COVID-19パンデミックに伴い,インフルエンザなどの急性呼吸器感染症を中心に感染症の発生動向に大きな変化が生じた.個人レベル,社会レベルで行われてきた様々なCOVID-19感染対策が影響したことが最も考えられ,感染対策の効果が示されたとも考えられる.同じ呼吸器感染症でも疾患によって動向が異なることや,感染経路の異なる疾患を中心に診断機会の減少がサーベイランスに影響している可能性に留意する必要がある.
COVID-19後に様々な症状が遷延することがあり,Long COVID(コロナ後遺症,新型コロナ罹患後症状)と呼ばれている.SARS-CoV-2感染者の4~40%程度で発症すると報告されているが,症状が多彩であり,一般的な検査では異常があまり見られないことも多く,診断・治療に苦慮されている先生方も多いのではないかと考える.本稿では,症状及びその生活への影響,現在までに分かっている病態,そして今できる対処法について,簡単にご紹介したい.
新型コロナウイルス感染症においては,重症化リスクのある患者に発症後早期にレムデシビル,ニルマトレルビル/リトナビルやモルヌピラビルなどの抗ウイルス薬を投与することが重要である.また,酸素吸入や人工呼吸器管理を要する中等症,重症患者では抗ウイルス薬に加えてデキサメタゾン,バリシチニブ,トシリズマブなどの免疫調節薬を使用する.流行株によって薬剤の効果が変化する可能性もあり,最新のガイドラインを参照する.
2021年2月に始まった本邦における新型コロナワクチンの接種回数は累計約3億回となり,高齢者の90%以上が3回の接種を終えた.この間より多くの安全性データが蓄積した他,変異株に対する有効性や長期的な有効性に注目が集まっている.2022年に入り,4回目の接種が開始され,二つの新しいワクチンが薬事承認された他,新たな国産ワクチンの開発・申請が控えている.ウイルスの進化と共に日々変化するワクチン関連情報を俯瞰する.
新型コロナウイルス感染症の流行は本邦における感染症専門医療職の圧倒的な不足を露呈した.感染症専門医数は日本感染症学会の提唱する人数の半分程度で,地域偏在も認めている.専門医制度の変革もあり早急な専門医数の増加は期待できず,各医療職の感染症専門職は中小規模の地域医療機関でも不足しており,一般医療職による感染症診療・対策の多職種連携実践の促進はその課題解決策の一つになると考えられる.
71歳,女性.静脈血栓塞栓症と診断され,血栓性素因として,ビタミンB12欠乏症に起因する高ホモシステイン血症が指摘された.ビタミンB12欠乏症の原因はHelicobacter pylori感染症・萎縮性胃炎と考えられた.一次除菌とビタミン補充,抗凝固療法により,静脈血栓塞栓症の再発なく経過した.静脈血栓塞栓症の診療においては,血漿総ホモシステイン値の測定を含めた危険因子の検索が重要である.
76歳,女性.40年前に気管支喘息と診断され,吸入ステロイド薬にて治療中であった.湿性咳嗽が数カ月間持続し,気管支喘息治療を強化するも症状は改善しなかった.胸部CT,喀痰検査,気管支内視鏡検査の結果,気道限局型Mycobacterium abscessus subsp. massilience症と診断した.気道に限局した非結核抗酸菌感染症は難治性喘息との鑑別が重要である.
37歳女性,乳癌術後化学療法中,顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)製剤投与後より発熱,頸部痛が出現.高度の炎症所見と大動脈弓中心に大型血管炎の所見を認めた.G-CSF関連血管炎と診断し,大量ステロイド治療を開始し,速やかに症状,検査所見は改善.ステロイドは短期間で漸減中止し,再燃はない.G-CSF投与歴のある患者の発熱時は血管炎発症も念頭に問診,画像検査をすすめるとともに早期のステロイド治療も考慮すべきである.
難治性貧血疾患では赤血球輸血が必要であるが,頻回の輸血は鉄過剰症のリスクとなる.過剰鉄は活性酸素種の産生を介して細胞障害を引き起こし,低リスクMDSなど一部疾患では生命予後にも影響することが知られている.このため,輸血後鉄過剰症では鉄キレート療法が行われる.輸血依存になった患者では定期的に血清フェリチン値を確認し,フェリチン値500 ng/ml以上および総赤血球輸血量20単位以上で輸血後鉄過剰症と診断する.鉄キレート療法はフェリチン値1,000 ng/ml以上で開始し,有害事象などの問題がなければフェリチン値が500 ng/ml未満になるまで治療を継続する.鉄キレート療法によって臓器障害は改善し,低リスクMDSでは死亡リスクの低減も期待される.そして,一部症例では造血能の改善も認められることが知られている.本稿では輸血後鉄過剰症を主体に,原発性鉄過剰症を含めて鉄過剰症の病態と治療について解説する.
エビデンスに基づいた精神療法である認知行動療法は,これまでうつ病や不安症のような精神疾患に用いられてきた.より簡便な低強度の認知行動療法では,ワークブックやデジタル・セラピューティックスとしてのアプリの形で患者に提供することが可能であり,禁煙外来だけでなく,プライマリケアで通常みられる肥満症,糖尿病,肝疾患,慢性疼痛などの内科診療でも大いに活用できる可能性があるので,本稿で紹介する.