のそれに比し著しく低値を示し,抗TSH血清により全然中和されなかつた.死亡時euthyroidの1例では,抗血清により部分的に中利され,正常TSHの混在を示した.すなわち, Basedow病患者下垂体にTSHともLATSとも異る甲状腺刺激物質の存在することを明らかにした.
  • 乾 成美, 青山 一朗, 渡辺 文彦, 川瀬 博由, 大橋 三与治, 神田 敏英, 杉浦 陽太郎, 時光 直樹, 塩屋 道規, 種田 掬也, ...
    1965 年 54 巻 2 号 p. 134-141
    発行日: 1965/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    核酸発解酵素の一種であるフォスフォジエステラーゼは小腸粘膜をはじめ人体諸臓器,体液中に広く分布し,肝疾患,腎疾患,悪性腫瘍,熱性疾患などで血清中の木酵素活性の上昇がみられるが,本酵素活性の消長からールス性肝炎の病態および予後について検討した.ビールス性肝炎では一般に発黄当初から木酵素活性の上昇を認め;臨床所見の改善につれ漸次低下し,経過良好な例では発黄後90日以内で正常値に復す.しかし胆細管炎型肝炎では病初正常値にとゞまり,発黄数週後から上昇傾向を示す.本酵素活性と一般肝機能検査および肝生検組織所見との関係についてみると, ZTT, CCLF,コバルト反応およびグ鞘における細胞浸潤,結合織増生の程度とかなり密な平行関係がみられる.また本酵素活性はビールス性肝炎のいずれの病期においても最も高い異常率を示し,その正常化は一般肝機能検査の正常化に比し極めて長い期間を要するものが多く, 102例のビールス性肝炎における発黄6カ月後の異常率は流行性肝炎53.4%,血清肝炎76.8%であつた.
  • 市田 文弘, 渡辺 和雄, 石原 象二郎, 井上 恭一, 田辺 靖雄, 岩野 莞爾, 平出 典, 井本 勉
    1965 年 54 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 1965/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    汗疱状白癬および膿皮症のため, griseofulvin, tetracycline-triacetyloleandomycin (Sigmamycin)(以下TC-TAOと略す)およびtriamcinoloneの三薬を投与中に高度の黄疸を来たし,形態学的に胆細管性肝炎II型を示した1例を経験し, “cha11enge dose”を投与したところ, griseofulvinに反応なく, TC-TAOによつて入院時と同様,黄疸を再現し,肝生検も併用して原因薬物を確認した.
  • 水野 義晴, 安賀 昇, 沢田 憲志, 松本 一郎, 岩崎 雅行, 中田 俊士, 横村 徹, 妹尾 亘明, 片山 純, 岩田 吉一, 陶 文 ...
    1965 年 54 巻 2 号 p. 148-153
    発行日: 1965/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本症例は,限局性腸炎に低蛋白血症と発育障害を伴なった24才の女子である.低蛋白血症は,腸管内への血漿蛋白漏泄によるものである。切除した病変部の組織標本では,潰瘍形成とともに,腸壁全層のリンパ管拡張と浮腫が著明な所見であつた.腸管,腸間膜におけるリンパ系の病変が,限局性腸炎の病理発生に重要な役割を演ずるとともに,随伴する腸管内蛋白漏泄の原因をなしていると考える.一方,内分泌学的にはhypogonadotropic hypogonadismを認めたが,これは,成長障害とともに,低蛋白血症などに基づく二次的な変化であろう.病変腸管の切除によつて,血清蛋白質はたゞちに正常化し,術後,かなり急速な身長,体重の増加をみている。
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