症例は15歳男性,高校生.主訴は湿性咳嗽.既往歴は慢性副鼻腔炎,滲出性中耳炎,外耳炎. 12歳頃から鼻汁,湿性咳漱を自覚していた.高校1年生の健康診断で胸部X線像上の異常を指摘され,当院での胸部X線縁, CT等の精査にて両下肺を中心に散布する小結節性病変と気管支の拡張を認め副鼻腔気管支症候群と診断した.喀痰は粘膿性で,
Bordetella bronchisepticaのみを繰り返し検出した.本菌は,ブタ,イヌ,マウス等の哺乳類で気道感染症の起炎菌となり得るとされているが,ヒトでの報告は,肺炎,気管・気管支炎のみで,これまでのところ本例のような副鼻腔気管支症候群の報告はない.
Bordetella bronchisepticaの産生する菌体外毒素が気道の線毛上皮を傷害することが動物実験で報告されており,本菌はヒトにおいても慢性気道感染症の発症要因の一つになり得るものと考えられた.
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