特発性間質性肺炎とは原因不明の間質性肺疾患の一群である.診断において,確信度を用いた暫定診断や,作業診断(高確信度の診断),疾患の挙動を評価することは,診断や治療方針の決定・変更に有用である.これらによる特発性肺線維症の早期診断に加え,進行性線維化を伴う間質性肺疾患の概念の導入により,予後不良の臨床経過を呈する一群への抗線維化薬治療が可能となった.専門医と非専門医との連携の意義が高まっている.
本疾患はIII・IV型アレルギー反応によるアレルギー性間質性肺疾患である.小葉中心部から線維化して予後不良になる.2020年国際ガイドラインから非線維性と線維性の分類となった.2022年春に日本呼吸器学会から診療指針が発表された.①抗原曝露評価,②HRCT所見,③BALリンパ球分画±組織所見をMDD(多職種合議)診断する.抗原回避が治療の基本で,進行する場合は炎症と線維化の程度でステロイド・免疫抑制薬・抗線維化薬の単剤あるいは併用療法を行う.
膠原病に合併する間質性肺疾患(connective tissue diseases-associated interstitial lung disease:CTD-ILD)は,膠原病患者の予後を規定する合併症として重要である.CTD-ILDは,臨床像,組織パターン,画像パターンが多彩であり,基礎となる膠原病によってもその頻度等が異なる.最近,抗線維化薬などの新規治療法が開発されてきたが,その位置づけも含め治療に関するエビデンスは未だ乏しく,さらなる研究の発展が期待される.
間質性肺疾患は多岐にわたり,それぞれに原因や病態が異なるが,その中に進行性の線維化という共通項を持つフェノタイプが存在する.特発性肺線維症がその代表であるが,膠原病肺,過敏性肺炎,特発性非特異性間質性肺炎等の様々な疾患の一部が同様な経過を呈する.これら疾患横断的なフェノタイプは進行性線維化を伴う間質性肺疾患PF-ILDと呼ばれ,治療薬として抗線維化薬ニンテダニブが適応追加された.PF-ILD患者を抽出し,適切な治療に結び付けることが求められる.
薬剤性間質性肺疾患は,びまん性肺疾患の診療において,鑑別の1つとして常に考えておく必要がある.患者が薬と認識していない栄養食品やサプリメントも含め,すべての薬剤は肺障害を来たす可能性があり,注意深い問診による薬剤投与との時間的関連の確認と,他疾患の除外が診断の基本である.分子標的薬や生物学的製剤,免疫チェックポイント阻害薬などの登場によって,今後も薬剤性間質性肺疾患の増加,多様化が予想される.
職業に伴う間質性肺疾患は,過敏性肺炎とじん肺に大きく分かれる.いずれも早期に診断し,原因となる危険因子からの回避をすることが病態を進行させないために重要である.早期診断には,職業歴及び原因抗原・粉じん曝露歴の聴取が極めて重要であり,各疾患の特徴,原因となりうる曝露抗原,診断方法,画像所見を把握しておく必要がある.
間質性肺疾患の診断を進めていく上で,原因となり得る要因について十分な問診,身体所見,画像所見,呼吸機能,血液検査,組織検査などを参考に多分野の専門医による集学的検討(MDD)を行うことが推奨されている.その中で,高分解能CTを用いた診断は必須であり,実地臨床や高次医療機関のMDDで,間質性肺疾患,特に慢性線維化性間質性肺炎の画像診断を行うポイントについて概説する.
間質性肺炎の分類は,Liebowの分類以来病理組織学的分類がその基準として用いられてきた.しかし,2002年のATS/ERSの特発性間質性肺炎のコンセンサスステイトメントが公表されて以降,臨床,画像,病理を統合した多分野合意分類が行われるようになり病理医は9つの組織パターンに分類する役割を担うようになった.代表的な組織パターンであるUIP,NSIP,OP,DADの像を紹介し,特発性間質性肺炎との鑑別が問題になる疾患群の特徴的な組織像を概説する.
67歳,女性.肺腺癌術後の1年毎の胸腹部CT(computed tomography)で膵体部に新規に出現した膵腫瘤及び腫瘤の乳頭側に限局した膵萎縮部位を認めた.腫瘤に対して超音波内視鏡下穿刺吸引法(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration:EUS-FNA)を施行すると膵神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)G1であった.腫瘍は小さいものの1年の経過で出現しており,増大リスクのため,腹腔鏡下膵体尾部切除を施行した.病理学的には膵NENと限局性膵萎縮部位には上皮内腫瘍性病変を認めた.
76歳,男性.A診療所にて尿道損傷による肉眼的血尿を機に,アスピリンからエドキサバンへ内服変更された後,腎機能低下を認めた.当院にて腎生検を施行し,抗凝固薬関連腎症と診断した.抗凝固薬中止後,腎機能は2,3週間ほどで改善し,肉眼的血尿も消失した.直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOACs)やワルファリン等抗凝固薬内服歴がある患者で急性腎障害が認められた場合は,原因として抗凝固薬関連腎症を念頭に置く必要がある.
症例は73歳の右利きの女性.arm levitationを主訴に来院した.脳MRI(magnetic resonance imaging)拡散強調像で右大脳皮質に高信号域を呈し,髄液中の総タウ及び14-3-3蛋白高値,RT-QUIC(real-time quaking-induced conversion)法での髄液中異常プリオン蛋白陽性よりCreutzfeldt-Jakob病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)と診断した.本例は初期症状としてarm levitationを呈した.初期症状としてarm levitationを呈するCJDがあり,arm levitationの鑑別疾患にCJDを加える必要があると考えた.
55歳女性.頻回嘔吐,意識障害で来院した.結腸炎で入院後,肺水腫を来たし,心エコー検査でたこつぼ様壁運動が確認された.各種検査より褐色細胞腫と診断し,褐色細胞腫クリーゼからたこつぼ心筋症を来たし,急性心不全に至ったと推測された.褐色細胞腫は多彩な臨床症状を呈し,診断に苦慮することが多い.特に誘引がない若年急性心不全,著明な高血圧を認めた場合は,本疾患を疑う必要がある.
慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者は新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)での死亡率や重症化率が高く,その重症度ステージによらず高リスクな集団である.特に,血液透析患者では集団での濃厚な医療曝露のため感染リスクが高く,感染予防・適切な隔離対応が必要となるが,入院病床数の問題から感染状況次第で診療所では感染確定患者の対応を要するケースも多く感染伝播が懸念される.腎臓病患者では免疫機能の低下からワクチン接種の有効性が低い可能性も示唆されているが,感染や重症化の予防のため重要と考えられる.COVID-19においては異常免疫やウイルスによる直接傷害等からの急性腎障害(acute kidney injury:AKI)が多いことも報告されており,重症化や死亡に関わる因子である.AKIの発症によらない長期的な腎機能の低下も報告されており,感染そのものが将来的な腎不全のリスクとなりうる.医療者はCKD患者におけるこれらのリスクを理解し,感染予防を含めた患者への適切な指導を行うことが重要である.
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の分子病態の解明により,種々の新規分子標的薬が開発されている.FLT3阻害薬やIDH1/2阻害薬のように特定のドライバー遺伝子変異に対する標的薬(actionable mutation)と,BCL2阻害薬やSMO阻害薬のように遺伝子変異に依存せず,広くAMLに共有される機能分子に対する阻害薬(broad approach),さらに抗体医薬(CD47抗体,TIM3抗体)も開発されている.詳細なマルチオミクス解析の導入により,新たな治療標的分子の同定と新規薬剤の開発が進められ,従来の予後分類に基づいた画一的な治療からAML個別化医療の展開が期待される.