日本内科学会雑誌
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101 巻, 6 号
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内科学会NEWS
目次
特集 COPD:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.疫学・病因
  • 巽 浩一郎
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1532-1537
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    COPDは閉塞性換気障害が診断上重要である.しかし,閉塞性換気障害を呈していても労作時呼吸困難を認めない場合もあり,自覚症状には個人差が大きい.逆に労作時呼吸困難を認めてもCOPDでない場合も多い.さらに呼吸機能の経年変化の個人差は大きく,ある一断面での呼吸機能検査値のみでは,その後の変化の予測は困難である.呼吸不全への進展を抑制,COPDによる死亡を減少させるためには,個人差を踏まえたCOPDの疫学を認識する必要がある.
  • 辻 隆夫, 永井 厚志
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1538-1542
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    Chronic Obstructive Pulmonary Disease(COPD:慢性閉塞性肺疾患)は,タバコ煙を主とする有害物質(外因性因子)の長期間吸入により好中球,マクロファージ,CD8陽性Tリンパ球が活性化され,慢性炎症が生じ肺が傷害されることが主な発症機序と考えられる.しかし,喫煙者の約20%にしかCOPDは発症しないため,宿主側の因子(内因性因子)もCOPDの病因に関与している.したがって,COPDは様々な外因性因子と内因性因子が関与する多因子疾患と考えられる.
II.診断と検査
  • 星野 友昭, 平井 良, 井上 譲
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1543-1548
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    COPDの診断には気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)70%未満がCOPD診断の必要条件である.%1秒量(1秒量の予測値に対する比)によって,80%以上をI期(軽度),50%以上~80%未満をII期(中等度),30%以上~50%未満をIII期(高度),30%未満をIV期(きわめて高度)と分類する.COPDのガス交換機能の低下は,DLcoの測定により評価できる.
  • 平井 豊博
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1549-1554
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    Chronic Obstructive Pulmonary Disease(COPD:慢性閉塞性肺疾患)の診療において,診断,合併症の鑑別など画像診断の役割は大きい.CT,MRIなど画像診断機器や画像解析技術の進歩によって日常臨床や学術研究での画像を用いた検討が数多くなされてきた.画像診断は,COPDの形態学的変化(肺気腫,気道病変)を定量的に評価できるだけでなく,近年では,機能を反映した画像も提供することでCOPDの病態解析に大きく貢献している.今後のさらなる発展と臨床へ応用が期待される.
  • 吉川 貴仁, 藤本 繁夫
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1555-1561
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する運動負荷検査には,呼気ガスを分析する心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary exercise test:CPET)のほか,最近では6分間歩行試験(6MWT)やシャトルウォーキングテスト(SWT)といった簡易な歩行試験が行われている.これらの検査により,患者の日常生活における労作時の状況を再現でき,運動制限の原因や運動耐容能を総合的に評価できる.
III.合併症(全身併存症)
  • 吉川 雅則, 木村 弘
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1562-1570
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    COPDにおいて栄養障害は予後や病態と密接に関連する重要な併存症である.栄養障害の原因として代謝亢進や全身性炎症,内分泌ホルモンの分泌動態の変化などが複合的に関与している.栄養療法と運動療法の併用とともに基盤病態である全身性炎症のコントロールが重要である.栄養管理の手法や有効性に関するエビデンスは確立されていないが,グレリンは摂食促進に加えて蛋白同化作用と抗炎症作用を有する治療として期待される.
  • 岩本 博志, 河野 修興
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1571-1577
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    COPDは呼吸器疾患の中でも全身性併存症を伴う事が多く,息切れ症状や気流制限だけでなく併存症も併せて評価する必要がある.心循環器疾患の併存は心肺機能の低下に繋がり死因にもなり得る事から対策が重要であり,心循環器疾患に潜んでいるCOPDの問題が本邦でも指摘されている.COPD治療の進歩と共にCOPDと心循環器疾患の併存例の診療に関するエビデンスも増加し両疾患の併存の的確な診断治療が重要になっている.
  • 久保 惠嗣, 藤本 圭作
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1578-1585
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    肺気腫と肺線維症が併存する病態は1990年に報告され,2005年にcombined pulmonary fibrosis and emphysema(CPFE:気腫合併肺線維症)と命名された.殆どが男性で重喫煙者.気腫は上肺野,肺線維症は下肺野にみられる.呼吸機能では気流制限や肺過膨張所見が軽度ながら肺拡散能が著明に低下し労作時の低酸素化が著しい.KL-6は上昇する.肺癌の合併が多い.特発性肺線維症に比し予後不良で,肺高血圧の存在が高頻度で予後を規定する重要な因子とされている.
  • 坂東 政司, 杉山 幸比古
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1586-1593
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙とは独立した肺癌の危険因子の1つで,COPD患者の肺癌合併リスクはCOPD非合併喫煙者の3~4倍である.一方,肺癌はCOPDの肺合併症の1つで,気流閉塞が軽度であるCOPDにおける重要な死因である.COPD合併肺癌の早期発見・早期治療を行うためにはCOPD自体を早期に発見することが極めて重要であり,かかりつけ内科医の果たす役割が大きい.COPD合併肺癌の治療では,高齢,低肺機能,心・血管疾患の合併,低栄養などにより全身状態が不良であることも多く,肺癌の臨床病期のみならずCOPDの重症度を多面的・総合的に評価した上で治療方針を決定することが重要である.
IV.治療
  • 杉浦 久敏, 一ノ瀬 正和
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1594-1600
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,従来より,治療困難な疾患との認識があったが,近年の治療薬の発展により,呼吸機能や自覚症状,QOLや生命予後の改善がもたらされている.本項ではCOPDの薬物治療の中心をなす抗コリン薬について,作用機序および呼吸機能や症状の改善効果について近年の大規模試験の結果を中心に概説する.
  • 鴨井 博
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1601-1608
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    気管支拡張薬はCOPDの薬物療法の中心である.長時間作用性β2刺激薬は,気流閉塞や肺過膨張の改善,呼吸困難感の軽減,運動耐容能の改善に寄与しCOPDの増悪を予防し,COPD患者のQOLに対しても改善効果を示す.また長時間作用性β2刺激薬/ステロイド薬配合剤は,それぞれの単剤使用にまさる呼吸機能改善効果を長期にわたって発揮する.増悪抑制効果に関しても,長時間作用性抗コリン薬と同等の効果を示し,さらに疾患進行や生命予後に関しても改善する可能性がある.
  • 塩谷 隆信
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1609-1617
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    呼吸リハビリテーション(呼吸リハビリ)は,慢性呼吸器疾患患者の日常生活を支援する新しい医療システムである.この中で,包括的呼吸リハビリは,多専門職の学際的医療チームにより呼吸理学療法,運動療法,栄養療法,患者教育などの種目を中心にして実施される.呼吸リハビリは,慢性閉塞性肺疾患(COPD)において,呼吸困難の軽減,運動耐容の改善,健康関連QOLおよびADLの向上に関して,その臨床的な有用性が科学的エビデンスとして確立されている.
  • 塩田 智美, 高橋 和久
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1618-1623
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    COPDによる慢性呼吸不全への標準的治療法である在宅酸素療法は生存率の改善に貢献する.高二酸化炭素血症とその換気障害に伴う臨床症状を有する際は,補助換気療法である非侵襲的陽圧呼吸換気療法(NPPV)の適応である.NPPVは,急性期において気管内挿管への移行や感染症の発生率を有意に低下させ,慢性期において肺胞低換気を改善し,呼吸筋負荷を軽減する.HOT,NPPVの導入には,医師の適切な適応基準の判断が重要である.
  • 平塚 昌文, 岩崎 昭憲
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1624-1630
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    内科的治療が限界に達した肺気腫に対する外科治療として,Lung Volume Reduction Surgery(LVRS)と肺移植が挙げられる.LVRSは米国での多施設共同試験NETT studyを中心とした報告から,ある程度呼吸機能が温存された上葉優位型の肺気腫がよい適応と考えられている.しかしLVRS後の機能改善は一時的であり,最重症例では術後死亡率も高くなり慎重な適応決定が必要となる.一方,COPDに対する肺移植は1980年代,Cooperらによって導入された.呼吸機能的にはLVRS対象のCOPDより重症例が適応となる.生存延長に関する寄与は少ないもののQOL向上には大きな効力を発揮し,欧米では多くのCOPD症例の肺移植が実施されている.我国では実施は10例程度に止まっているが,臓器移植法改正に伴う脳死ドナー増加で今後は症例数が増加する事が予測される.
V.COPDガイドライン
  • 猪又 崇志, 西村 正治
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1631-1636
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    COPDの診断・治療に関しては,本邦では日本呼吸器学会のCOPDガイドライン第3版,国際的にはGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)が利用されている.最新版のGOLDガイドライン2011での主な改訂は,従来の対標準1秒量のみに基づいた病期分類を破棄し,呼吸困難などの自覚症状と急性増悪の発症リスクに基づく多面的評価を提唱した点である.治療も症状軽減や急性増悪防止を主眼とするよう推奨されたが,実際の薬物選択については今後本邦での評価が必要である.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 阿部 康二
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1684-1690
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    後期高齢者の増加に伴って認知症患者数も急増しており,2010年には全国で242万人の認知症患者がいる.日本人の寝たきり原因の第1位は脳卒中であり,次いで高齢衰弱,骨折転倒,認知症,関節疾患の順となっているが,この中には高齢者特有の内科的合併症を持ったケースが多い.2011年から認知症治療薬が4剤使用可能となり,日本における認知症診療にとっての新しい発展の年と位置付けられるが,急速に変わりつつある家族関係の中で,患者の身辺にあって患者自身と家族を熟知している内科医の役割は今後ますます重要なものになってくるものと考えられる.
  • 山岸 文雄
    2012 年 101 巻 6 号 p. 1691-1697
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/10
    ジャーナル フリー
    結核は世界人口の1/3が感染しており,年間880万人が発病し,145万人が死亡している.わが国でも年間2万人以上が発病し,結核の中まん延国といわれている.わが国の結核発病の特徴は,高齢者結核の増加,地域格差の拡大,ハイリスク者への集中などがあげられる.結核の確定診断は結核菌の証明であり,最近は核酸増幅法検査が普及し,迅速に診断確定されるようになった.治療はイソニアジド,リファンピシンを主軸に,ピラジナミドを含む初期強化短期化学療法が推奨される.結核予防法は2007年に感染症法に統合され,初感染結核に対する予防投与は,化学予防から潜在性結核感染症の治療と名称が変わり,年齢制限が廃止された.また発病リスクの高い既感染者も治療の対象とした.結核感染の診断には5歳以下の小児を除き,ツベルクリン反応検査にかわり,既往のBCG接種の影響を受けない結核感染診断キットのクォンティフェロンTBゴールドが用いられている.
専門医部会
シリーズ:内科医に必要な救急医療
シリーズ:「一目瞭然!目で見る症例」
シリーズ:考えてみよう 臨床クイズ 問題
シリーズ:日本発臨床研究の紹介と反省点を語る
シリーズ:指導医のために:プロフェッショナリズム
シリーズ:内科医と災害医療
シリーズ:考えてみよう 臨床クイズ 解答
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