原発性肺高血圧症(PPH)における非侵襲的診断法を検討するため, 7例の本症患者(男2,女5,年令14~48才,平均30才)に心エコー図検査を施行,左-右短絡性疾患に続発した肺高血圧症(以下SPHと略す)と比較した. PPH群の肺動脈平均圧は42~90mmHg,平均60mmHg,肺血流量は1.85~3.48
l/min/m
2,平均2.64
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2であつた.心エコー図所見として右室拡張期径の拡大が全例にみられたに反し,左房,左室径は正常,もしくは小であつた.僧帽弁後退速度は低下し,僧帽弁狭窄症と紛らわしい所見を呈したが,後尖の動きは正常であつた.心室中隔運動の振幅は左室後壁に比し大で, 7例中4例で奇異性運動がみられた.肺高血圧の所見とされる肺動脈弁エコーにおけるe-fslopeの水平化, ‘a’ dipの消失はPPH, SPH両群に共通にみられたが,もう一つの肺高血圧の所見,収縮期弁flutteringは後者で全例にみられたに反し,前者では明らかでない例が多かつた.又,弁エコーは援者で太いのに反し,前看で細く,対照的であつた. 4例のPPH剖検例(年令15~33才,平均25才)では肺動脈弁の肥厚を認めなかつたが, SPHの部検7例(年令1~25才,平均13才)では肺動脈弁の肥厚,膠原線維増殖が認められ,弁エコー厚さが異なる一因として,弁の器質的変化が関連を有すると考えられた.
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