日本内科学会雑誌
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110 巻, 10 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
内科学会NEWS
目次
特集 リウマチ・膠原病診療の新展開
Editorial
トピックス
  • 渡部 龍, 山田 真介, 橋本 求
    2021 年110 巻10 号 p. 2160-2165
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    JAK(Janus kinase)阻害薬は,経口投与可能な低分子化合物であり,生物学的製剤と異なり,複数のサイトカインの細胞内シグナル伝達を阻害することにより,関節リウマチに対して有効性を示す.現在,我が国では5剤のJAK阻害薬が投与可能である.生物学的製剤と同等またはそれ以上の有効性を示すが,帯状疱疹等の副作用に注意を要する.今後,本邦における長期安全性の検証が重要である.

  • 田村 直人
    2021 年110 巻10 号 p. 2166-2172
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は,多彩な臓器病変を伴う慢性の全身性自己免疫性疾患である.SLEの生命予後は改善したが,再燃や長期のグルココルチコイド(glucocorticoid:GC)投与による身体ダメージが問題となってきた.SLEの病態は,主に樹状細胞等におけるI型インターフェロン(interferon:IFN)の過剰産生と自己抗体産生に伴う免疫複合体によると考えられているが,これらの因子を制御して不可逆的臓器障害や再燃を防ぎ,さらにGC総投与量を減少させる治療が必要である.

  • 岸本 暢将, 駒形 嘉紀, 要 伸也
    2021 年110 巻10 号 p. 2173-2180
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    近年,分子標的治療薬を含む薬物療法の進歩により,乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)や体軸性脊椎関節炎[代表疾患:強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)]に代表される脊椎関節炎患者の予後は大きく改善している.それに伴い,早期診断を目的に分類基準が整備された.また,2020年以降,本邦においてもIL(interleukin)-17阻害薬のX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radiographic axial spondyloarthritis:nr-axSpA)への適応追加,新規IL-23阻害薬や経口分子標的治療薬であるJAK(Janus kinase)阻害薬もPsAの治療薬として登場し,関節リウマチより多くの分子標的治療薬が承認されている.本邦や欧米の治療推奨やガイドラインを熟知し日常診療の治療選択の一助としていただきたい.

  • 白井 悠一郎
    2021 年110 巻10 号 p. 2181-2188
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    全身性強皮症は,皮膚や諸臓器の線維化,血管病変,自己免疫異常を特徴とする結合組織疾患である.びまん皮膚硬化型と限局皮膚硬化型に分類されるが,びまん皮膚硬化型は早期に心,腎,肺病変を発症しやすい.そのような例には疾患の経過を修飾して機能・生命予後の改善をもたらす疾患修飾療法が行われ,それ以外の完成した病変に対しては対症療法が行われる.近年,本領域では,新分類基準や新規治療薬等新たな進展が見られている.

  • 庄田 宏文
    2021 年110 巻10 号 p. 2189-2195
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    特発性炎症性筋疾患(idiopathic inflammatory myopathy:IIM)は,自己免疫病態により,筋炎,及び筋外病変として皮膚,肺,心臓等多臓器障害を生じる疾患群である.IIMに関連した自己抗体の同定や,病理学的研究の集約に加えて,遺伝学的な研究結果を踏まえたIIMの病型分類・分類基準の策定が試みられている.治療については,重症・治療抵抗性病態に対する免疫抑制薬,生物学的製剤の臨床研究が進行している.

  • 松本 佳則
    2021 年110 巻10 号 p. 2196-2205
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    ANCA関連血管炎(anti-neutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitis:AAV)は抗好中球細胞質抗体(ANCA)という共通の疾患標識抗体に基づいて総称される小型血管炎で,顕微鏡的多発血管炎,多発血管炎性肉芽腫症,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に分類される.近年,ANCA関連血管炎の予後は飛躍的に改善しているが,原因は未だ不明で,治療法のさらなる開発も必要である.早期診断,臓器合併症の把握により適切な治療強度を決定し,寛解導入後も再燃を防ぎつつ寛解維持に努めることが重要である.

  • 安岡 秀剛
    2021 年110 巻10 号 p. 2206-2212
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    膠原病はPaul Klempererによって報告された疾患群である.膠原病で障害される臓器病変のうち,間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)は頻度が高く,予後を規定する重要な臓器病変の一つである.一般的に間質性肺炎は大きく“原因が明らか”なものと,“原因不明(特発性)”の2つに分けられる.“原因不明”のものを広義の“特発性間質性肺炎”と呼ぶが,一方で膠原病性の間質性肺炎は“原因が明らか”な間質性肺炎の一つに位置付けられる.本稿では膠原病に合併するILDに着目し,診療のアプローチについて概説する.

  • 波多野 将
    2021 年110 巻10 号 p. 2213-2220
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    膠原病性肺動脈性肺高血圧症(connective tissue disease-pulmonary arterial hypertension:CTD-PAH)を来たす疾患には全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc),全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE),混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD)等があるが,近年Sjögren症候群(Sjögren's syndrome:SS)に伴うPAHが注目されている.SLE,MCTD,SSによるPAHにおいては免疫抑制療法の有効性が期待できるため,その適応の有無を判断することが重要になる.特に原発性SSにおいては乾燥症状に乏しい症例が少なくなく,特発性(I:idiopathic)PAHと診断されてしまう恐れがあることに注意が必要である.一方,SScにおいてはPAHのみならず左心疾患に伴う肺高血圧(pulmonary venous hypertension:PVH)も合併し得るが,左室拡張末期圧の測定や生理食塩水負荷等をしなければPVHを検出できない,いわゆる潜在的(occult)PVHの症例が少なくないことが近年明らかとなってきた.PAHの治療としては初めから複数の薬剤を投与する,upfront combination therapyの有効性が近年明らかとなったが,SScにおいてはPVHのみならず間質性肺炎や肺静脈閉塞症(pulmonary veno-occlusive disease:PVOD)の合併例も多く,そのような症例に対してはIPAH等とは異なった治療戦略が必要となる.

MCQ
シリーズ:診療ガイドラインat a glance
今月の症例
  • 柴田 麻珠子, 落合 彰子, 杉山 史子, 岩切 太幹志, 久永 修一, 今村 卓郎, 菊池 正雄, 藤元 昭一
    2021 年110 巻10 号 p. 2240-2247
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    症例は64歳,男性.ネフローゼ症候群に対し腎生検を行い,膜性腎症(membranous nephropathy:MN)と診断した.重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)との関連が疑われたが,特発性MNの抗原であるTHSD7A(thrombospondin type-1 domain-containing 7A)が陽性であり,特発性MNとしてステロイド療法を行った.MNの原因抗原の評価は病態の把握や治療方針決定に有用となる.

  • 山田 英行, 小向 大輔, 川﨑 真生子, 柏葉 裕, 山崎 あい, 塚原 知樹, 三石 雄大, 高梨 秀一郎, 宇田 晋
    2021 年110 巻10 号 p. 2248-2255
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    72歳,男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全に対し腹膜透析を導入した.導入後9カ月に施行した経胸壁心エコー検査で僧帽弁近傍の左房内に12.5×10.6 mmの可動性腫瘤を認め,腫瘍摘出術を施行した.病理組織所見では形質細胞,リンパ球浸潤と線維芽細胞増殖を認め,免疫染色ではIgG4(immunoglobulin G4)/IgG陽性40%以上且つ10/HPF(high power field,×400)以上のIgG4陽性形質細胞を認めたことから,IgG4関連炎症性偽腫瘍と診断した.IgG4関連疾患は全身臓器に線維硬化性変化を来たす疾患であるが,本症例は左房内腫瘤で発症した極めて稀な症例であった.

  • 平松 成美, 桑野 史穂美, 徳山 清信, 岩﨑 年宏
    2021 年110 巻10 号 p. 2256-2261
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    61歳,男性.下腿出血を2回繰り返し入院した.共に出血の原因は特定できなかったが,治療することなく,入院後数日で改善した.3回目の入院時の問診で,野菜や果物を全く摂らない食生活であることが判明し,検査結果から壊血病と診断した.ビタミンC補充で症状は速やかに改善し,食生活の改善で1年間再燃していない.出血傾向の鑑別にはビタミンC欠乏症も鑑別に入れる必要がある.

  • 千葉 祐貴, 吉田 舞, 林 明澄, 秋保 真穂, 長澤 将, 佐野 晃俊, 井上 淳, 市川 聡, 佐藤 博, 宮崎 真理子
    2021 年110 巻10 号 p. 2262-2269
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    74歳,男性.体重減少,肝障害が先行した後,腎障害,汎血球減少を認めたため,当院を紹介受診.可溶性IL-2R(interleukin-2 receptor)高値を認め,血管内リンパ腫を疑ったが,診断に至らず,腎生検を施行した.非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を伴う尿細管間質性腎炎の所見でサルコイドーシスを疑い,血清ACE(angiotensin-converting enzyme)活性を測定したところ高値であったため,確定診断に至った.サルコイドーシスは全身性疾患であり,適切な生化学検査と組織診断を行うことで診断に結び付く.

医学と医療の最前線
  • 岩崎 博道, 伊藤 和広, 酒巻 一平
    2021 年110 巻10 号 p. 2270-2277
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    日常的にしばしば遭遇する細菌性肺炎等の感染症に比較すると,ダニ媒介感染症の発生頻度は決して高くない.ダニ媒介感染症のなかでリケッチア症が最も高頻度であるが,届け出数が国内最多のリケッチア症であるつつが虫病にしても年間500例程度である.診療過程で本症を想定しないと,確定診断に至らない可能性がある.一度でもリケッチア症を経験すればその特徴は記憶に残るが,初めて本症に遭遇する医師には診断することは難しい.最近,「リケッチア症診療の手引き」が公開され,経験の少ない医師への参考となっている.ダニ媒介感染症の多くは感染症法の四類感染症に分類され,早急な診断と適切な治療が行われなければ致死的経過をたどることもある.原因不明の発熱患者において,問診・視診を入念に行い患者の行動歴のなかに,自然界に生息するダニとの接点がないかを推測し,適切な診断につなげることが重要である.

  • 吉藤 元, 吉崎 和幸
    2021 年110 巻10 号 p. 2278-2285
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    リンパ節腫大の鑑別疾患として,感染症,悪性腫瘍,自己免疫疾患を除外した後に,Castleman病等の特発性リンパ増殖性疾患が残る.これらは症例間の多様性が大きく,専門科目の境界領域にあるため,ベテラン医師でなければ診断は難しく,相当に時間がかかってしまうのが現実である.近年,IL(interleukin)-6阻害薬,抗CD20抗体等の分子標的薬が登場し,早期診断の重要性が増している.リンパ球はクローンを形成するのが特徴であるが,これらの疾患は,単なる良性・悪性の問題に留まらない複雑な病態を有する.本稿では,図を用いて論理的にこれらの疾患を整理し,最新の知見を盛り込んで解説する.

  • 鈴木 祐介, 二瓶 義人, 鈴木 仁
    2021 年110 巻10 号 p. 2286-2292
    発行日: 2021/10/10
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル フリー

    IgA(immunoglobulin A)腎症は,世界で最も頻度の高い原発糸球体腎炎で,特に日本を含む東アジアで頻度が高い.未治療の場合,約4割が末期腎不全に至る予後不良の疾患であり,国内外を問わず本症に起因し若くして維持透析となる患者は多く,医療経済上も深刻な問題となっている.近年,糖鎖異常IgAと関連免疫複合体が本症の発症・進展のカギを握ることが証明され,その産生抑制と糸球体沈着後の炎症制御を目的とした治療薬の開発が進んでいる.なかでも,粘膜面で感作を受けた成熟IgA産生B細胞を標的とした薬剤や,糖鎖異常IgAの糸球体沈着に伴い活性化される補体古典経路及びレクチン経路を標的とした薬剤の国際治験が進行中で,その結果が期待されている.こういった複数の有望な根治治療薬の開発が進み,治療選択肢が増えれば病期・病態に応じた治療が可能となり,本症による透析移行の阻止は実現可能と考える.本稿では,これら薬剤に関する病態の背景や,現状を概説する.

シリーズ:「一目瞭然!目で見る症例」
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