日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
98 巻, 7 号
選択された号の論文の42件中1~42を表示しています
ニュース
会告
特集●出血性疾患:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.総論
  • 柏木 浩和
    2009 年98 巻7 号 p. 1554-1561
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    止血機構は,血管内皮細胞,血小板,凝固/凝固制御系および線溶系が相互に密接に作用しながら,血流の恒常性を維持する極めて精緻かつ巧妙なメカニズムである.出血性疾患を正しく診断し,治療および予防を行うためには,この生理的な止血機序を理解することが必要である
  • 加藤 淳
    2009 年98 巻7 号 p. 1562-1568
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    出血傾向は血小板・血管壁,凝固・線溶系,または両方の異常により生じるが,迅速な診断,対応が必要である.スクリーニング検査としては,血小板数,プロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間でほぼ十分であるが,これらに異常がない場合は出血時間,XIII因子,α2-プラスミンインヒビター,プラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1活性,またDICが疑われる場合はフィブリノゲン,FDPを測定する.
  • 松原 由美子
    2009 年98 巻7 号 p. 1569-1574
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    患者に出血傾向が認められる場合において,出血性疾患の診断アプローチのための臨床検査として血小板検査・凝固線溶系検査が行われる.はじめに血液サンプルを対象に血算,プロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),FDP,出血時間,血液塗抹標本などによるスクリーニング検査を行う.スクリーニングにより血小板異常が考えられる場合は血小板機能検査へ,凝固異常が考えられる場合は凝固因子の測定へ,と詳細な検査へと進めていく.出血傾向をきたす疾患の診断のための臨床検査法は比較的感度の高いものが多いが,種々の要因により検査値に影響を及ぼされる検査項目に対しては検査値を読む際に十分注意したい.
II.検査法の進歩
  • 小池 由佳子
    2009 年98 巻7 号 p. 1575-1579
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    血小板減少症の病態鑑別は臨床上重要である.骨髄における血小板造血を間接的に知る指標として網血小板測定が報告され,近年多項目自動血球分析装置を用いて幼若血小板比率(immature platelet fraction:以下IPF)として全自動で測定可能となった.またトロンボポエチンは巨核球・血小板造血を促進する液性因子であり,トロンボポエチンによる血小板造血機構の制御が明らかになるとともに医薬品への応用が進んでいる.
  • 桑名 正隆
    2009 年98 巻7 号 p. 1580-1585
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    血小板は様々な病態において自己抗体,同種抗体の標的となる.抗血小板抗体は血小板減少を誘発する病的活性を持ち,それらの対応抗原は血小板膜に発現する種々の糖蛋白である.PAIgG,PBIgGは抗血小板自己抗体の臨床検査法として感度,特異度に問題があり,診療における有用性は低い.そのため,GPIIb/IIIaなど血小板膜糖蛋白に特異的な抗体あるいは抗体産生細胞を検出するアッセイ系が開発されている.これら特異的検出系は抗血小板自己抗体により惹起される免疫性血小板減少性紫斑病の診断に有用であり,それらを項目として含んだ新たな診断基準案が提案されている.
  • 松本 雅則, 藤村 吉博
    2009 年98 巻7 号 p. 1586-1592
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    von Willebrand因子切断酵素(ADAMTS13)は,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)との関連で注目されている.ADAMTS13活性測定法は,技術的に非常に難しい検査であったが,効率よく切断される最小基質VWF73の同定以降,簡便で短時間に結果の得られる方法が登場し,今や外注検査となっている.これによって,TTPの診断治療に利用されるのみでなく,血小板輸血の適否の決定にも利用されている.
III.先天性疾患の診断と治療
  • 國島 伸治
    2009 年98 巻7 号 p. 1593-1598
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    先天性巨大血小板症は先天的に巨大血小板と血小板減少症を呈する疾患群の総称である.従来,本疾患群は極めてまれであると考えられていたが,日常診療で十分遭遇する頻度で存在し,慢性あるいは難治性の特発性血小板減少性紫斑病と診断され不必要な治療を受ける症例が少なくないことが判っている.Bernard-Soulier症候群とMay-Hegglin異常に代表されるMYH9異常症が最も頻度が高い.先天性巨大血小板症のおよそ半数の症例で,遺伝子レベルでの確定診断が可能となった.
  • 篠澤 圭子, 福武 勝幸
    2009 年98 巻7 号 p. 1599-1607
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    先天性血液凝固因子欠乏症・異常症は,凝固因子の単独あるいは複合の量的・質的異常に基づき,凝固因子活性が低下して出血傾向を示し,他方,血栓傾向を示す.血友病やその他の発生頻度が稀な本疾患群の遺伝子解析は病因遺伝子変異を直接検出して診断を確定し,臨床的また科学的に高い有用性と意義を持つ.遺伝子変異と表現型のデータを集積することは,新しい治療法や分子病態解明などの基礎データとして非常に重要である.
  • 松下 正
    2009 年98 巻7 号 p. 1608-1618
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    2008年より血友病に対する凝固因子補充療法/止血治療のガイドラインが作成されており,インヒビターのない患者に対しては個人差を考慮し,投与法に一定の幅をもうけると同時に,手術・処置で持続輸注をはじめて推奨することとした.一方インヒビターを保有する先天性血友病患者に対しては出血の重症度,最新のインヒビター値および既往免疫反応を考慮してバイパス止血療法もしくはインヒビター中和療法を選択することが推奨されている.今後von Willebrand病も含めた先天性出血疾患の補充療法においては科学的な根拠に基づきつつ,より実践的な治療指針が必要とされるだろう.
IV.後天性疾患の診断と治療
  • 藤村 欣吾
    2009 年98 巻7 号 p. 1619-1626
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病(ITP:idiopathic thrombocytopenic purpura)には急性型と慢性型があり,前者は5歳以下の小児に,後者は中高年齢者に,発症が多い.慢性型の診断には免疫学的特徴と血小板産生動態を反映する検査を取り入れた感度,特異度が高い診断基準が提案されている.治療目標は薬物治療による副作用との兼ね合いから,血小板数を3~5万以上に維持することにおく.
    緊急時を除いて,ピロリ陽性症例では除菌療法を行い,除菌効果のない症例やピロリ菌陰性症例に対して副腎皮質ステロイド療法,これに続く摘脾療法を行う.これらに反応しない症例は難治性ITPとして種々の治療法を選択するが,保険適応,効果のエビデンス,副作用などから最終的には副腎皮質ステロイド維持量で経過を観察する症例も多い.
  • 上田 恭典
    2009 年98 巻7 号 p. 1627-1633
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と溶血性尿毒症症候群(HUS)は,微小血管性溶血性貧血,破壊性血小板減少症,微小血管血栓症に伴う臓器障害を特徴とする.典型的なTTPは,von Willebrand factor切断酵素であるADAMTS13の活性低下に起因し,後天性特発性TTPでは新鮮凍結血漿を用いた血漿交換と免疫抑制療法の併用が予後を著明に改善する.典型的なHUSは腸管出血性大腸菌によるShiga-like toxin1,2の糸球体内皮障害により生じる.保存的全身管理が主体となる.
  • 和田 英夫, 伊藤 尚美
    2009 年98 巻7 号 p. 1634-1639
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation:DIC)には種々の定義や概念があるが,国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis:ISTH)のものが最も普及している.診断基準には,厚生労働省基準,ISTH-overt DIC診断基準,急性期DIC診断基準の3つがあり,同様なスコアリング方式であるので,診断能力はほぼ同等である.近年,止血系分子マーカーを用いた診断基準が望まれ,種々の検討がなされているが,non-overt-DIC診断基準修正版も有力な候補のひとつである.
  • 朝倉 英策, 林 朋恵, 前川 実生, 門平 靖子
    2009 年98 巻7 号 p. 1640-1647
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    DIC治療には,重要性の高い順に,基礎疾患治療,抗凝固療法,補充療法,抗線溶療法がある.DICは,線溶抑制型,線溶亢進型,線溶均衡型に病型分類され,病態に適した治療法を選択する.抗凝固療法の治療薬としては,ヘパリン類(ダナパロイド,低分子ヘパリン等),アンチトロンビン濃縮製剤,合成プロテアーゼ阻害薬,遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤が知られており,薬剤の特徴を理解して使用すべきである.
  • 毛利 博
    2009 年98 巻7 号 p. 1648-1654
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    後天性凝固異常症は,様々な原因から出血症状をきたす疾患である.基礎疾患の治療により改善することもあるが,適切な診断と早期の治療がなされないと死亡率が高いものもある.後天性血友病は,出血症状が顕著である.凝固第VIII因子に対するautoantibodyの出現により発症し,治療は免疫抑制療法が主流である.AVWSはVWDと同様に出血症状が軽微なため看過されやすい.基礎疾患を有し,出血時間の延長,VWFの高分子マルチマーが減少している.治療はDDAVP,VWFの補充療法を行なう.
  • 長井 一浩, 上平 憲, 大戸 斉
    2009 年98 巻7 号 p. 1655-1661
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    出血傾向を示す病態において,血小板製剤は血小板の量的・機能的異常を,新鮮凍結血漿製剤は主に複合型凝固異常を,各々改善する目的で使用される.しかしこれらは献血由来同種製剤による補充療法であるため,効果は一過性である.従ってこれら輸血療法は,適応病態を十分に評価し,輸血による効果がリスクを凌駕する場合に,原因病態への治療や止血操作と共に,必要最少量を計画的に実施すべきである.
V.最近の話題
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 内田 信一
    2009 年98 巻7 号 p. 1720-1725
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    偽性低アルドステロン症II型は,優性遺伝形式を示す遺伝性の高血圧疾患であり,高血圧以外に高K血症,アシドーシスを呈する.サイアザイド利尿剤が著効することから腎臓でのNaCl再吸収亢進がその原因とされてきたが,原因遺伝子として同定された遺伝子は,機能未知であったリン酸化酵素であるWNKキナーゼであった.ヒトで見つかったWNK4の遺伝子変異と同じ変異を持つ遺伝子組み替えマウスを作成し解析することで,偽性低アルドステロン症II型という病態のみならず,日々の腎臓でのNaCl出納調節にもWNKキナーゼを含む腎臓での新たな刺激伝達系が働いていることが明らかとなった.
  • 小島 貴彦, 代田 浩之
    2009 年98 巻7 号 p. 1726-1732
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    2002年に米国のNFK(National Kidney Foundation)により"CKD:chronic kidney disease"という概念を提唱された.その背景として,蛋白尿や腎機能低下とCVD(cardiovascular disease)の強い相関が明らかとなり,両者の包括的な治療が必要となったことが挙げられる.CKD患者における冠動脈疾患スクリーニングは重要であるが,末梢動脈疾患や自律神経の異常を合併することも多く運動負荷が十分にかけられないことも多い一方で,造影剤腎症のリスクも高く慎重に検査計画をたてなければならない.治療は蛋白尿・アルブミン尿を指標とすること,レニン・アンジオテンシン系の抑制,CKD・CVD共通のリスクファクターの十分な管理が重要である.
  • 畠山 修司, 小池 和彦
    2009 年98 巻7 号 p. 1733-1741
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    インフルエンザウイルスは日々変化を遂げ,時にダイナミックに変化する.薬剤に対してもまた,年々その特徴を変えながら,確実に耐性を獲得する方向にシフトしているようにみえる.2003年以降,世界的にアマンタジン耐性ウイルスが拡がった.かつて,ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスは低頻度にしか生じず,たとえ生じたとしてもヒトの間で拡がる可能性は低いと考えられていた.しかし,2007/2008年には,オセルタミビル耐性A(H1N1)ウイルス(Aソ連型)が広く流行する結果となった.今後は以前に増して,流行しているウイルスの薬剤耐性に関する情報と,患者のインフルエンザ関連合併症のリスクをもとに,個々的確な治療法を判断する必要がある.ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスの生物学的特性はまだ十分に解明されておらず,さらなる知見の集積が望まれる.
専門医部会
診療指針と活用の実際
シリーズ:一目瞭然! 目で見る症例
北陸支部第33回教育セミナーまとめ
シリーズ:考えてみよう (臨床クイズ) 問題
プライマリ・ケアにおける内科診療
総合内科専門医の育成のためにII
シリーズ:指導医のために
シリーズ:世界の医療
シリーズ:考えてみよう (臨床クイズ) 解答
地方会
会報
feedback
Top